世代を超えて使い続けたい 無垢の家具との出会い方、付き合い方
公開日:2017/06/30
天然の木ならではの手触りやぬくもり感は格別。良い家具を手に入れて、長く使い続けたいですね。〈写真:ダイワハウス奈良展示場〉
毎日の食事を楽しむダイニングテーブルや、体をあずけてリラックスする椅子など、
家具は一人の時間や家族との時間を演出する名脇役。
同時に、インテリアの完成度に大きく影響する主役でもあります。
自分のライフスタイルに合った一生ものの上質な家具を選び、
大切に手入れをして使い続けたいものですね。
今回は、無垢材の家具づくりで知られる
桜製作所(香川県高松市)の豊田洋一さんにお話をうかがいました。
レクチャーしてくれたのは
株式会社桜製作所
豊田 洋一さん
2007年に株式会社桜製作所入社。桜ショップ銀座店で店舗運営と販売を担当する。2008年、桜製作所「ジョージ ナカシマ記念館」(香川県高松市)の事務局長に就任、現在に至る。日本の家具づくりや使う人の立場に立ったものづくりについて造詣が深い。
(1)暮らしの満足感を高める家具
(2)自分に合った家具の選び方
(3)表面仕上げの違いを知る
(4)日常の注意点とお手入れ方法
(1)暮らしの満足感を高める家具
無垢材を使った高級な家具は、ぜいたく品だと思っていませんか。私は特に家を新築される方には、多少値段は張っても家具にこだわってほしいと思います。椅子やテーブルなどの家具は毎日使うものですし、直接人の体に接するもの。自分の体のサイズに合った座り心地のいい椅子に腰を下ろすことで、人は疲れを癒やし、安堵感を得ることができます。良い家具を使うことにより、家がさらに生きてくるのです。
座り心地の良い椅子は、真のリラックスタイムをもたらしてくれます。〈写真:ダイワハウス昭和住宅公園展示場〉
上質な無垢材の家具は、きちんとメンテナンスをすれば100年でも使い続けられます。親から子へ、孫へと受け継いでいくことができるのです。私自身も無垢材の椅子を愛用していますが、子どもに譲るときには座面の裏に日付と名前を書いて、代々譲り渡していくつもりです。
また、当社を始めとする日本の家具メーカーが使用している輸入木材は、現在とても入手しにくくなっています。家具生産に適した木は過去の過剰な伐採によって絶滅の危機に瀕し、ワシントン条約で国際取引が厳しく制限されているものも多いからです。現在は計画的な育林が行われていますが、木材として流通するまで40~50年はかかるでしょう。今、無垢材の家具を購入して使い続ければ、大変価値のある財産になると思います。
人の手で一つひとつ丁寧に作られる無垢材の家具。使い込まれた道具類にも重みが感じられます。
(2)自分に合った家具の選び方
家具を選ぶ時は、できれば実物に触れ、腰かけて、使い心地を試してください。椅子の背もたれにもたれず座るのが正しいと思っている人もいますが、背もたれに背中をつけて座るのが正しいスタイルです。背中がきちんとフィットし、肩が丸く内側に入らないかどうか確認しましょう。
自然に正しい姿勢で座れるかどうかが、椅子選びのポイント。実際にお店やショールームで座り心地を確かめてから購入するのがお勧めです。〈写真:ダイワハウス奈良展示場〉
北欧などの輸入家具も人気ですが、見た目だけで選んでしまうと、日本人の体格に合わない場合も。日本では靴を脱いで室内で過ごす生活ですが、外国の家具は室内で靴を履くライフスタイルに合わせているため、日本の家具より座面が高く作られることが多いようです。
家具の重さも確認しておきたいポイントの一つです。重すぎる椅子やテーブルは、「座る・立つ」の動作や、掃除などのため移動したり持ち上げたりする動作の負担になります。若く力のあるうちは持ち上げられても、年齢を重ねると動かしづらくなって困ることもあります。長く付き合う家具だからこそ、長い目で見て選ぶようにしてください。
