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コラム vol.397
  • 不動産市況を読み解く

地価はどれくらい回復したのか? 2022年地価公示を読み解く

公開日:2022/03/31

POINT!

・2022年の地価は、全国平均では、2年ぶりに全用途でプラスとなり、回復傾向が見られた

・三大都市圏では、住宅地は三大都市全てプラスに転じ、商業地においては東京圏・名古屋圏はプラス、大阪圏は横ばいとなった

・地価は新型コロナウイルス感染拡大以前の水準までは回復していないものの、おおむねコロナショック前に戻りつつある

・2023年に公表される地価公示では、さらに回復基調が見られると予測

3月22日に2022年(令和4年)の公示地価が国土交通省より公表されました。2022年の地価公示では、新型コロナウイルス感染症の影響が徐々に和らいでいる中で、「どれくらい回復しているのか?」に注目が集まりました。
地価公示は1970年から毎年行われており、2022年は53回目となります。2022年の調査地点は26,000地点となっています。

2022年地価公示の全体俯瞰

2022年の地価は、全国平均では、全用途(全用途は、住宅地・商業地・宅地見込地・工業地)平均で+0.6%、住宅地で+0.5%、商業地で+0.4%といずれもプラスとなりました。2021年は、全てマイナスでしたので、2年ぶりのプラスということになります。
2021年は新型コロナウイルス感染拡大の影響が色濃く見られましたが、2022年の地価公示では、完全回復まではいかないものの、回復傾向になってきました。コロナショックからの景気回復基調にあること、低金利が続いていることなどから、住宅地では住宅需要が高まり、商業地では店舗用地、マンション用地などの需要が高まっていることが回復の要因と考えられます。しかし、一方でインバウンド需要の回復が遅れていることから、一部商業地では依然としてマイナスが続いています。

三大都市圏の状況

三大都市圏(東京圏・大阪圏・名古屋圏)では、全用途は+0.7%(前年は-0.7%)、住宅地は+0.5%(前年は-0.6%)、商業地は+0.7%(前年は-1.3%)となりました。三大都市圏全体ではいずれも昨年のマイナスからプラスに転じました。詳細は後述しますが、住宅地では三大都市全てが2年ぶりにプラスに転じ、商業地においては東京圏・名古屋圏はプラスに、大阪圏は横ばい(±0)となりました。大都市部の住宅地では、中心部の利便性の高いエリアでは上昇が続いていますが、図1のグラフのとおり、コロナショック前2020年の水準に戻るのは2023年以降になりそうです。商業地では国内外の観光・ビジネス訪問(出張など)需要の回復が遅れていることもあり、マイナスからプラスには転じましが、まだ完全回復には至っていません。

図1:三大都市圏+地方圏 地価公示変動率の推移(住宅地)

国土交通省「地価公示」より作成

地方圏(地方四市)とは、北海道札幌市、宮城県仙台市、広島県広島市、福岡県福岡市をいう。
地方圏:地方圏とは、三大都市圏(東京圏、大阪圏、名古屋圏)を除く地域をいう。

図2:三大都市圏+地方圏 地価公示変動率の推移(商業地)

国土交通省「地価公示」より作成

地方圏(地方四市)とは、北海道札幌市、宮城県仙台市、広島県広島市、福岡県福岡市をいう。
地方圏:地方圏とは、三大都市圏(東京圏、大阪圏、名古屋圏)を除く地域をいう。

東京圏の状況

東京圏は全用途平均で+0.8%(前年は-0.5%)、住宅地は+0.6%(前年は-0.5%)、商業地は+0.7%(前年は-1.0%)となりました。上昇はいずれも2年ぶりとなります。住宅地において23区内は全て上昇に転じ、特に港区や目黒区では上昇幅が拡大しました。全国住宅地の地価最高額のベスト5のうち4つが港区、1つが千代田区となっています。
商業地は23区のうち、20区が上昇に転じましたが、中央区銀座や新宿の中心部では依然マイナスとなっています。東京圏を都県別にみれば、1都3県全てが住宅地・商業地ともプラスになりました(千葉県は2021年も住宅地・商業地ともプラス)。

大阪圏の状況

大阪圏は全用途平均で+0.2%(前年は-0.7%)、住宅地は+0.1%(前年は-0.5%)、商業地は±0%(前年は-1.8%)となりました。住宅地では、大阪市内中心部の一等立地にタワーマンションが建つなど、マンション価格上昇が続いており、プラス圏内になりました。2020年の大阪圏(大阪・京都・神戸などが中心)の住宅地では、三大都市圏での伸び率は最低(0.4%)だったものの、関西エリアはインバウンド観光客に人気のエリアという背景から、商業地は+6.9%と三大都市圏で最高の伸びを示していました。しかし、2021年は大きく下げていました。
商業地の大阪圏で目立つのは、大阪市が引き続きマイナス圏内にあることです。前年の-4.4%からは改善したものの-1.1%となりました。逆に、京都市は前年の-2.1%から+0.7%に改善しました。観光需要が強い京都市では、インバウンド需要はまだ見込めないものの国内観光は回復してきており、この先も伸びる可能性が高く、新規開業のホテルも以前のように増えてきました。大阪市と京都市は明暗を分けたかたちとなりました。

