最新住宅賃料の傾向と、賃料とインフレの関係
公開日:2018/03/31
今回は、賃貸住宅賃料の最新動向と、賃料とインフレーションの関係について検討してみます。
最近、都市部を中心に少しずつですが、賃貸住宅賃料の上昇がみられるようになってきました。とくに、大都市圏の分譲マンション賃貸物件でその傾向は顕著のようです。
分譲マンション賃料推移(募集賃料ベース)
※分譲マンションのうち賃貸に供す目的で東京カンテイのデータベースに登録された住戸の月額募集賃料より算出している。
※ファミリータイプのみ(専有面積30㎡未満の住戸、事務所・店舗用は集計から除外)
(株)東京カンテイ「分譲マンション賃料」より作成
を見ると、2017年の半ば頃から、首都圏、中部圏、いずれも上昇基調にあります。関西圏も、やや遅れて上昇ムードになっていることが分かります。
大都市圏においては、人口流入が増えている事、また経済が好調にあること、求人倍率の上昇が続いていることなどが主な理由でしょう。景気拡大は2013年頃から続いていますが、賃料は2017年頃から遅れての上昇です。
賃料には「粘着性」、「遅行性」という特性があり、これは、一般的に景気動向に敏感に反応するのではなく、また地価や不動産価格の上昇に遅れて、その影響が表れるという意味です。その傾向がはっきりと出ています。
一方、全国の賃料を見てみましょう。こちらは、CPI調査のデータです。
CPI民営賃料の推移(2015年=100)
総務省統計局「消費者物価指数」より作成
全国の民営賃貸住宅(公団、社宅など以外)の賃料は2000年ごろから概ね横ばいです。都市部では少しですが上昇している賃料ですが、全国的に見るとそれほど大きな変化はありません。特に地方都市の中でも過疎化が進んでいるエリアなどは賃料の下落も見られますから、全国平均では横ばい~若干の下落は仕方ないと思います。
さて、賃貸住宅経営を始める方々の理由は人それぞれだと思います。遊休地の活用、税務対策、将来の私的な年金のため・・、など多種多様です。
賃料収入を得ることは、もしかすると将来我が国で起こるかもしれない「インフレーションに備える」という考えで賃貸住宅経営を始める方も少なからずいらっしゃるかもしれません。賃料収入を将来に渡って得ることは、インフレが起こった際のリスクヘッジになります。
インフレーションとは物価が上がることです。例えば、100円の缶コーヒーが200円になると物価の上昇です。しかし、それは裏を返せば(缶コーヒーの中身が同じだとすると)、100円の価値が下がったということになります。つまり、インフレーションは通貨の価値の下落を意味します。
民間賃料(賃料)も物価の1つですから、インフレーションになれば、当然、賃料も上昇します(いうまでもありませんが)。
具体的に見てみましょう。
インフレ率(コアCPI)とCPI家賃の前年対比の推移
総務省統計局「消費者物価指数」より作成
上図は、1971年から2017年までの消費者物価指数の中のコアCPIと民営賃料の推移です。ちなみに、コアCPIは、消費者物価指数の中から、自然(天候等)の影響を受けやすい、生鮮魚介、生鮮野菜、生鮮果物などを除いたものです。
図の左半分をみれば分かるように、コアCPIと民営賃料はかなり同じような上昇下落の動きを示しています。1980年~2004年までの間のこれらの相関係数は0.77ですから、「かなり強い相関」の関係にあることが分かります。一方、近年は消費税増税以外での物価の停滞が続いているため、明確な関係は見えてきません
このように、物価が上昇すれば賃料も上昇するということがはっきり見えます。つまり、賃料収入を将来に渡って得ることは、インフレのリスクヘッジになるということなのです