(3)表面仕上げの違いを知る
表面の仕上げは、主にオイル仕上げとウレタン塗装仕上げがあります。使い勝手やメンテナンスの方法はかなり違っています。実物に触れれば、微妙な手触りの違いに気づくでしょう。それぞれの特徴を知ってお使いください。
◎オイル仕上げ
浸透性のある植物油を主成分としたオイルで塗装する方法。使い込むほどに風合いが生まれ、傷や汚れがより味になって生きてくるのがオイル仕上げの特徴とも言えます。木の質感にこだわり、マメなお手入れが苦にならない人にお勧めします。
オイル仕上げは表面に膜を作らないので、木目の美しさや質感をそのまま生かせます。その反面、保護膜としての塗膜が無く水分を吸い込んでしまうのも特徴で、こぼれたらすぐに拭き取らないと、コップの輪染みが残ったり、しょうゆなどの染みができたりします。
オイルは使っているうちにすり減っていくので、2年に1回程度オイリング(オイルの塗り直し)をするとよいでしょう。ホームセンターで入手できる家具用のオイルを、自宅で上塗りするのでも十分です。
◎ウレタン塗装仕上げ
日本で流通している無垢材のテーブルの多くは、ウレタン塗装仕上げを施しているようです。木材の表面をウレタン塗料の被膜でコーティングする仕上げです。水分を吸収しないので、コップの跡などが残りにくいのが特徴。硬度が高いため、オイル仕上げに比べると傷がつきにくいのがメリットです。
10~15年程経つとウレタンが劣化して部分的に剥げ落ちる場合があります。この場合は、塗り直しの必要が出てきますが、ウレタン塗装はご家庭でメンテナンスができません。工場に送り、全体のウレタンを一度すべて剥がして塗装し直すことになりますので、往復の送料と施工費が必要になります。
(4)日常の注意点とお手入れ方法
無垢の板は、年月とともに多少伸び縮みしたり湾曲したりすることがあり、それも味わいの一つになります。気をつけたいのは乾燥に対して弱いという点。水分が飛び、木が痩せてしまわないように、加湿器などを使って乾燥を防いでください。部屋に鉢植えを置いたり、金魚鉢や水槽を置いたりするのも効果があります。エアコンの風が直接当たる場所はなるべく避けましょう。
幾重も年輪をかさねてきた樹は、家具へと形を変えてもなお呼吸し、生き続けます。
また、太陽の光は色素を壊してしまうため、直射日光に長く当たると変色や劣化が起こります。日焼けによって徐々に生じる色の変化は経年美化として楽しむことができますが、なるべくなら直射日光が当たる場所に家具を置くのを避けるか、カーテンなどで紫外線を防いだり、布をかけるなどして表面を保護すると良いでしょう。
テーブルには熱いものや硬いものを直接置いたり、尖ったものや重いものを落としたりしないよう気をつけてください。塗装のはがれや木材そのものの変色、傷の原因になります。食器を置くときはできるだけランチョンマットやコースターを敷くことをお勧めします。熱い鍋ややかんなどを直接置くのは厳禁。必ず鍋敷きを敷きましょう。
その日の気分で、ランチョンマットのカラーコーディネートをアレンジするのも楽しいもの。〈写真:ダイワハウス高島平展示場〉
家具の汚れが気になったら、柔らかい布で汚れを拭き取ってください。油汚れやひどい汚れのある場合は、中性洗剤をぬるま湯で薄めたものに布を浸して固く絞り、拭き取ります。その後すぐ、残った洗剤をきれいな布で拭き取ってください。
家具を修理に出す場合は、購入したメーカーに依頼するのが一番です。工法や構造、材質はメーカーによって異なり、別のメーカーでは修理がしにくい場合があるからです。
皆さまがいい家具に出会い、末永く大切に使われますように。