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不動産を活用した
相続税の税務対策 ~その② 二世帯住宅・貸付事業用宅地等の活用~

不動産を活用した相続税の税務対策その①では小規模宅地等の特例の活用し、相続税の計算で使われる評価を下げることについてご説明しましたが、その②では、その他の方法を活用した相続税の税務対策についてお伝えいたします。

二世帯住宅の活用

近年、二世帯住宅の建築が増えています。二世帯住宅は、生活面でさまざまなメリットがあるだけでなく、税制面においてもメリットがあります。

建築構造上、二世帯の住居が完全に分離されていても、登記上、区分登記でなければ、相続税法上、同居親族と判断されます。これにより、相続時に小規模宅地等の特例の対象となり、相続税を軽減して土地の相続ができるようになります。

※区分登記:二世帯住宅の場合、これを2戸の住宅としてそれぞれ登記すること。

~参考事例~

Aさん(息子)は、実家から独立し、持ち家に家族(妻と子ども2人)と暮らしています。Aさんの実家は2階建ての一戸建てで、これまでAさんの母親が1人で暮らしていました。ある時、母親が転んで足を骨折し、それ以来歩行には補助が必要となり、2階の使用も母親1人では難しい状況です。そこでAさんは母親の所有する土地に二世帯住宅を建築し、母親と同居することにしました。

【現状】親子で別々に暮らしている

母親(子と別居)→減額なし Aさん(持家あり)

【建築後】母の家を建て替えて同居する

親子で同居→80%減額できる 持家を売却

二世帯住宅の建築前、Aさん(息子)は母親と別居しており、この場合だと小規模宅地等の特例が受けられません。もし、この時点で相続が発生すると、土地に対して相続税がフルに課税されてしまいます。

しかし、まだ相続が発生する前に、二世帯住宅を建築して同居すれば、小規模宅地等の特例の適用により土地の評価額が80%減額されます、結果として相続税を大きく軽減することができます。

ポイント&注意

  • 相続人(ここでは息子)が被相続人(ここでは母親)と相続時点において、同居していることがポイントです。同居することで小規模宅地等の特例が受けられるようになり、相続税の負担を軽減することができます。
  • 自宅を建築するのは、子が建築しても親が建築しても親子が同居していれば減額されます。
  • 建物を親世帯部と子世帯部とに区分登記してしまうと同居親族と認められなくなるので、注意が必要です。

貸付事業用宅地等の活用について

その①でもご説明しましたが、小規模宅地等の特例で相続税減額の対象になる宅地等には相続直前の用途に応じて特定事業用宅地等、特定居住用宅地等、特定同族会社事業用宅地等、貸付事業用宅地等の4種類に区分されています。

種類 減額割合 限度面積
居住用 ① 特定居住用宅地等 80% 330m²
事業用 ② 特定事業用宅地等 80% 400m²
③ 貸付事業用宅地等 50% 200m²
④ 特定同族会社事業用宅地等 80% 400m²

小規模宅地等の特例で減額の対象になる宅地の中で③の貸付事業用宅地等を活用した場合はどうでしょうか。

【建築後】母親の(所有している)土地の敷地内に賃貸住宅を建て、賃貸事業をする

親子で同居→土地200m²まで50%の減額ができる

あらかじめ所有している土地に賃貸住宅等を建築し、賃貸事業することで貸家建付地とする場合や、所有している土地を第三者に貸し、第三者が家を建てるといった貸宅地にすることで土地の評価を減額する方法もあります。

貸付事業用宅地等の適用要件

適用要件~※次のいずれかに該当する場合 (被相続人=亡くなった人)

③貸付事業用宅地等
  • 相続人が相続税の申告期限までに、それまで営まれていた被相続人の不動産貸付事業を引き継ぎ、その宅地等を所有かつその不動産貸付事業を営んでいること。
  • 相続人が被相続人と生計を一にしていたものであり、相続開始前から相続税の申告期限まで引き続きその宅地等を不動産貸付事業の用に供し、所有を継続していること。

平成30年度の税制改正により、相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等(相続開始前3年を超えて事業的規模で貸付事業を行っていた被相続人等の、その特定貸付事業用に供された宅地等は除く)は適用外となりました。それまでは亡くなる直前であっても適用されていましたので、新しく賃貸住宅経営をお考えの場合はここにも注意が必要です。

注意

貸付事業用宅地等の特例を活用する場合、200m²までが減額できる面積となり、減額率は50%です。仮に500m²の土地を相続する場合、200m²に対しては50%減額できますが、残りの300㎡に対しては減額されませんので注意が必要です。

まとめ

相続は人生の中でもそう何度も関わることではないため、経験値が積み上がるものでもありません。また、相続の事前準備をすることには何らかの心理的な抵抗があるかもしれません。ご自身で情報を集めるにも、法律は毎年更新されており、そのために満足いく結果にならないことも起こり得ります。専門家に相談すれば、現状に合わせた適格なアドバイスを受けることで解決できることもあります。お1人で悩まずぜひお近くの専門家に相談してみましょう。

参考~国税庁HP相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

執筆者

山田健介

FPplants株式会社 代表取締役社長

住宅メーカーから金融機関を経て「お客さまにお金の正しい知識や情報をお伝えしたい」という思いからFPによるサービスを行う会社を設立。現在は全国のFPを教育する傍ら、執筆、セミナーを行う。特にライフプラン作成、住宅、保険に関する相談を得意とする。

※掲載の情報は2020年4月時点のものです。内容は変わる場合がございますので、ご了承ください。

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