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コラム No.64-5

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高まるBCP(事業継続計画)の重要性(5)重要な継続的教育・訓練

公開日:2019/02/28

企業・組織全体として一定期間BCP・BCMに取り組んだとしても、担当者の退社や役員の交代、時間経過による社員のスキルダウン、知識を持たない新入社員の入社、企業の環境の変化などもあり、徐々に効果は薄れていきます。効果的なBCP・BCMを維持するためには、継続的なBCP・BCMの教育・訓練の実施を欠かすことはできません。
内閣府も教育・訓練についての重要性を次のようにアピールしています。

  • 自社の事業継続を実現するには、経営者、その他の役員、従業員が、BCMにおける各役割に応じて、一定の能力・力量を持つことが必要である。そこで、これらを獲得できるよう、教育・訓練を行うことが求められる。その体系的かつ着実な実施のため、教育・訓練の実施体制、年間の教育・訓練の目的、対象者、実施方法、実施時期等を含む『教育・訓練の実施計画』を策定する必要がある。
  • 内閣府「事業継続ガイドライン第三版」(平成25年8月)より

BCMを常に経営課題として掲げ、教育やトレーニングをルーティンワークとして日常の業務の中に取り込めていれば理想ですが、日々大きな変化が起こりうる現在のビジネス環境においては、必要だとわかっていても、忙しさのあまり、ついつい後回しになってしまうのが現実かもしれません。
しかし、BCPに実効性をもたらす、いざというときの正しい判断と行動は、継続的な教育・訓練の実施からしか生まれません。普段から、 BCMの必要性や想定される発生事象(インシデント)の知識、自社のBCMについて、各自に求められる役割等を自覚し、当事者意識をもって取り組まないと、いざというときに役立ちません。
普段からBCP・BCMのトレーニングができていない企業においては、「教育・訓練の実施計画」の立案から始めることになります。漫然と教育・訓練を行うのではなく、あらかじめ目標を明確に定めると同時に客観的に達成度を評価する方法も決めておきます。実施した教育・訓練の評価結果に基づいて、その内容を継続的に改善していく必要もあります。内閣府によるガイドラインでは次のポイントに留意しながら、教育・訓練の実施計画を立案することを勧めています。

  • ・対象者が知識として既に知っていること(バックアップシステムの稼動方法、安否確認等)を実際に体験させることで、身体感覚で覚えさせること
  • ・手順化できない事項(経営者の判断が必要な事項、想定外への対応等)について、適切な判断・意思決定ができるようにする能力を鍛えること
  • ・BCPやマニュアルの検証(これらの弱点や問題点等の洗い出し)をすること
  • 内閣府「事業継続ガイドライン第三版」(平成25年8月)より

実際に、教育・訓練の実施計画を策定する際には、次のような流れで進めます。

  1. (1)平常時から実施しておくべき事項の検討
  2. (2)教育・訓練の実施体制の構築
  3. (3)予算とリソースの確保
  4. (4)スケジュールを含めた教育・訓練の具体的な実施計画の策定

教育・訓練の実施タイミングは定期的に行うためだけでなく、体制変更や人事異動、採用などにより要員に大幅な変更があったときにも必要です。同ガイドラインでは、教育・訓練の実施方法を下表のように紹介しています。

教育・訓練の実施方法の例

  概要 実施方法(例)
教育 1. 基礎知識の提供 ・事業継続の概念や必要性、想定する発生事象(インシデント)の概要など
・講義、eラーニング等による
2. 自社のBCMの周知 ・講義、ワークショップ、eラーニング等による
3. 最新動向の把握 ・専門文献や記事の購読
・外部セミナー、専門講座、ワークショップ等への参加等による
訓練 4. 代替要員の事前育成・確保 ・ クロストレーニング:欠勤者が出た場合にその重要業務の代替を可能とするため、他の重要業務の担当者とお互いに相手方の業務を訓練する
5. BCP、マニュアルの内容の理解促進 ・内容確認(ウォークスルー):BCPやマニュアルに基づき、役割分担、手順、代替先への移動、確保資源の確認等を机上訓練などにより行う
6. 手順書、マニュアルの習熟 ・反復訓練(ドリル):重要な動作等を繰り返して行うことで身に付ける実働訓練で、避難訓練、消防訓練、バックアップシステム稼動訓練、対策本部設営訓練などがある
7. 事業継続能力の確認・向上、及び意思決定のための訓練 以下のようなさまざまな訓練の要素を適宜組み合わせ、実効性の高い訓練を実施する
・災害模擬演習(モックディザスター):模擬的に緊急時を想定した状況下において判断・対応を体験する
・状況想定訓練(シミュレーション):緊急時に発生するさまざまな状況を想定し、実際に対応できる かを確認する
・役割演技法訓練(ロールプレイング):緊急時に状況が変化する中で、それぞれが各役割に応じた対応や意思決定を模擬的に行う

さらには、発展的な訓練として以下のような訓練がある
・総合演習(フルスケールエクササイズ):机上訓練と実働訓練を組み合わせ、模擬負傷者の救護・搬送、代替場所への移動、目標復旧時間内での業務再開など、対応力を確認する。限りなく現実に近い状況を想定し、実際に活用する環境等で実施する
・業界・市場をあげた連携訓練:同業他社や他業界、複数の取引先なども含めて行う

内閣府「事業継続ガイドライン第三版」(平成25年8月)より

どれだけよくできたBCPであっても、実行を伴わなければ、机上の空論となってしまいます。起こりうる災害やリスクは、自然災害にとどまらず、サイバーや人的な問題など、多種多様です。あらゆるリスクを想定し、認識し、対策をトレーニングしておくことは、BCP・BCMにおいてもっとも大切なことだといってもいいでしょう。

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