賃貸住宅経営の利回りについて考える ~キャップレートを読み解く~
公開日:2016/09/30
賃貸住宅への投資は、不動産投資件数の中では多くの割合を占めており、その数は年にもよるが3~5割に及ぶといわれている。また一件あたりの価格は他の不動産投資の中でも小さいのも特徴だ。
不動産投資の指標として、多くの投資家が目安にしているのがキャップレートだろう。
キャップレートは、Capitalization Rateを略したもので、「還元利回り」とも呼ばれる。2000年代初めに改定された不動産鑑定評価基準によれば、「還元利回りは、直接還元法の収益価格およびDCF法の復帰価格の算定において、一期間の純収益から対象不動産の価格を求める際に使用される率であり、将来の収益に影響を与える要因の変動予測と予測に伴う不確実性を含むものである」とされている。
つまり、キャップレートは不動産から生み出される純収益から不動産価格を求める際に用いられる利回りで、一般的には【純収益÷キャップレート=不動産価格】として表されるものだ。
賃貸住宅の期待利回り(CAPレート)の推移
一般社団法人不動産証券化協会「不動産投資短観調査」より作成
上図は、不動産証券化協会が発表しているキャップレートの推移をしめしたものだ。
リーマンショック後、キャップレートは大きく上昇した。つまり、ある程度の利回りがないと不動産投資を行わない方が増えたということになる。しかし、リーマンショックから落ち着いたのちは、キャップレートは低下の一途を続け、アベノミクス以降ではその下落(不動産投資熱の上昇)に拍車がかかっていた。しかし、最新のデータ(=上図)をみると、大都市ではその下落基調も落ち着きを見せていることが読み取れる。
土地活用としての賃貸住宅経営では、このキャップレートよりも高い利回りが期待できる。それは、所有している土地の上に賃貸住宅を建築するので、実質土地取得価格がゼロ円だからだ。よって、先に示した図表に掲載されている数字よりも少なくとも数パーセントは高い利回りを基準とすればいいだろう。
また、土地価格が高いエリア、つまり賃料が高く見込めるエリアにおいては、高い利回りが期待できる。ハウスメーカーなどで建設する場合、一般的に地域での建物価格に大きな差はないためだ。賃料が高く取れるエリアは、もちろん競合となる近隣に存在する賃貸住宅も増えてくるが、その分需要も旺盛なため、それほど気にしなくてもよいだろう。
現在、大都市だけでなく、地方の主要都市などでも、賃貸住宅投資意欲は高まっている。土地活用としての賃貸住宅経営はもちろん、新たに土地を取得して賃貸住宅を建設する、または土地建物セット=賃貸住宅の建売物件を取得するという賃貸住宅投資は、大都市から地方主要都市への移行の傾向がみられる。