今回は、Googleが昨年より実施しているAIYというプロジェクトの画像認識開発キットを入手したので、
それについての組み立て記録と感想をご紹介します。
本格的なAIキットが自分で簡単に実現できる
AIYとはAIとDIYをもじって、「自分で簡単にAIが実現できるキットを作ろう」という意味です。なるべく安価な素材を用いてキット自体の価格を安くし、組み立ての手順もなるべく簡素化することにより、より多くの人がAIに触れられるように作られています。実際のデモ用顔認識モデルなどは、Googleが無料で提供しています。
Googleはこれまでに2つの開発キットを発売しています。それは、音声認識エンジンを搭載できる「Voice Kit」と、画像認識エンジンを搭載できる「Vision Kit」です。Voice Kitは入手してから長く、我が家でも簡単な音声アシスタントとして役立てています。例えば、娘が「今何をすべきですか」と聞くと、「テレビを観るのは宿題が終わってからにしましょう」といった答えを返してくれます。今回紹介するのは2つ目に発売されたVision Kitで、値段は約90ドル(日本円で約1万円)です。
特殊な工具も不要な組み立て
箱は小さめのダンボール紙で作られていて、裏に中身が記載されています。このキットはRasberry Pi Zeroという小型のマイコンで作られています。DIYのプロジェクトに使うには最適なマイコンで、安価な上にLinuxのOSも搭載できるので、いろんなことができます。他にもカメラ、SDカード、ボタン、各種ケーブルなど、必要なものがほぼ全て箱に含まれています。これ以外に必要なものとしては、電源(マイクロUSB型)と、外付けのモニターやキーボードを付けたい人はそれらの周辺機器に加えてアダプターを購入する必要があります。
また、このキットの面白い点としては、中に取扱説明書がついていないので、ネットで作り方を参照しながら作っていくことです。組み立て方を紹介しているAIY Vision Kit公式ページ(英語ページ)
AIY Vision Kitのパッケージ(裏面)。
パッケージの箱からパーツを取り出したところ。
ネットでの説明はわかりやすく、全体として1時間程度で全ての組み立てが完了します。普段コンピュータを使うことがない人や、子どもでも作れるように説明がされています。手順は72ステップで、ダンボール紙を折り曲げて箱の形を作るところから、実際にマイコンにケーブルやカメラを差し込むところまで丁寧にやり方が記載されています。またはんだごてなどの特殊な工具は必要ありません。
内部フレームの組み立ての様子。
内部フレームを格納する箱。
最終的には縦横5センチ程度の小さい箱に、カメラと画像認識エンジンを組み込んだ本格的なAIキットが出来上がります。最初から搭載されているモデルは、人間の顔を認識し、「嬉しい」顔であればオレンジ色に光る、「悲しい」顔をしていれば青く光るという感じになります。複数の人間がいる場合はそれぞれの人間の嬉しさスコアを合算して、1つのスコアにしてくれます。これを何気なくリビングに置いておくと、子ども達が発見して不思議な顔をしながら覗き込むと、色が変わったりして喜んでいました。
手軽に利用できることで広がる可能性
他にも、実際にいろんな画像認識モデルを搭載することが可能なので、例えば冷蔵庫の前に設置して誰かが盗み食いをしていないかチェックするモデルや、子どもが遊びすぎていないかをチェックするモデルなど、色々と想像が膨らみ、こういった自分で好きにチューニングできるAIが家にあると楽しいです。
※イメージ
パロアルトインサイトCEO・AIビジネスデザイナー
石角友愛さん Tomoe Ishizumi
パロアルトインサイトCEO 兼 AIビジネスデザイナー。
2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのGoogle本社で多数のAIプロジェクトをリードする。後にHRテックベンチャーの立ち上げや流通系AIベンチャーを経て2017年パロアルトインサイトを起業。日本企業に対してシリコンバレー発のAI戦略提案からAI実装まで一貫した支援を提供する。新著に「いまこそ知りたいAIビジネス」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)があり、プログラミング教育、ギフテッド教育、留学などについての出版も5冊あり。
現在、AI&ビジネス、シリコンバレーとIT企業、新しい働き方、女性の社会進出論などでの言論活動を積極的に行う。毎日新聞「経済観測」コラムニストであり、日経クロストレンドコメンテーター、日経xwoman(クロスウーマン)アンバサダー、NewsPicksのプロピッカーなども務め、ビジネスインサイダージャパンとマネー現代で寄稿連載中。
※2018年7月現在の情報となります。