2017年 秋 最新事情 空き家状況について考える
公開日:2017/09/29
POINT!
・現在10%台の空室率は、2030年には25%超という予測
・空き家の除却と活用が、空き家問題の解決のカギとなっている
古い住宅が空き家を増加させる
日本の空室率は最新の2013年のデータ(総務省「平成25年住宅・土地統計調査」)によると13.5%。近年は横ばいでしたが、今後は伸び続け、2030年ごろには25%を超えると民間シンクタンクは予測しています。
一方、アメリカの空き家率は10%前後といわれています。
日本において空き家率が増える理由ははっきりとしています。新設住宅はリーマンショック以降大きく減ったものの、それでも80万戸台~90万戸台という安定した数が建てられています。その一方で、築年数が経って使わなくなった古い家がそのままになっているからです。
日本の住宅(特に戸建て住宅)は築35~45年程度で使わなくなることが一般的で、継続使用のために建て替えが行われたり、使わなくなって売却されたりすれば、空き家となりませんが、そのまま放置されると空き家になります。
図1は、2007年~2016年の新設住宅戸数と除却数の推移です。
図1:新設着工戸数と除却数の推移
国土交通省「住宅着工統計」「建築物滅失統計調査」より作成
これを見ればわかると思いますが、新設数に比べて圧倒的に除却数が少なくなっています。人口減に対して多くの住宅が建てられているというよりも、除却数が追いついていないと見るべきでしょう。このままでは、空き屋問題は解決しないと思われます。
空き家が増える根本的な原因として、相続の問題、除却して更地にすると固定資産税が一気に増えるという税制度、除却にかかる費用負担が大きい、などがその理由として指摘されています。
平成30年度の国土交通省の予算概算要求にも、「市町村が行う空き家の活用や除却等の総合的な支援の推進」という項目が入っており、空き家の除去に対して補助金を出すなどといった支援策が想定されます。
いかに空き家を活用できるか
次回の発表は2018年ですが、その40年前は1978年(昭和53年)で、かなり多くの住宅が建設されていた時期になります。これらの一定の割合が空き家となると思われます。
ヨーロッパの先進国の空室率は1桁台、アメリカが10%前後という状況を考えると日本の空室率は高めといえます。先進諸国の中で、最も高いというデータもあるようです。
その理由として、欧米諸国に比べて中古流通の少なさが指摘されています。アメリカに比べて、中古住宅の流通は1/10といわれており、「新築よりも中古流通を促進すべきだ」という議論が政府や有識者の間で行われています。かなり前からこの議論はあり、国土交通省も促進支援策を行っていますが、大きな進展にはつながっていません。日本では新築が好まれる傾向があるのでしょう。
先に述べた、平成30年度の国土交通省の予算概算要求には他にも、空き家の活用促進や所有者不明の土地の活用などが挙げられています。「新築建てすぎ」という議論よりも、こうした抜本的な改善が求められていることがわかります。