増える東京都の転出者数。首都圏郊外地域に大きな変化。人口移動実態を読み解く(1)
公開日:2022/02/28
POINT!
・東京都では、転入超過数が2年連続の減少。転出者数が47都道府県中、最も増加した
・首都圏の周辺県では転入超過数が増加した
・東京圏では、15~29歳の区分で転入超過、0~9歳、30~79歳の区分で転出超過となった
2022年1月末に総務省から2021年12月分の住民基本台帳人口移動報告が公表されました。
これにより2021年の1年間分が出揃い、都道府県を跨いだ人口移動数がまとまりました。
新型コロナウイルス感染拡大の影響の広まりから約2年が経過し、我々の生活がだんだんとwithコロナ仕様に変わりつつあります。そんな中で住まいのあり方は、どう変わってきているので
しょうか。
今回取り上げる「人口移動」の数字は「住む場所の変化」と言えます。今回は主に首都圏について取り上げ、次回は大阪圏、名古屋圏、その他のエリアについて解説します。
(以下数値はすべて総務省「住民基本台帳人口移動報告2021年(令和3年)」より)
ここ3年間の転出入の状況
2021年の都道府県間の移動者は247万6,640人で、2020年分からプラス12,648人(プラス0.5%)となりました。2020年は前年に比べてマイナス104,094人と大きく減少しましたが、移動数は大きく戻らなかったという結果となりました。新型コロナウイルスの影響がまだ大きいものと思われます。2020年は東京都を除く46道府県で転出数が減りましたが、2021年はその反動なのか、24都道府県で増加となりました。
3大都市全体では65,873人の転入超過となり、前年比でマイナス15,865人、2年連続の縮小と
なりました。
大きな変化のあった東京圏の状況
東京圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)は81,699人の転入超過、前年比でマイナス17,544人となり、これは2年連続のマイナスです。都県別にみると、全ての都県で転入超過であり、東京都は5,433人、神奈川県は31,844人、埼玉県は27,807人、千葉県は16,615人でした。
神奈川・埼玉・千葉県では、転入超過数が増加したのに対して、東京都では転入超過数が2
年連続の減少となりました。前年の転入超過数は31,125人でしたので大きく減少したことになります。
東京都は、転出者数が12,929人(プラス3.2%)と47都道府県中、最も増加しています。
これは5年連続となっています。一部報道などでは、「新型コロナウイルスの影響で郊外に転居する方が増えたから」とありました。確かにこうした要因もあると思われますが、加えて5年前から転出者数の増加が続いている現状を鑑みると、マンションをはじめとした住宅価格の上昇から、新居購入時に周辺各県へ移動している世帯も多いものと推測されます。
転入超過数が増える首都圏周辺の県
転入超過となったのは10都府県でした。このうち、前年の転出超過から転入超過に変わったのは、茨城県・山梨県・群馬県の首都圏の周辺県のみでした。この3県とも、2020年には転出超過が減少し、ついに2021年には転入超過となりました。
この3県では、転入者が大きく増えていることが注目されます。茨城県は2019年、2020年は
前年比でプラス300人前後でしたが、21年は前年比プラス3,501人と大きく増えました。
同様に、群馬県では2019年、2020年は転入者の前年比はマイナスでしたが、2021年は前年比でプラス1,074人、山梨県でも同様の現象が起こっています。茨城県、山梨県への東京圏(1都3県)からの転出が超過したのは集計を開始した2014年以降初めてとなりました。新型コロナウイルスの影響の広がりから2年で、都市部の周辺地域の住環境の良さが見直され、また働き方の変化が進んでいることが要因と思われます。
ちなみに、転入超過数が拡大したのは、埼玉県がトップで、千葉県、神奈川県、滋賀県の4県のみとなりました。
東京圏では年代別での大きな違い
東京圏における5歳区切りでの人口移動の実態を見ると、特徴が浮き彫りになります。転入超過となっているのは20~24歳が最も多く69,936人、次に15~19歳で23,742人、25~29歳が17,747人となっています(この3区分合計は111,425人)。このうち、15~19歳の区分では5年ぶりに転入超過数が増えました。
特徴的なのは、新型コロナウイルスの影響が大きかった2020年と、withコロナの生活スタイ
ルが浸透してきた2021年に違いがあることです。
進学が多いと考えられる15~19歳の区分では、転入超過数は2021年>2020年ですが、逆に就
職が多いと考えられる20~24歳の区分と25~29歳の区分では、2021年<2020年となっていま
す。
一方で、30~34歳の区分では、2014年以降初めての転出超過となりました。0~9歳の区分、
30~79歳の区分で転出超過となっています。
ここから、おもに都市部の賃貸住宅に住むと思われる10代後半~20代後半の人口流入は、多少の増減はあるものの、これまでとそう大きな変化はないことが推測されます。一方で、ファミリー世帯の転出数は拡大しているようです。在宅ワークが広まり、この先もある程度は続くと考
える方が増え、とくに子どもが小さい(~9歳区分)世帯での転居が進んでいるものと思われます。
首都圏郊外に自宅を購入して移転するのか、あるいは賃貸住宅に住む方が多いのかは、この調
査結果からはうかがえませんが、一定数は賃貸住宅への転居の方もいるものと思われます。