コラム vol.014
インフレと土地活用 その1
公開日:2014/08/01
約35年ぶりにインフレを経験価
IMF(国際通貨基金)の発表では、日本における2013~2014年のインフレ率はプラス2.8%だった。(数字は各種発表データで、若干異なる)。これは、バブル絶頂期(90、91年3%ちょうどくらい)に匹敵する高水準で、1980年に入り成熟しインフレ率が低下した日本において、久しぶりのインフレを経験することになった。
インフレは喜ばしいことと言えるのだろうか。
インフレは、物価の上昇つまり信用通貨(紙幣など)の価値下落ということであり、単純に喜ばしいこととは言えない。
しかし、グラフ1を見ればわかるように、1999年からの日本においては、ミニバブルとよばれた数年を除けば、インフレ率はマイナスだった。大きなデフレ期だったという訳ではないが、ほぼプラスマイナスゼロという状態が続いていた。そこから、やっと少し脱したというのが現状だ。
今後の動向は分からないが、現在の政策では、インフレに誘導しているようなので、しばらくその傾向が続くと思える。
我々は(バブル絶頂期を除いて)1980年代前半以来、35年ぶりくらいにインフレを経験している。この、とても久しぶりのインフレ状態において、「どのようにお金や資産と向き合えばいいのか」を、じっくり考えなければならない。
インフレが続けば通貨価値は目減りする
インフレを平たく言えば物価が上がることで、インフレ率は上昇率のことだ。それは、言い方を変えると通貨(お金)の価値が下がったとも言える。
大雑把に説明すると、全く同じものを昨年は100円で買えたとすれば、+2.8%のインフレでは、102.8円でなければ買えないということだ。
先ほどのグラフを見て分かるように、バブル崩壊以降(1992~2014年)日本のインフレ率の年平均は0.23%に対して、アメリカは約2.43%となっている。アメリカはリーマンショック後に大きく落ち込んだが、すぐに戻している。
インフレ率の差が2%で仮に10年続いたとすると100万円が約86万円の価値になる計算だから、二国間で大きな差が生まれた。
今後とも2%程度の緩やかなインフレが続き、通貨の価値が目減りしていくということになると、何も対策をしなければ、現金という資産の価値は下がっていく。
ちなみに昨年(2012~2013年)のインフレ率はG7の中ではイギリスが最高で2.56%、おおむね1%台の日本が最低。ASEANは、ベトナム、インドネシア、ミャンマーなどは6%程度。他は2~3%となっている。
インフレ下では、目減りしづらい不動産などに資産を転化させ守る
では、どうすればいいのか?
現在のASEAN諸国、少し前の中国、シンガポールそして、日本の1960年代1970年代。インフレ期がしばらく続いている状況下で、多くの人々は資産を確保(目減りさせない)するために、不動産や金など、通貨をこうした資産の目減りしにくいモノに置き換えた。今の日本でも徐々にその傾向が見え始めている。
都市部を中心に不動産価格が上昇しているのは周知のとおりだ。
インフレになると、信用通貨(一般的な紙幣貨幣)の価値が目減りする。そのために、インフレ下においても目減りしづらい不動産などに資産を転化させ守る。
他にも、防衛策はある。インフレとともに価格スライドする収入源をもつというひとことだ。その代表的なものが、家賃などの賃料だ。
グラフ2は日本の主要都市の賃貸住宅の家賃の推移だ。2008年に各都市とも減少しているが、基本的にほぼ横ばいの状況が続いている。
グラフ1で見たようにこの間の日本経済はインフレ状態になく、またデフレと呼ぶような状況でもなかった(リーマンショック前後の一時的な状況を除く)。そんなプラスマイナスゼロ状態が続いたことも原因のひとつと思えるが、この間の賃料はほぼ横ばいだった。インフレ状況下では、賃料収入を持つことの重要性がますます高まることだろう。