所有者不明土地の解消に向けた施策とは
公開日:2021/06/30
POINT!
・2017年は国土の約22%が所有者不明。高齢化社会の進展で今後も増加の見込み
・特別措置法は、所有者不明土地の発生を予防する方策と利用の円滑化を図る方策の2本柱
・特措法の見直しで、相続登記の申請を義務化したり、相続した土地の所有権を国庫に帰属させる制度を創設
所有者不明土地とは、「不動産登記簿等により所有者が直ちに判明せず又は判明しても連絡がつかない土地」を指し、これが近年大きな問題となっています。「土地活用ラボ」でも再三取り上げられていますが、2021年度の動きも含めて、改めて「所有者不明土地の問題」について解説します。
約22%の土地が所有者不明
国土交通省が2017年に公表した「地籍調査における土地所有者等に関する調査」によると、所有者不明土地の割合は約22.2%ということですから、その多さがうかがえます。
所有者不明土地は、管理の放置による環境悪化を招くだけではありません。公共事業の用地買収、災害の復旧・復興事業の実施、民間の土地取引の際に、所有者の探索に多大な時間と費用、労力を要するなど、経済的観点からも著しい損失を生じさせています。
所有者不明土地の多くは、「相続が生じても登記がされないことなどを原因」として発生します。
これからさらに高齢化が進むことは確実で、今後はさらに相続多発時代になります。そうすると、所有者不明土地が増える可能性がこれまで以上に高まります。
そのため、所有者不明土地の発生を予防する施策、既存の所有者不明土地を円滑に有効活用できるようにする施策が求められます。
その他、所有者不明土地が発生するパターンとして代表的なものに、法人や個人が所有する土地があります。所有者が住所を移転した際に、都度登記を変更するのは手間がかかるため、それを怠る法人・個人がいるようで、その結果、所有者不明土地となります。
特別措置法スタートから、もうすぐ3年
こうしたことから、早急な法整備が必要とされ、2018年11月から法務省及び国土交通省が所管する「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」の一部が施行され、法務省関連の制度の運用が開始されました。この特別措置法では、法務省関連の制度として、登記官が、所有権の登記名義人の死亡後、長期間にわたり相続登記がされていない土地について、亡くなった方の法定相続人等を探索したうえで、職権で、長期間相続登記未了である旨等 を登記に付記し、法定相続人等に登記手続きを直接促すなどの不動産登記法の特例が設けられ ました。(出典:法務局ウェブサイト)この特別措置法が施行されて2021年の秋に3年を迎えます。そこで2021 年4月下旬に成立・公布された法律(「民法等の一部を改正する法律」及び「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」)により、次のように、さらに一歩進んだ法律となる見込みです。
所有者不明土地の特別措置法は、こう変わる
こうした流れの中で、さらに所有者不明土地の増加を抑えられるよう、一歩進んだ法律の施行が目指されています。
まず、発生予防策として法律化するのは以下の2つです。
不動産を取得した相続人に対し、その取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をすることが義務付けられます。併せて、相続人申告登記の創設などの負担軽減策・環境整備策がパッケージで導入されます。これは、本令公布日(2021年4月28日、以下同)から3年以内(最
も遅くとも、2024年4月27日までに)に施行されます。
そして、住所等の変更登記の申請が義務化となります。これは、5年以内に施行されます。
他の公的機関(住基ネット等)から取得した情報に基づき、登記官が職権的に変更登記をする
方策が併せて導入されます。
また、これは画期的なことだと思いますが、「土地を手放すことができる制度」が導入されま
す。土地を国に渡す制度です。
この制度は、「相続土地国庫帰属制度」という名前で創設され、「相続等により土地の所有
権を取得した者が、法務大臣の承認を受けて、その土地の所有権を国庫に帰属させることができ
る制度」です。
こうしたことが今度の法律の進展の柱ですが、これ以外にも、細かい制度を盛り込み、所有者
不明土地の発生を抑える施策が取られるようです。
スムーズな施行を期待したいと思います。