こんにちは。パロアルトインサイトCEO兼AIビジネスデザイナーの石角友愛です。
今回はリビングルームやベッドルームなどの室内、またはレストランやオフィスなどで
活用されつつあるデジタルアートフレームをご紹介します。
サブスクリプション型でコンテンツを提供
家にいながらアートに出合う
先日、パロアルト市の中心地にある、とあるお店に行った時のことです。そこは、いろいろなハードウェア系のスタートアップ企業の商品を取り扱っているお店で、店内でAI搭載型のスマート家電や知育玩具、ウェアラブルデバイスなどを試すことができます。そこで私が目にしたものは、大きなアートフレームでした。
Depictというスタートアップ企業がつくっているデジタルアートフレームですが、49インチで4Kの巨大フレームです。その中に映し出されるのは、さまざまなデジタルアートですが、アメデオ・モディリアーニなどの名作や新しいアーティストの作品が並びます。私も間近で見ましたが、全くデジタルとは気がつかない鮮明さです。フレームを約1000ドルで購入したあとは、別途アプリから、月額20ドルのサブスクリプション代で、投影するためのアート作品を無制限に選べます。
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他にもニューヨーク大学の同級生同士が2014年に始めたMeuralという会社(2017年にNetgearにより買収)も同じようにデジタルアートフレームとサブスクリプションのアートコンテンツ(スマートアートキャンバス)を開発しています。27インチがメインですが回転マウントも開発し、フレーム自体が簡単に縦から横に動かせます。まるでスマートフォンの向きを変えるように、縦から横にすると自動的に縦長の絵から横長の絵に表示が変更します。
Meuralの経営陣のインタビューでは、「今までは美術館に行って新しい作品に出会い、家に帰ってきてからその作品のポスターなどを購入していたけれど、これからは家で新しい作品に出合い、その作品を見に美術館へ足を運ぶようになる」と語っています。また、ゴッホの絵を投影した人には、似たような色や雰囲気の絵をレコメンドする技術も開発しています。
両社とも社会との繋がりを意識し、作品が投影されるごとにアーティストに売り上げの50%を還元するという取り組みを行い、アーティストのネットワークも同時に構築、ユーザーとアーティストを相乗効果で増やしていくことが狙いのようです。
デジタルな窓をインテリアに加えアートや風景写真そして音を取り入れる
日本にも同じようにデジタルアートフレームを独自に製造販売している会社があります。京都に本社を置くアトモフは、元任天堂のエンジニア2人とデザイナーにより始まった会社です。2019年3月には京都初の「変なホテル」に55インチの同社のAtmoph Window Upというフレームが導入されました。スピーカーも搭載されているため、波の音を流したり、Bluetoothで音楽をかけることも可能。
先日、私はアトモフの京都本社に足を運び経営陣と話す機会があったのですが、先述のアメリカの会社のようにアート作品を美術館と協業で集めるのではなく、自分たちでフォトグラファーを雇い、写真を集める方法を取っているとのことです。フレームを複数並べて一つの風景が見られることでより臨場感が増し、内装のデザインとしても良い効果があると感じました。
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会社によりアプローチは違いますが、共通しているのはアートがより身近になり、民主化される効果です。スマートスピーカーやスマートドアベルを導入したら、次はリビングルームにデジタルアートフレームを導入し、部屋に彩りを添えるのもいいかもしれません。
パロアルトインサイトCEO・AIビジネスデザイナー
石角友愛さん Tomoe Ishizumi
パロアルトインサイトCEO 兼 AIビジネスデザイナー。
2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのGoogle本社で多数のAIプロジェクトをリードする。後にHRテックベンチャーの立ち上げや流通系AIベンチャーを経て2017年パロアルトインサイトを起業。日本企業に対してシリコンバレー発のAI戦略提案からAI実装まで一貫した支援を提供する。新著に「いまこそ知りたいAIビジネス」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)があり、プログラミング教育、ギフテッド教育、留学などについての出版も5冊あり。
現在、AI&ビジネス、シリコンバレーとIT企業、新しい働き方、女性の社会進出論などでの言論活動を積極的に行う。毎日新聞「経済観測」コラムニストであり、日経クロストレンドコメンテーター、日経xwoman(クロスウーマン)アンバサダー、NewsPicksのプロピッカーなども務め、ビジネスインサイダージャパンとマネー現代で寄稿連載中。
※2019年6月現在の情報となります。