「高齢になる親が心配」「子育てのサポートがもっとほしい」「家計を節約したい」などの理由から、
親との同居を考える人も多いでしょう。でも、いざ検討すると、不安なことが多かったり、
夫婦間で意見が食い違ったりと、なかなか決断できない人も多と思います。
そこで同居のメリット・デメリットや同居を成功させるコツを詳しくご紹介。
また、多世代にとっての快適な家づくりを追求し続ける大和ハウスが考える、
同居成功のための二世帯住宅を建てるコツも解説します。
Part1親世帯と子世帯の現状
なぜ同居を検討するのでしょうか。そこには、親世帯と子世帯それぞれを取り巻く現状があるようです。
高齢者の一人暮らしが増えている
今の30、40代の人が、まだ子どもだった1990年(平成2年)頃、高齢者(65歳以上)のいる世帯のうち4割近くは親・子・孫といった三世代での同居でした。
その後、高齢者の夫妻だけの世帯・一人暮らしの世帯の割合が次第に増加。30、40代の親世代の多くが高齢者になった2021年(令和3年)では、高齢者を含む三世代同居は1割以下に減った一方、夫妻だけの世帯が3割を超え、一人暮らしの世帯も3割近くを占める状況になっています。
なお、今後も高齢者の一人暮らし世帯は増加傾向で、2020年の671万7000世帯から、2030年は795万9000世帯、2040年は896万3000世帯になると見込まれています。
65歳以上の高齢者がいる世帯数と世帯構成の割合の比較(1990年と2021年)
こうした一人暮らしの親の病気・ケガが心配、介護が必要なときに対応したい、などの思いは親との同居を考えるきっかけの一つ。もちろん、一人暮らしになった親も「子世帯と一緒の方が安心」と考える人もいるでしょう。
一般的に「同居」とは親族や友人が同じ家屋に住むことを指し、親と子の同居についても一緒に住む住宅の構造などにあまり細かな指定はありません。
このため親子の「同居」には、主に3つの同居タイプが考えられます。
- (1)同じ建物で暮らしても、1階と2階または左右に振り分けて親世帯・子世帯の住まいを分離するタイプ(分離同居)
- (2)玄関やリビングなど一部を共有し、ほかは分離するタイプ(共有同居)
- (3)すべての生活空間を共有するタイプ(融合同居)
タイプごとのメリット・デメリット、向いている世帯などはコラム後半で詳しくご紹介します。
家事等の負担が妻に偏りがちな共働き世帯
ただ、子世帯には「親が心配」という気持ちに加え、「同居で子育てをサポートしてほしい」「同居した方が家計も助かる」「親の土地に同居用の住宅を建てたい」などの理由もありそうです。
なぜなら、働いている世帯の多くが共働きになっても、家事関連時間(家事、介護・看護、育児、買い物の合計)の7割以上を妻が負担しているからです。妻の分担割合は次第に下がっているとはいえ、親と同居して家事などをサポートしてもらうのも選択肢の一つといえます。
6歳未満の子どもを持つ妻・夫の家事関連時間及び妻の分担割合の推移(週全体平均)
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Part2親と同居するメリット
税制優遇など家計にうれしいことも
親との同居で期待できるメリットには、家事等の負担が減る、親の健康を気遣いやすい、経済的な負担が減るなどがあります。具体的にどんなメリットがあるのかご紹介します。
コミュニケーションが増える、家族の絆が強まる
これまで離れて暮らしていた親子も、話す機会が多くなれば互いの理解が深まって、三世代が一緒に暮らすことで安心感が生まれ、家族の絆が強まることが考えられます。また、家族の記念日やイベントなども、みんなで祝えばさらににぎやかで、思い出に残るものになるでしょう。
子どもの成長をいろいろな視点で見守れる
子世帯の子どもにとっては、祖父母が身近にいることで、自分の親とは違う世代の大人の考えに触れることができます。小さい頃から多様な価値観と接することは、社会で重要な異世代間でのコミュニケーション能力を育む機会になるはず。
さらに、子どもの成長を親と祖父母というマルチな視点から見守ることで、親だけでは気づかない子どもの個性を見つけ、伸ばせる可能性が高まります。また、子育ての悩みや不安に対するアドバイスを参考にすることもできます。
家事や子育てを手伝ってくれる大人が増える
家事・子育て・買い物などを、同居する親にも手伝ってもらうことで負担を軽くすることができます。子どもが体調を崩して保育園や学校を休むときも、面倒を見てくれる人がいることで、夫妻とも仕事に出られるケースも多くなります。よって、「忙しくて手が回らない」「急な早退で会社の人に迷惑をかけてしまうかも」などの、精神面での負担も軽減されるでしょう。
親の健康状態を把握しやすくなる
高齢の親と毎日のように話し、一緒に生活する中で、相手の体調の変化に早く気づけるなど健康状態を把握しやすいこともメリットの一つです。さらに、急に体調が悪化した親を病院に連れていく、救急車を呼ぶなどの対応も早くなります。また、親世代は、年の離れた孫との同居で暮らしに生きがいや刺激を感じ、体を動かす機会も増えることで、心身の健康維持に役立つことも考えられます。
