コラム vol.044
人口減少社会の到来と賃貸住宅需要をまとめて考える
公開日:2015/02/10
2035年の日本の人口は減少するも、3大都市の人口はほとんど減らない
総務省の発表データでは、2005年ごろをピークに日本の人口はほんの少しずつ減り始めているということらしい。しかし、国勢調査の最新である2013年のデータを見てみると、近年ほぼ横ばいであることがわかる。(グラフ1)
ただし、国の研究機関である国立社会保障・人口問題研究所の将来予測によると、約20年後2035年の日本の人口は今よりも、減る傾向にあるようだ。
こうした予測から、賃貸住宅の需要は今後減るのではないか、と懸念する人も多いようだ。しかし、都市部(3大都市)においては、人口はわずかしか減らない。3大都市の中では、首都圏はほとんど減らず、関西エリアがやや減るという程度だ。しかし、地方都市ではマイナス30%を超える地域もある。
住宅需要のことを論じる際には、人口そのものよりも世帯数を意識した方が現実的だ。当たり前のことだが、二世帯住宅などを除いて、一般的には1世帯に対し1つの住居が必要であるからだ。
大都市においては、世帯数は向こう二十数年大きく減らない。地方主要都市においても、減る割合は10%未満の地域が多い。(グラフ2)
人口減少によって賃貸住宅の需要が減るとは限らない
地方においては、人口も世帯も減っていく。
だから、地方都市での賃貸住宅経営は厳しいのではないか、という声も聞かれる。人口が減っていくわけだから、住宅はもう必要ないのではないかということだ。もちろん、住宅そのものの需要(必要総数)は減っていくことは間違いない。しかしながら、それによりイコール賃貸住宅の需要が減るとは限らない。ここは重要なところだ。
ここに、国立社会保障・人口問題研究所のデータがある。
2035年の単独世帯の数を予測したものだ。(グラフ3)
単独世帯数は日本のほとんど全県で大きく増加する。例えば人口が30%以上、世帯数が15%以上減少する北東北の各県においても増加する。なぜ、増加するかについては、Webサイト「土地活用総研」の動画で解説しているので、ご覧いただきたい。
こうした、単独世帯の方々の多くは、高齢者の方は高齢者向けの賃貸住宅に、現役世代の方々は一般賃貸住宅に住む(住んでいる)と予想される。
さらに、別の注目すべきデータがある。ひとり親と子どもからなる世帯の今後の予測だ。この世帯の多くは、離婚に至ったケースが多いと予想される。(グラフ4)
データによると、この世帯は日本各地で大幅に増えると予想される。ひとり親と子どもからなる世帯の大半も、賃貸住宅で暮らすことが想像できる。
こうしたデータを丹念に見ていくと、人口減で住宅需要が減るということイコール賃貸需要が減るということではないことがわかる。これは大都市だけのことではなく、地方都市でも言えることだ。