空き家データを読み解く。賃貸住宅の空き家(空室)について
公開日:2019/05/31
POINT!
・賃貸用住宅の空き家は依然として多いが、4大都市のうち賃貸用住宅の空き家実数、空き家率がともに低下している都市も多くあった
空き家の4分類
総務省「住宅・土地統計調査」における空き家の分類は、二次的住宅(別荘、その他)、賃貸用の住宅、売却用の住宅、その他の住宅の4つに分類されています。
2019年4月26日に発表された住宅土地統計調査(速報値)によると、住宅総数は前回(2013年10月時点)に比べて、今回(2018年10月時点)は約180万戸増加。これは+3%で、伸び率はかなり低いものとなりました。5年間の空き家増加数を都道府県別で見ると、最も多いのは東京都で約31万戸、次に神奈川県で15万戸、千葉県の14万戸、埼玉県の12万戸と首都圏で合計72万戸でした。増加数の約40%が首都圏に集中する形になっています。こうした数字からも首都圏への人口集中の傾向がうかがえます。
今回は、空き家の4分類のうち、賃貸用の住宅について分析してみます。
図1
2013年 総務省 住宅・土地統計調査レポートより
賃貸用住宅の空き家
今回調査(2018年10月時点)の空き家を分類別にみると、最も多いのは、賃貸用住宅の空き家で約431万戸(室)。空き家総数846万戸の約51%と過半を占めています。続いて、その他の住宅(長年使われていないもの等)が347万戸で約41%となっています。
こうしてみると、賃貸用住宅の空き家が多いように見えますが、住宅着工数に占める賃貸用住宅の比率も高いので、賃貸用住宅の空き家数が最も多いのも当然なのかもしれません。
しかし、今回の調査では、賃貸用住宅の空き家実数、空き家率ともに低下している都道府県も多く見られました。
空き家数減少基調の大都市の賃貸用住宅
4大都市(東京、大阪、愛知、福岡)の賃貸用住宅の空き家について見てみましょう。
図2:賃貸用の空き家数の推移(東京都)
総務省統計局「住宅・土地統計調査」より作成
図2は2003年から5年毎の東京都における賃貸用住宅の空き家数の推移です。
これを見ると、2003年以降空き家が増えていましたが、今回の調査では2万戸(室)近くが減少しています。
「それでも、57万戸(室)もある」という意見もあると思いますが、総数に占める割合は10%程度。かなり築年数の経ったものや、リフォーム予定、解体予定等、入居者募集停止物件もあるため、築年数が30年未満の賃貸住宅の空き家率は、5%前後だと予測されます。
次に愛知県を見てみましょう。
図3:賃貸用の空き家数の推移 (愛知県)
総務省統計局「住宅・土地統計調査」より作成
愛知県においては、約3万5千戸(室)減少しています。約17%もの大幅な減少ですので、この数字だけ見ると大幅に改善されているといってよいでしょう。
図4:賃貸用の空き家数の推移 (福岡県)
総務省統計局「住宅・土地統計調査」より作成
次は、福岡県です。約1400戸(室)の減少で、減少率は1%弱でした。こちらは、ほぼ横ばいといった状況です。
最後に大阪府を見てみましょう。
図5:賃貸用の空き家数の推移 (福岡県)
総務省統計局「住宅・土地統計調査」より作成
大阪府における賃貸用住宅の空き家は、約45万戸で、5年前に比べて約3万5千戸(室)増加し(約8.5%増)、4大都市では唯一、大幅な増加となりました。
今回発表の数字は、速報値となっていますので、最終的な数字は確定値を待つ必要があります。しかし、関係者に聞くと、それほど大きな差は出ないとのことですので、傾向として把握するには問題ないと思われます。