家計の負担や住宅費用を分担できる
一般的に水道光熱費は基本料金+使用量に応じて変動する従量料金です。このため世帯人数が増えても、契約内容が同じなら基本料金は変わらず、従量料金の部分が増えることがほとんど。
同居する親に何割か負担してもらえれば、別居のときよりもどちらにとっても負担が軽くなります。インターネットの利用料金などを含む情報通信関係費も、一部を負担してもらうことで支出を軽減できます。
ちなみに、総務省の統計データによれば、親世帯と子世帯が別居した場合、親世帯(夫妻)で水道光熱費と情報通信関係費の月の合計が3万5,594円、子世帯(夫妻と子ども二人)が4万3,444円となります。これをもとに2世帯の合計を計算すれば7万9,038円となります。
一方で、親世帯と子世帯が同居した場合は、水道光熱費と情報通信関係費の合計が5万6,276円となり、仮に折半したとしたら一世帯あたりの費用は、2万8,138円です。つまり、同居の場合の方が月々の支払いを抑えられる可能性があります。
親世帯と子世帯が別居の場合、同居の場合の、月の水道光熱費・情報通信関係費(2023年)
出典:総務省「家計調査年報(家計収支編)2023年(令和5年)」 1世帯当たり1か月間の収入と支出より。
親世帯は2人世帯、子世帯は4人世帯、同居後は6人以上世帯の水道光熱費、情報通信関係費をもとに作成
また、親が離れた場所に住んでいた場合は、同居により帰省費用がかからなくなります。同居のために二世帯住宅を建てる費用・リフォームする費用を親世帯にも負担してもらえば、同居のハードルも下がるでしょう。
税金面でメリットが得られるケースもある
また、親と同居するために新たに家を建てる場合、以下のような税金面のメリットが得られる場合があります。
不動産取得税の軽減
新たに住宅を取得したときに課税される「不動産取得税」は、新築住宅で一定の条件※1を満たす場合に軽減措置が受けられますが、二世帯住宅で完全分離タイプ※2なら、より大きな軽減措置を受けられる可能性があります。
●一般住宅…建物の固定資産税評価額から1,200万円を控除した金額(評価額が1,200万円未満の場合はその評価額が限度)をもとに税額を計算(認定長期優良住宅は1世帯の当たりの控除額が1,300万円)
●完全分離タイプの二世帯住宅…2戸分の軽減措置が受けられ、1,200万円×2=2,400万円を控除した金額をもとに税額を計算
- ※1住居用であること、住宅の床面積が50m2以上240m2以下であること
- ※2この場合の完全分離とは構造上の独立性(各戸の居住部分が壁、天井、床などで完全に遮断されている)、
利用上の独立性(各戸が玄関、キッチン、トイレなどを持ち、独立して生活ができる)の2つの要件をすべて満たす家屋のこと
固定資産税の軽減
「固定資産税」は、新築家屋などで一定の条件を満たす場合は軽減措置が受けられますが、二世帯住宅で完全分離タイプなら、より大きな軽減措置を受けられる可能性があります。
土地の固定資産税
住宅が建つ土地は住宅用地に対する特例により、固定資産税評価額に基づく課税標準額が以下のように軽減されます。
- 住宅1戸につき200m2までの部分…「小規模住宅用地」の区分になり、固定資産税では評価額の6分の1を、都市計画税は3分の1を課税標準額として税額を計算
- 完全分離タイプの二世帯住宅…2戸分の軽減措置が受けられ、住宅全体で400m2までの部分が小規模住宅用地の扱いになります。
- 小規模住宅用地以外の住宅用地(同土地で200m2を越える部分)…固定資産税では評価額の3分の1を、都市計画税は3分の2を課税標準額として税額を計算
建物の固定資産税
新築住宅に係る固定資産税額の減額制度により、一定の条件※3を満たす場合は所定の期間で固定資産税の課税標準額が以下のように軽減されます。
- 一般住宅…住宅1戸につき、床面積の120m2までの部分の固定資産税を2分の1に軽減。期間は課税される年度から3年度分(認定長期優良住宅は5年度分に延長)
- 完全分離タイプの二世帯住宅…2戸分の軽減措置が受けられ、住宅全体で240m2までの部分の固定資産税を2分の1に軽減
※3専用住宅は床面積が50㎡以上280m2以下であること。店舗等の併用住宅は居住部分の床面積が50㎡以上280㎡以下であること
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同居にかかる費用の一部を補助する自治体もある
親との同居のために「三世代同居リフォーム」を行った際、所定の条件を満たせば国の補助金の支給対象になります。また、同居リフォームのためにローンを組んだ場合は一定の減税措置が受けられるケースがあります(いずれも2024年8月時点)。さらに、自治体によっては、所定の条件を満たすと同居用住宅の新築・リフォーム費用が補助の対象になることもあります。
Part3親と同居するデメリット
対策を知れば乗り越えられる!?
