2016年12月 レポート
2017年は、土地活用・不動産市況の大きな転換点か?~2017年不動産市況の展望~
公開日:2016/12/22
2016年の不動産市況は、2015年後半に失速しかけた市況が、2016年1月下旬のマイナス金利政策発表によって持ち直しが起こり、概ね前年からの高水準を保つことになりました。
しかし、実需マンションは高値が続いており、夏以降売れ行きは芳しくないようです。
2017年予測の為の現状分析(2016年12月時点)
円安状態が続いています。2016年11月初旬は100円~103円程度だった円ドル相場はトランプ氏が新大統領に選出され、強気な経済政策を行う見通しとなり、またFRBも順次利上げを行うことを示唆していることから、この傾向は2017年中、続くでしょう。2016年12月15日(執筆時点)で、117円となっており、1カ月強で、10%以上も円の価値が値下がりしました。
それに伴い株価は上昇を続けています。円安の影響と年末上昇が相まって、このところ年初来最高値が続いています。しかし、企業業績が好調という訳でもないのに上昇をしていることから、日経平均は年度内(2017年3月)、もしくは梅雨前頃(2017年6月)には、2016年半ば頃の1万6,000円~1万8,000円の範囲に収まると思われます。
不動産市況は、微妙な様相を呈しています。
マンションの新規販売は苦戦しており、割安なマンション用地や事業用地が減少。土地仕入れの難航が続いています。
その一方で投資用不動産の販売は好調で、土地活用受注も好調。不動産市況は奇妙な二極化の様相を示しています。
金利は超低金利が続いているものの、わずかずつですが上昇の兆しが見え始めてきました。
投資を促し経済活性化を目指すために、日銀は国債購入を依然として進めています。それがどこまで続くかによって、事実上、今後の金利を決めます。
図1:住宅価格指数 1993年6月~2016年9月
出所 財)日本不動産研究所
住宅の市況をデータで読み解く
一般財団法人日本不動産研究所が公表している住宅価格指数は、中古マンションの取引事例をもとに算出している指数です。
東京の指数を見ると、昨今の不動産市況の盛り上がりはミニバブル期(2005年~2008年)を超えようとしており、価格の天井感がうかがえます
2013年からのいわゆるアベノミクス以降だけをフォーカスすると下図のようになりますが、これを見ると、2015年年末~2016年の初めにかけての失速感が伺えます。
図2:住宅価格指数 2013年1月~2016年9月
出所 財)日本不動産研究所
データで読み解く2017年の土地活用・不動産市況の予想
不動産市況は全般的にみると、横ばいからややネガティブな状況になると思われます。特に都心を中心とした高値推移地域のマンション市況は、ネガティブな動きになるでしょう。しかし、投資用不動産の市況、土地活用の市況はあまり落ち込むことはなく、わずかにネガティブな状況か横ばいとなるでしょう。
注目すべきは、金融庁の動きです。1月からアパートローンが過剰警戒され、金融庁の監視が強化されるようです。
例えば、ローンの審査状況で優・微妙・不可の3分類に分けていたとして、「微妙」のカテゴリーの融資について、ローン審査が通らないものが出てくる可能性があるかもしれません。
土地活用としての賃貸住宅を含めた貸家の新築着工数は、2016年の1年間で41万8,000戸(前年対比プラス10%)となりました。
2017年は、アパートローン審査の行方次第で、地方都市や郊外部で落ち込みを見せるかもしれません。
一方、大都市部では、賃貸住宅の需要はあるものの、土地(遊休地)活用ではない、土地と建物セットの新築賃貸用住宅の供給が減るかもしれません。賃貸事業に向いた土地が減ってきていることも、業界内ではいわれています。
こうしたことを踏まえると、2017年の貸家の着工数は、2016年を少し下回り39万戸~40万戸あたりではないでしょうか。
一方、不動産投資家の物件購入意欲は収まりそうにないことから、区分不動産投資物件の高値圏推移は続くでしょう。それに伴う懸念材料は、貸出金利の行方です。10年物国債の金利が上昇し始めているなど、いくつかのローン金利上昇懸念が見え始めているので、慎重な姿勢が求められる局面といえます。
2017年は不動産投資・土地活用の転換点となる可能性が高まってきています。金利・金融庁の動きが最重要ポイント。そして、データで示すことは難しいですが、個人的には、株価の行方が大きく左右する気がしています。