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コラム vol.306
  • 不動産市況を読み解く

海外不動産投資にブレーキか?国内賃貸住宅が再び活況になる?

公開日:2019/11/29

POINT!

・海外不動産投資の赤字を国内での給与所得などと損益通算して所得税対策ができていた

・税制改正で、海外不動産を使った税務対策は規制される見通し

毎年、12月上旬に発表される次年度からの税制改正ですが、次の改正で海外中古不動産を使った税務対策スキームにメスが入りそうです。(執筆時2019年11月19日)
以前から海外不動産投資をする人は少なからずいましたが、近年の日本の不動産価格上昇に伴い、「今の日本国内不動産は高いから、海外不動産投資を行いたい」と考える人が増えてきました。しかし、この税制改正が行われると海外中古不動産投資に一定のブレーキがかかり、その流れで国内の賃貸住宅への投資にプラスになるかもしれません。

海外不動産(住宅系)投資を行う人の狙い

海外不動産投資(住宅系)において投資家の狙いは、概ね2つのパターンがあります。
一つは、アジア後進国などのプレビルドのマンション(まだ建設されていない、あるいは建設途中)(区分所有権)を購入して、物件の値上がり期待(キャピタルゲイン)と将来のインカムゲインを狙うタイプ。
もう一つが、例えば北米の中古木造住宅(一戸建て)などを購入して、大きな減価償却により、損を出すことで、所得税対策を狙うタイプです。もちろん、こちらのタイプもキャピタルゲインやインカムゲインも合わせて狙います。
二つのタイプとも、融資をどうするかが問題になるのですが、それは今の日本国内不動産でも同様です。
前者では、「本当にマンションはきちんと建設されるのか」、「入居が見込めるのか」、「管理体制は大丈夫か」、「出口=売却のルートはあるのか」といったビジネス慣習の違いや、不動産関連市場の未整備の懸念を抱くことが多いようですが、購入金額が比較的低いことや、「大きなリターンを狙うので、多少のリスクは仕方ない」と思って投資する人が多いようです。
一方、後者に関しては、主にアメリカ等の市場が整備されている国に存在する不動産ですので、こうした懸念はなく、かなり高額な物件でも大きな税務対策となることや、「大きな値下がりの可能性が少なく、逆に値上がり期待もかなりある」という安心感から、富裕層を中心に投資が広がっていました。この税務対策スキームにメスが入るようです。

アメリカ中古不動産の税務対策スキーム

所得税を算出するときに、給与所得等とともに不動産、山林、事業、譲渡の4つに関しては損益通算(赤字や黒字を合算)できます。不動産所得で赤字ならば、所得合計が低くなり、その分税務対策ができるということです。国内で賃貸需要のあるようなエリアでの住宅の評価は、土地と建物で半々、都市部など地価の高いところでは8割が土地などということもあります。
アメリカでは、建物価値が高く65%~80%というのが一般的です。ニューヨーク州郊外の高級住宅地でも建物比率が70%~80%超というのが普通です。
建物には減価償却があり、一定年数が経った物件には加速度償却が認められています。加速度償却とは、通常より短期間で資産の減価償却を行う方法です。中古物件の耐用年数を算出する際に簡便法を使うことで、年数が短くなり、これにより1年あたりの減価償却費用が大きくなります。木造住宅の場合、「耐用年数=22年」ですが、この耐用年数に20%をかけたものでよいということです。例えば築25年の物件でも「22年×20%=4年」で償却できることになります。北米の木造住宅では築30年、50年の物件はたくさんあり、一般的です。
例えば、「築30年、1億円の木造住宅、建物比率80%」の場合、1年の減価償却費用は2000万円です。賃料50万円×12カ月の収入、経費が40%かかったとして、360万円の利益、ここから減価償却費を引くと1640万円の赤字になり、給与等の収入と合算されます。2000万円の収入は360万円の収入となり、この360万円に所得税が課せられますので、かなりの税務対策になります。

今回の改正では、
1)海外不動産所得での損益通算ができなくなる
2)この簡易計算方式は耐用年数×20%
のどちらかが改正される、もしくは両方、のようです。

こうした改正が行われると、海外不動産(とくに中古物件)を買う人は、大きく減ると思われます。そして、ここ半年くらい少し落ち着きを見せていた、日本の賃貸住宅投資、土地活用投資が再び活況になるかもしれません。来年度からの税制度改革は、海外不動産投資を行っていない人も要注目です。

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