たとえ自分または配偶者の親でも、長く別々に暮らしていた人と同居するには生活面での擦り合わせが必要です。それがうまくいかないと、前述のメリットの多くをデメリットと感じる可能性もあります。
プライバシーが確保しづらいと感じる
それぞれの固有の生活スペースに無断で立ち入ったり、相手が話したくない話題を繰り返したりすると、互いの感情を害することになります。三世代が一緒に暮らす楽しさはあるものの、世代によって「どこまで踏み込むとプライバシーに触れるか」の捉え方には違いがあり、プライバシーの確保は親子の同居で起こる難しい問題の一つ。二世帯の住宅で生活スペースをしっかり分けるなど、間取りの工夫はそうした問題の解決に役立つでしょう。
生活のリズムや生活空間の使い方にずれがある
起床・就寝の時間など生活のリズムが親と子世帯でずれていることも多く、「食事の時間が合わず二度手間になる」「子が起きていてごそごそやっていると眠れない」という不満は出やすくなります。寝ているときに、トイレや浴室を使う音が気になる人もいるでしょう。
一方で、同じ時間帯に活動すると、キッチンや浴室を使う時間が重なって不便さを感じることもあります。また、キッチンやトイレ・浴室などの共有は、「きれいに使ってない」「物が整理されていない」といった点でトラブルになることも。同居する親子で一緒に生活のルールを決めるほか、こだわりのある生活スペースは共有せず世帯ごとに設けると、トラブル軽減につながります。
互いの価値観の違い(夫婦関係・子育て・金銭感覚など)がストレスになる
年代が違えば、夫婦関係や子育ての考え方、お金の使い方などに違いがあって当然ですが、家事分担で不満を言われる、子育てで難しい要望を出される、お金の使い方に意見をされるなどが繰り返されると、大きなストレスになります。さらに夫婦のどちらかが親の意見を尊重しすぎると、夫婦仲がこじれることにも。逆に子世帯も、親に「よかれ」と思ったことでも、異なる価値観を無理に押しつけるのはトラブルの元になります。
家計の分担で不満が出る
水道光熱費や情報通信関係費などの一部を同居する親に出してもらうことで、互いの家計の負担が軽くなるメリットがある一方で、親世帯が「あまり使っていないのに負担が大きい」と感じたり、子世帯が「払った分よりも使いすぎでは?」と感じたりすると、金銭面でのトラブルに発展しがちです。そうなる前に、各世帯が納得できる負担額を話し合うことも大切です。
思った以上に親の介護が大変になる
親の健康が心配で同居を始めても、実際に介護が必要な状態になると、1日のうち多くの時間が介護にとられてしまうという懸念も。介護する側が心身ともに疲れ、思うように仕事ができず収入が減るなど、子世帯の生活に大きな影響が出てきます。高齢者の生活全般の相談を受ける地域包括支援センターなどに相談し、適切な介護サービスを利用して、同居する子世帯の負担を減らすことが大切です。
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また、大和ハウスグループの8社が連携した総合窓口の「リブネス」は、家と人生のプロとして、介護サービスや高齢者向けリフォームなど、介護全般について相談していただけます。
同居していない家族との関係が気まずくなる
親と同居していない(できない)兄弟や姉妹にとって、同居してくれる家族がいるのはありがたく感じる半面、「同居して子育てや生活費を支援してもらっている」「相続で不利になるのでは」といった不公平感につながる場合があります。それをなるべく防ぐために、同居の前に兄弟や姉妹同士で、親との同居で生じる負担と支援のバランス、万一のときの段取りなどを話し合っておくことが大切です。
Part4親との同居を成功させるコツ
自分たちに合った同居スタイルを知ろう
親が心配で同居する場合でも、互いがストレスの元になっては長続きしません。どうしたら同居がしやすくなるのか、ポイントをまとめました。
暮らしで大切にしたいことを妨げない同居を目指す
同居する目的の多くは、親の健康への不安、家事や子育てへの支援、経済面での支援など。目的がある程度合致して一緒に暮らす場合、それぞれの世帯・個人が大切にしたいことを尊重し、それを妨げない同居スタイルが望ましいといえます。
