2017年6月レポートサブリース契約の実態と、メリット&デメリット
公開日:2017/06/30
POINT!
- ・サブリース契約には、空室時にもオーナー様が安定した収入を見込めるというメリットがある
- ・一方で、「家賃減額」などの際にトラブルになるケースもあるので注意が必要
サブリース契約は、遊休地における土地活用で賃貸住宅経営を始める多くの方が利用しています。
ワンルームマンション投資などにおいては、利用する方は少ないようですが、1棟モノの賃貸住宅を建設する場合などにおいては、多くの方が利用しているようです。
サブリース契約は賃貸住宅経営を行う際において、収益の安定が見込めることなどメリットが多いのも事実ですが、サブリースにおける原契約(家賃保証)の金額が一定年次ごとに変更される契約となっており、そのことについて理解していなかったためにトラブルもあるようです。
サブリース契約は、賃貸住宅建築費用のローンを抱えるオーナー様にとっては、空室が出たときになどでも、賃料が一定額入ってくる等多くのメリットがあるため有用な契約ですが、きっちりと理解して契約することが重要です。
賃貸住宅経営とサブリース契約の状況
賃貸住宅の経営は、図1のように圧倒的に個人経営が多いのが実態です。
図1:賃貸住宅の供給状況
国土交通省「民間賃貸住宅に関する市場環境実態調査(H22年)」より作成
法人の中には、不動産業や事業会社を営む会社だけでなく、賃貸住宅経営だけを行う個人が設立した法人もありますので、おそらく9割くらいは事実上個人経営だと思われます。
図2は、賃貸住宅の管理形態の実態です。
図2:賃貸住宅の供給・管理の状況
国土交通省「民間賃貸住宅に関する市場環境実態調査(H22年)」より作成
およそ8割のオーナー様が募集から契約、管理の全部または一部を委託しており、賃貸住宅経営においてサブリース契約がかなり浸透している実態が分かります。
管理戸数上位の企業のサブリース契約の実態を見ると、図3のようになります。
図3:管理戸数ランキング2016年 上位10社
全国賃貸住宅新聞「2016年 管理戸数ランキング」より作成
ランキング1位の大東建託グループでは、管理戸数のうち約98%がサブリース契約をしているという状況です。管理戸数3位のレオパレス社では100%、大和ハウスグループの大和リビング社では、約90%となっています。
サブリース契約に関する国土交通省の通知
サブリース契約はメリットが多いため、多くの方が利用していますが、契約内容に関して、説明が不足しているためか、時々契約に関するトラブルが発生し、時に裁判になる事例も出ています。
こうした状況を受けて、国土交通省は平成28年9月1日に業界団体に向けて「サブリースに関するトラブルの防止に向けて」と題し、通知を出しました。
- 1. 近年、土地所有者等がアパート等の賃貸住宅を建設し、管理業者が当該賃貸住宅を借り上げて転貸する、いわゆるサブリースに関して、家賃保証を巡るトラブルが発生しています。
- 2. 国土交通省においては、賃貸住宅の管理業務の適正化を図るため、平成23年度より賃貸住宅管理業者登録制度(以下「登録制度」という)を実施していますが、今般、サブリースに関するトラブル等に対応するため、登録制度を改正しました(平成28年9月1日施行)。具体的には、家賃保証に関する十分な説明がないままサブリースの契約が行われて後々のトラブルにならないよう、賃貸住宅管理業者が建物所有者に対し、契約締結前に、将来の借り上げ家賃の変動に係る条件を書面で交付し、重要事項として説明することを義務付けるなど、ルールの改善を行ったところです。
- 3. サブリースに関するトラブルの防止に向けて、・登録制度による登録を受けている賃貸住宅管理業者においては、当該ルールの遵守・未だ登録していない賃貸住宅管理業者においては、速やかな登録の検討に加え、登録をしていない間における当該ルールの趣旨に則った業務の執行をお願いします。
- 4. また、賃貸住宅管理業者と同一の者がサブリースを前提とした賃貸住宅を建設する場合又は賃貸住宅管理業者と連携した他の者(同一グループの会社等)がサブリースを前提とした賃貸住宅を建設する場合においては、当該賃貸住宅の建設後にはサブリースの契約締結が見込まれることから、後々のトラブルを防止するため、当該賃貸住宅の建設に係る契約をする段階から将来の借り上げ家賃の変動等について、土地所有者等に十分な説明を行うことが重要です。関係者の理解のもと、建設に係る契約の段階からの適切な対応をお願いします。
