トレンド・CREコラム
投資家の判断からCRE戦略の方向性を考える不動産投資判断における重視度と用途の変化
公開日:2016/08/31
不動産投資に関して、国内在住の投資家はどのような判断基準を持って投資を行っているのでしょうか。
平成27年3月に「不動産市場に関する国内投資家アンケート調査」が国土交通省から発表されました。同様の調査は平成24年度にも実施されており、3年前の結果と対比しながら、不動産投資におけるトレンド・変化を追ってみます。
不動産投資判断における諸要素の重視度の変化
まず、平成27年度と平成24年度の「不動産投資判断における諸要素の重視度」(平成27年度:表1、平成24年度:表2)を比較してみます。
これは、不動産商品等へ投資をする際に、どのような点を重視するかという調査ですが、平成27年度では、「(1)キャッシュフローの見通し(インカムゲイン)」が「大いに重視」で75.0%と突出して高く、「概ね重視」の18.2%と併せて90%を超えています。
「(2)物件の売却益の見通し(キャピタルゲイン)」に比べてインカムゲインの方が重視されている傾向が見られます。
キャピタルゲインとは資産の売買差益により得る利益で、インカムゲイとは資産を所有することで得る利益のことですが、インカムゲインを重視するということは、不動産に対して安定した利益を得ることを重視した投資を求めているといえるでしょう。
これは、平成24年度の調査から比較してもより顕著になりました。
平成24年度は、大震災の影響を大きく受け、建築物の耐震性能、免震・制振等や自然災害リスクの有無と対策状況などのニーズが大きく伸びましたが、投資家の方々の自然災害に対する危機意識は定着し、土壌・建築物の安全性や将来性を見極めつつ、インカムゲインをより重視する傾向が強まっているといえそうです。
表1:不動産投資判断時における諸要素の重視度(平成27年度)
出典:「不動産市場に関する国内投資家アンケート調査」国土交通省
表2:不動産の投融資判断における諸要素の重視度(平成24年度)
出典:「不動産市場に関する国内投資家アンケート調査」国土交通省
投資している不動産商品等の用途
「投資している不動産商品等の用途」についてはどうでしょうか。
平成27年度の調査結果(表3)では、3年前、現在、3年後という3つの時期的スパンで集計していますが、「投資している不動産商品等の用途」によれば、「現在」は、「オフィスビル」(42.4%)、「賃貸住宅」(43.2%)の割合がそれぞれ40%を超えており、高い割合となっています。
一方、「3年後」に投資していると想定される不動産等の用途では、「オフィスビル」「賃貸住宅」が概ね横ばい傾向であるのに対し、「商業施設」「ホテル・旅館」「物流施設」「ヘルスケア(高齢者施設・医療施設)」などが拡大傾向にあり、投資先の多様化が進行しています。特にヘルスケアへの投資に関しては、3年前と比べると大きな伸びを示しています。今後予想される超高齢社会を考えると、社会的なニーズも含めて、今後も増加していくと思われます。
これは、平成24年度に行われた調査(表4)と比較すると、大きな変化を見せています。平成24年度では、商業施設、ホテル・旅館、物流施設、いずれにおいても、3年後予測としては投資が減少するだろうと考えられていましたが、平成27年度は拡大傾向となっています。これは全体的な不動産投資の活性化を示しているといえるでしょう。
表3:投資している不動産商品等の用途(平成27年度)
出典:「不動産市場に関する国内投資家アンケート調査」国土交通省
表4:投融資している不動産等の用途(平成24年度)
出典:「不動産市場に関する国内投資家アンケート調査」国土交通省
さらに、平成27年度の「将来の投資先として興味がある不動産等の用途」(表5)を見ると、「ヘルスケア(高齢者施設・医療施設)」(12.3%)の割合が最も高くなっています。将来の投資先として「ヘルスケア(高齢者施設・医療施設)」に高い関心が持たれていることがわかります。
表5:将来の投資先として興味がある不動産などの用途(平成27年度)
出典:「不動産市場に関する国内投資家アンケート調査」国土交通省