例えば、子世帯が料理好きで、キッチンは自分たちの使い勝手が良いようにまとめておきたいなら、親世帯は別にキッチンを設ける方がトラブルになりにくいはず。食事の好みが違うなら、食材を入れる冷蔵庫や食事も別にすることも考えられます。洗濯の仕方、トイレ・浴室の使い方やお手入れなども、違いが出やすい部分です。必要なら、これらも別にした方がトラブルは起きにくいでしょう。
といっても、同居する以上は互いの希望をすべてかなえるのは難しいもの。親子それぞれが大切にしたいポイントを、ここだけは譲れない、ここは譲歩できる、と優先順位をつけて、上位のポイントが高いものを実現できるような同居スタイルを話し合うことが大切です。こうした話し合いで生活面のルールを作り、食費をはじめ生活費の負担額をあらかじめ決めておくようにしましょう。暮らし始めた後は互いに干渉しすぎないことも大切です。
親と子の相性で同居しやすさが変わることもある
実親、義理の親にかかわらず、親と子、特に女性同士の相性が同居のしやすさの決め手になることも多いといわれます。例えば、同居する義理の母親がおおらかな性格で、子世帯の妻との相性が良い場合などは、同居しても互いにストレスを感じないケースが多いという専門家の意見もあります。また、親のライフスタイルがアクティブで日中はあまり家にいないようなタイプは、家事のサポートは期待しにくいかもしれませんが、過干渉を好まない子世帯夫婦には向いているかもしれません。
同居以外の選択肢も検討しておく
親の健康状態を見守るためなら、親の近くに住む近居(親を呼び寄せる場合も含む)・隣居も選択肢の一つです。近居・隣居なら、互いのプライバシーや生活スタイルの違いを気にせず、世帯ごとにマイペースで生活できるほか、何かあればすぐに駆けつけ、救急車を呼ぶなどの対応も可能です。また、コストはかかりますが、警備会社や宅配会社などが提供する高齢の親を対象にした見守りサービスや、インターネットを使って手軽な安否確認ができるサービスもあるので、そうした方法も検討してみましょう。
自分たちに合った同居スタイルで二世帯住宅を建てる
同居する場合、どの程度の生活スペースを親世帯と子世帯で共有するかによって、間取りの考え方は変わってきます。互いのプライバシーを大切にしたいなら世帯ごとに完全分離した二世帯住宅、世帯ごとの生活と親子一緒の生活の両方を楽しみたいなら一部を共有した二世帯住宅が向いているでしょう。さらにすべての空間を共有する同居スタイルも考えられます。
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このようにさまざまな同居スタイルがあるため、同居世帯ごとに適した間取りを作ることが大切です。例えば大和ハウスでは、以下の3つのタイプを同居スタイルの例としてあげています。
Part53つの同居タイプと二世帯住宅のアイデアと間取り
平屋の魅力も解説
1. 分離同居
玄関も含め、すべてを分離させた二世帯住宅。生活スペースを別にしながら、親に子育てのサポートを頼んだり、どちらかのリビングに集まって食事を楽しんだりできます。将来、親世帯の住まいが空いたときは、その部分を賃貸活用することも考えられます。また、所定の条件を満たせば、不動産取得税や固定資産税などの軽減、親の土地に建てた二世帯住宅なら相続税が軽減される可能性もあります。
将来の賃貸活用も考慮して玄関を別方向に設置する間取りプラン
回りの位置を揃えておくと、生活音のストレスを軽減できるだけでなく、保守やメンテナンスがしやすいため、コスト削減も期待できます
2. 共有同居
玄関、リビング、キッチンなど共有する部分によって、「食事は一緒にとりたい」「リビングでは三世代でくつろぎたい」など、さまざまな同居スタイルが可能になります。特に互いの世帯のこだわりポイントは別にすることで、同居後の暮らしがよりスムーズになることが期待できます。
各世帯で使うもの・共有で使うものなど、二世帯分の収納をどこに設けるかがとても重要です
3. 融合同居
互いの寝室などプライベートな空間を除いて、ほとんどの生活スペースを親世帯と子世帯で共有するタイプ。完全同居ともいいます。三世代の接点が増え、互いの行動が見えやすいので、よりスムーズに家事や子育てのサポートをしてもらえるかもしれません。また、共有スペースが増えることで、必要な土地の広さや建築費が抑えられるといったメリットも考えられます。