国土交通省「サブリースに関するトラブルの防止に向けて」より抜粋
そもそもサブリース契約とはなにか
賃貸住宅におけるサブリース契約は、サブリース業者と所有者の間で原契約を結び、サブリース会社とご入居者との間で転貸借契約を結ぶものです。
この契約により、所有者(オーナー様)は、契約期間は万が一空室が出ても契約どおりの一定額が入ってきます。
ご入居者とサブリース会社との契約賃料を100とすると、サブリース契約の金額は、80%~95%程度であることが一般的です。
サブリース会社はこの差額で、空室リスクを負い、入退去時の期間損失を負い、その他ご入居者との間のリスクを負います。その対価としての差額ということになります。
サブリース契約のメリット
でサブリース契約の一番のメリットは、賃貸住宅経営で気をもまなくて済む、ということでしょう。
「空室が出たらどうしよう」「家賃の滞納があったらどうしよう」「入居してもらえるか」「ご入居者とトラブルになったらどうしよう」などという心配から解放されます。
こうした問題が気になり、一つ一つ対応しなければならないとしたら、定年後に賃貸住宅経営だけを行うというような方はまだいいとして、仕事をしながら賃貸住宅経営を行う方には、「そんな時間はない」と言う人も多いでしょう。
サブリース契約での注意点
サブリース契約での注意点はいくつかありますが、なんといっても、一番トラブルが起こりやすいのは「家賃の減額」に関することです。
減額が大きければ、ローン返済ができなくなる可能性さえもありますので、注意が必要です。
一般的な契約書では、一括借り上げの家賃(保証された家賃)を数年に一度見直すとなっています。その見直しの理由としては、「経済状況や周辺の家賃事情などを考慮」して、改定家賃を決めるようですが、ここで、増額の場合はいいのですが、大きく減額となると「そんなこと聞いてなかった」となりがちです。
ここでの注意点は3つです。1つ目は、当然ですが、こうした減額可能性が十分にあり得るとして契約すること。2つ目は、サブリース会社と契約する際に、近隣エリアの既契約物件の20年程度の契約改定の状況を聞いておくことです。そして、3つ目は、スタート時の契約家賃が適正かを確認することです。契約を取るためにスタート時だけ家賃を高くしておいて、大きく減額するという事例もあるようですので、きっちりと確認してください。
こうしたトラブルが多く見られたため、国土交通省は対応に乗り出しました。
サブリース契約に関するトラブルを防ぐために国土交通省が規定した基準
サブリース契約についての業務基準が平成28年8月12日国土交通省から告示されました。
「賃貸住宅管理業務処理準則の主な改正事項」という部分を抜粋します。
- (1)貸主への重要事項説明等を一定の資格者が行うよう義務化
賃貸人に対する管理受託契約に関する重要事項の説明等及び契約の成立時の書面交付について、実務経験者等であることを示す書面の提示、実務経験者等をして説明、書面の交付及び記名押印することを義務化
転貸の場合の賃貸人に対する賃貸借契約に関する重要事項の説明等及び契約の成立時の書面交付について、実務経験者等であることを示す書面の提示、実務経験者等をして説明、書面の交付及び記名押印することを義務化
- (2)サブリースの借り上げ家賃等の貸主への重要事項説明の徹底
貸主へ説明等すべき重要事項として、借賃及び将来の借賃の変動に係る条件に関する事項を明記サブリース業者から基幹事務の一括再委託を受ける登録業者に対し、貸主への重要事項の説明等、契約の成立時の書面交付及び管理事務の報告を義務化
国土交通省「賃貸住宅管理業務処理準則」より抜粋
この改正登録規程及び改正業務処理準則は、平成28年9月1日から施行されています。
ただし、実務経験者などの設置及び実務経験者などによる重要事項の説明などに係る規定については、登録業者及び新規登録を申請する業者が実務経験者などを設置するための期間を考慮し、約2年後の平成30年6月30日まで経過措置を設ける、とされています。
サブリースは賃貸住宅経営においてメリットの大きいシステムですが、単に「家賃保証なので安心」ということだけに心奪われるのではなく、きちんと説明を受けてその内容を理解してから、サブリースの契約を結ぶことが求められます。