家庭用リチウムイオン蓄電池システムの研究開発(Web限定コンテンツ)
研究ピックアップ 3
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電力効率利用と災害対策
原田 真宏/フロンティア技術研究室
ゼロからのスタートで蓄電池システムを開発
入社早々、異分野である「家庭用リチウムイオン蓄電池システム」の開発に取り組んだフロンティア技術研究室の原田。プロジェクトは開始間もなく、まさにゼロからのスタートだった。
「蓄電池システムを早急に商品化するために、当時事務所などで使われていたものを応用することにしました。そのため住宅用として使うには、機器が出す熱や音の対策、地震に対する設置方法など、解決しなければいけない問題が山積みでした」という原田の言葉からは「家庭用リチウムイオン蓄電池システム」の開発がいかに難問であったかが想起させる。
その後、さまざまな試練を乗り越え、蓄電池メーカーのエリーパワー社と共同で、4種のシステムを順次開発し、バージョンアップを続けている。
2018年に開発した「家庭用リチウムイオン蓄電池システム」
3電池最適制御システムの開発とコストダウン
蓄電池のバージョンアップと並行して進めたのが、3電池最適制御システム(蓄電池+燃料電池+太陽光発電)の開発だった。
「蓄電池は、電気を貯めるか、出すかどちらかしかできない。しかし、貯めているときは使えないというのでは困るので、自ら発電をする太陽光発電と燃料電池を組み合わせて、できる限り自宅でつくった電気でまかなえるようにしたい。」という思いから開発を手掛けた。しかし、単に3 電池を導入するだけだと商品として非常に高価なものになってしまう。少しでも価格を抑えて、広く一般に使ってもらえるものでなければ、原田の目指す「社会に役立つ商品」とは言えない。
ランニングコストを下げ、より多くのお客さまに使ってもらえるように、原田たちは独自の蓄電池の制御方法を研究し、エリーパワー社と共同で3電池最適制御システムを開発した。
この3電池システムは、「普段は蓄電池システムで、太陽光発電や燃料電池の発電電力・電力会社の安い深夜電力を利用し、光熱費を削減することができる。いざという時には、貯めておいた電気が使える」というもので、それを住宅団地レベルでも実現したのが、2013年にまちびらきをした「スマ・エコ タウン晴美台(大阪府堺市)」である。
このまちは、65区画の住戸で使用する電力量よりも、まちで発電する太陽光発電量の方が多いという「日本初のネット・ゼロ・エネルギー・タウン(ZET)」として、「地球環境大賞」などさまざまな方面から表彰された。
住宅のほか、街の公共用地(憩いの広場)にも太陽光発電システムを搭載し、電力を創りだすことでZET を達成。
授賞式での1枚。
目標は、お客さまに住んで良かったと思われる“スマートタウン”“スマートシティ”の実現
さらに、2016 年にまちびらきをした「セキュレア豊田柿本(愛知県豊田市)」では「電力の融通」も実現している。
これは、3 戸の住戸と集会所に設置した太陽光発電と蓄電池を組み合わせたハイブリッドシステムを、簡易な方法で、それぞれの電力を災害時でもお互いに融通し合える仕組みを独自に考案し開発をした。これにより、災害時における街区内の電力融通(複数住戸間の電力融通)を可能とした。
原田の目指す次のステージは、クラウドEMS(エネルギー・マネジメント・システム)の開発である。外部情報(天気予報など)をもとに、発電量や消費電力などを予測し、太陽光発電や蓄電池などの設備機器を最適な状態に遠隔制御するのだ。「将来的には、このシステムを広げていって、まちや都市全体でエネルギーの効率利用を実現する」のが目標と言う。
その先には、さらに大きな夢もある。「住戸などから収集したエネルギーデータや、設備機器の操作履歴等のビッグデータを活用すれば、新たな生活提案も考えられます」。電力の効率利用だけにとどまらず、より便利で快適な暮らしを提供することができるようになるだろう。
「世の中のためになる技術を開発していきたい」と語る、原田の夢は果てしない。
中部初の電力融通街区
中部初の電力融通街区
原田 真宏(はらだ まさひろ) フロンティア技術研究室
工学研究科出身/2009 年入社/研究者を目指していたが、社会に役立つ商品づくりをしたいと大和ハウス工業に入社。消費者メリットを第一に考えた研究・開発を心がけている。
大和ハウス工業
総合技術研究所
DAIWA HOUSE INDUSTRY
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