地方圏の状況

次に地方圏の様子をみてみましょう。
地方中核四市(札幌・仙台・広島・福岡)では、全用途平均は+5.8%(前年は+2.9%)、住宅地は+5.8%(前年は+2.7%)、商業地は+5.7%(前年はプラス3.1%)となり、いずれも2021年に引き続きプラスになりました。住宅地は新型コロナウイルス感染拡大の影響が出る前の水準に戻りましたが、商業地においては、2020年は+11%を超えていましたので、そこまでは戻していません。
目立つのは札幌市の住宅地の上昇で+9.3%、札幌市市内にある全305地点で上昇(一部は横ばい)となっています。
地方圏全体では、全用途平均は+0.5%(前年は-0.3%)、住宅地は+0.5%(前年は-0.3%)、商業地は+0.2%(前年は-0.5%)となり、いずれも2年ぶりにプラスに戻りました。

新型コロナウイルス感染症まん延前後の比較

三大都市(東京都・大阪府、愛知県)における、新型コロナウイルス感染症まん延前後の比較をしたのが、下記グラフです。

図3:2019年~2022年 地価公示変動率(住宅地)

国土交通省「地価公示」より作成

図4:2019年~2022年 地価公示変動率(商業地)

国土交通省「地価公示」より作成

ここで注意しておきたいのは、2020年の地価公示の公表は3月20日頃でしたが、価格時点は1月1日のため、新型コロナウイルス感染症の影響はまだなかった時期だということです。そのため、大きく落ち込むのは2021年になります。
住宅地、商業地の地価はいずれも似た動きになっています。2019年・2020年は上昇基調ですが上昇幅はほぼ横ばい、そこから2021年にマイナス圏内となり、2022年にプラスに転じます。しかし、2020年の水準までは戻っていないという状況です。

都道府県別の住宅地・商業地の変動率

次に、各都道府県別に住宅地の地価を見てみましょう。

図5:都道府県別 2022年地価公示変動率(住宅地)

国土交通省「地価公示」より作成

都道府県別にみると、住宅地ではプラスとなったのは20都道府県で、それ以外の27県ではマイナスとなりました。2021年のマイナス数は38都道府県でしたので、大きく改善しました。
上昇が目立つのは北海道で+4.6%。2021年に引き続き、都道府県別では1位でした。全国の住宅地上昇率トップ10は、全て北海道内の地点で、そのうち7つは北広島市となっています。北広島市は、日本ハムファイターズが拠点とする新球場の建設が進んでいること、新千歳空港からのアクセスがよく、札幌にも近いことなど、札幌市の郊外住宅地として人気が上がっているようです。

2018年から2020年まで住宅地地価上昇トップだった沖縄県は、2022年の上昇率は+2.0%。昨年は+1.0%でしたので、上昇幅が大きくなりましたが、回復とまではいっていないようです。
図6は、北海道と沖縄県の住宅地地価の推移です。北海道においては、新型コロナウイルス感染拡大の地価への影響はほとんどないことが分かります。逆に、沖縄県は大きな影響がありました。
次に商業地です。

図6:2006年~2022年 地価公示変動率(住宅地:北海道・沖縄県)

国土交通省「地価公示」より作成

次に商業地です。

図7:都道府県別 2022年地価公示変動率(商業地)

国土交通省「地価公示」より作成

都道府県別に見ると、商業地でプラスとなったのは15都道府県(±0を含めると18)で、それ以外の29県ではマイナスとなりました。2021年のマイナス数は39都府県でしたので、大きく改善しました。

都道府県地価と共通地点で見る、2021年前半と後半の変化

最後に、都道府県地価との共通地点(住宅地1,120、商業地504、合計1,624地点)を見てみましょう。都道府県地価は毎年9月に公表されますが、価格時点は7月1日で、地価公示は価格時点が1月1日ですので、一年のちょうど中間の値といえます。

住宅地をみると(図8)、全国、三大都市圏、地方圏、いずれも前半よりも後半のほうが上昇率が高くなっています。地価上昇の寄与は前半よりも後半のほうが高いため、上昇基調にあるといえます。
商業地をみると(図9)、こちらも住宅地と同様に、後半のほうが上昇率が高くなっています。こちらも上昇基調(あるいは回復基調)にあるということになります。

図8:都道府県地価調査との共通地点における半年ごとの地価変動率の推移(住宅地)

国土交通省「地価公示」より作成

※都道府県地価調査(毎年7月1日時点実施)との共通地点(1,624地点。うち住宅地1,120地点、商業地504地点。)での集計である。
前半:2021年1月1日~2021年7月1日の変動率
後半:2021年7月1日~2022年1月1日の変動率

商業地をみると(図9)、こちらも住宅地と同様に、後半の方が上昇率が高くなっています。こちらも上昇基調(あるいは回復基調)にあるということになります。

図9:都道府県地価調査との共通地点における半年ごとの地価変動率の推移(商業地)

国土交通省「地価公示」より作成

※都道府県地価調査(毎年7月1日時点実施)との共通地点(1,624地点。うち住宅地1,120地点、商業地504地点。)での集計である。
前半:2021年1月1日~2021年7月1日の変動率
後半:2021年7月1日~2022年1月1日の変動率

まとめ

まとめると、「地価は新型コロナウイルス感染拡大以前の水準までは回復していないものの、おおむねコロナショック前に戻りつつある」といえるでしょう。ただ、一部の商業地ではインバウンド需要の回復遅れのため、まだ以前の水準には戻っていないという状況です。

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