1階には二世帯共有の玄関を設け、浴室などの水回りを共有。玄関に大型収納があると、二世帯分の靴や傘、子どものためのベビーカーやスポーツ用具などを片付けやすくなります。また、世帯ごとにリビングや寝室があるので、生活リズムの違いなどもあまり気にならないでしょう。階段の上り下りを減らして足腰への負担などを軽減する狙いから、1階は親世帯が住むことが多いようです。
2階は子世帯が暮らすスペースに。玄関と水回り以外はほとんど2階で暮らしが完結するので、互いに気を遣うことも少ないでしょう。ただ、浴室などを共有するため、食事の支度や共有部分の使い方などを親世帯との話し合い、家事をどう協力し分担するかのルールづくりも大切になります。
一緒にお料理したりおしゃべりしたり、アイランドキッチンなら三世代のコミュニケーションがますます弾みそうです
これからを見据えた二世帯住宅とは?平屋という選択肢も
二世帯住宅は、親世帯も子世帯も使いやすい動線、環境や家計へのやさしさ、高齢になる親の介護、子世帯のみになった後の賃貸活用など、これからを見据えてプランニングすることが大切です。
そのためにはまず、ハウスメーカーとの打ち合わせを念入りに行う必要があります。大和ハウスでは、スタッフがお客さまの現在のお住まいに伺い、家づくりのご要望をじっくり伺うライフミーティングを大事にしています。「どのような暮らしがしたいのか」「これからどのような暮らしが予想されるのか」などを丁寧にヒアリングしたり、お客さまの暮らしぶりを直接見たり感じたりすることで、プランニングに生かしています。
平屋の二世帯住宅という選択肢も
2階建ての家屋で世帯を上下で分ける以外に、平屋で二世帯が同居することも考えられます。今は階段での移動が無理なくできる子世帯も、高齢になるとそれが次第に難しく感じてくるはず。将来のことを考えると、親子二世帯がワンフロアで暮らす平屋での二世帯住宅も選択肢の一つといえるのではないでしょうか。
ただし、平屋でも分離同居、共有同居、融合同居の各スタイルは実現可能ですが、二世帯で共有する部分が少なくなるほど広い敷地が必要な点に注意しましょう。
国土交通省の資料※4でゆとりを持って住めるとされる居住面積(延べ床面積)を見ると、戸建て住宅で世帯の人数が3人なら75m2~100m2、二世帯合計を5人と想定した場合は115m2〜150m2と、1.5倍以上の面積が必要。ただ、これは共有同居や融合同居のような暮らし方になると思われ、完全分離を平屋で実現する場合は1階部分で2倍近くの広さを考えた方が良さそうです。
また、各世帯のプライバシーを保てるような間取りの工夫も大切ですが、大和ハウスの平屋は鉄骨造や木造などの構造のバリエーションがあり、フルオーダーの注文住宅ならそうした要望に応えた二世帯住宅も実現しやすいでしょう。
※4国土交通省「住生活基本計画(全国計画)」(令和3年)
また、大和ハウスの二世帯住宅は、環境にも家計にもやさしいZEH※基準に対応しているのもうれしいポイント。「外張り断熱通気外壁」などの断熱アイテムに、太陽光発電やエネファーム、リチウムイオン蓄電池などを加えることで、冷暖房費を大幅に削減し、エネルギー収支がゼロの住まいを目指せます。
さらに、大和ハウスの二世帯住宅は、国土交通省が支援する一般社団法人移住・住みかえ支援機構(JTI)が定めるマイホーム借上げ制度にも適合。そのため、万が一空き家になった場合に、第三者に貸すこともできます。その場合、JTIからは家賃が終身にわたり支払われるため、固定資産税の支払いなどにあてることも可能でしょう。
このように、親世代との同居を成功させるためには、さまざまなコツがあります。話し合いで快適なルールを設けることはもちろん、理想の暮らしができる家を建てることがとても大切です。その際、信頼できるハウスメーカーの担当者に相談しながら、プランニングを進めていきましょう。
お話を伺った方
藤原 千秋さん
大手住宅メーカー営業職を経て主に住まい、暮らしまわりの記事を専門に執筆。現在はライティングの傍ら監修、企画、広告、アドバイザリー等の業務に携わる。プライベートでは三女の母。『この一冊ですべてがわかる! 家事のきほん新事典』(朝日新聞出版)など著書や監修、マスコミ出演多数。