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コラム No.6-5

CREコラム

CRE戦略とは何か(5)環境問題への取り組みとCRE

更新日:2019/09/30
公開日:2016/04/27

不動産に対する環境意識が年々高まっており、環境問題への取り組みは、CRE(企業不動産)戦略を考えるうえで欠かすことのできないテーマとなっています。

企業が取り組む環境対策

国土交通省によると、二酸化炭素(CO2)排出量において、不動産分野(業務部門および住宅部門)が日本全体の二酸化炭素(CO2)排出量の約3分の1を占めていることもあり、CREの環境価値を高めていくことは、企業価値を高めていく重要な要素になっています。
一般的に環境対策は、企業においてはCSR(企業の社会的責任)の観点から実施されることが多いのですが、CRE戦略における環境問題への取り組みも、企業の重要な経営戦略のひとつとして捉えられることが増えているといえるでしょう。
具体的な環境対策の例としては、二酸化炭素(CO2)排出量の削減問題、耐震、アスベスト、土壌汚染等への対応、景観や環境問題への配慮、地域社会への貢献などが挙げられますが、中でも、二酸化炭素(CO2)排出量の削減は大きな課題といえます。
省エネ法(正式名は「エネルギーの使用の合理化に関する法律」1979年に制定)では、事業者は、事業全体(本社、工場、支店、営業所、店舗等)の1年間のエネルギー使用量(原油換算値)が合計して1,500kl以上であれば、そのエネルギー使用量を事業者単位で国に届け出て、特定事業者の指定を受ける必要があり、そして効率的かつ効果的なエネルギーの使用の合理化を図らなければならないことを定めています。
また東京都は、都内のCO2排出総量の削減を実現するため、2008(平成20)年7月、環境確保条例を改正し、「温室効果ガス排出総量削減義務と排出量取引制度」を導入しました。この制度は、EU等で導入が進むキャップ・アンド・トレードを我が国ではじめて実現したものであり、オフィスビル等をも対象とする世界初の都市型のキャップ・アンド・トレード制度となります。
そして、2014年5月、「第2期計画」として、2015年~2019年度の総量削減目標を、第I期(2010年~2014年)の5年平均6%から、5年平均15%(オフィスビル等17%、工場等15%)とする目標を掲げました。

環境対策と企業価値向上

企業がCRE(企業不動産)を活用するにあたって、環境負荷軽減となる環境対策を実施することは、環境配慮型企業として企業価値の向上につながります。
実際のCREにかかわる部分での環境対策としては、土壌汚染対策、アスベスト・PCB(ポリ塩化ビフェニール)等の有害物質対策、省エネルギー対策、グリーン設計、建物のLCM(ライフサイクルマネジメント)などがあります。
これらの環境対策は、法律や条例を守ること、土壌汚染対策、有害物質対策のような環境の悪化を防ぐ環境対策と、省エネルギーやグリーン設計のような環境保護に直接的に貢献する環境対策とに分けることができますが、実際には、CREを取り巻く環境面の法律や制度、条例などが変化しており、融合した形で進めることになるでしょう。
欧州では、環境面におけるCRE戦略が進んでいます。英国では二酸化炭素(CO2)排出量やエネルギー管理の効率性のレベルを評価するBREEAMという環境配慮型建物を推進するグリーンビルディング※の認証制度などがあり、不動産ファンドの投資基準として活用されています。
アメリカでは、LEEDという、米国グリーンビルディング協会が開発した、環境性能評価システムがあり、省エネと環境に配慮した建物・敷地利用を促進しています。 日本では、CASBEEのような建築物の環境性能評価基準、それらの認証制度が普及しはじめており、自治体によってはCASBEEのランクに応じてインセンティブを与えるなど、環境対策はより重要な要素となっています。
※グリーンビルディングとは環境配慮型建物のことで、地球環境への負荷をできるだけ少なく、使う人に優しく、設計、建築、運用などを進めていくこと。

国も推進するESG投資

2015年9月、国連総会で「SDGs」(持続可能な開発目標)が設定されました。日本もその目標達成に向けて、様々なアクションプランを策定していますが、企業においての取り組みも必要です。
そこで、企業のSDGsへの対応を推進するために、投資家は、企業活動が「E(Environment:環境)、S(Society:社会)、G(Governance:企業統治)」という課題に対して配慮しているかどうかを重視するべきだとの提言が出されました。
日本では、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が2010年にPRI(責任投資原則)に署名。日本企業は機関投資家から、ESGにもとづく情報の開示を求められるようになりました。これを「ESG投資」と呼びます。
国土交通省は、2017年12月に「健康性、快適性等に優れた不動産に係る認証制度のあり方について」の中間とりまとめを発表し、ESG投資の普及・促進のための認証制度を公表しました。

不動産における環境対策は、ビルオーナーに対する評価も高まり、そこで働く従業員の働き方にもかかわります。この取り組みは、関連する企業の価値向上に十分につながるものといえるでしょう。
また、不動産の環境性能を高めることは、収益性の向上だけでなく、将来的な環境に関する規制への対応や資産流動性の確保などにもつながります。
逆の言い方をすれば、環境の悪化を防ぐCREの環境対策の不備や放置、あるいは対応如何で、経営にとってリスクにつながってしまう側面も増えています。
不動産は公共的かつ外部的な性格をもつ資産です。地域社会への影響も大きく、企業の存在意義にも通じる部分です。企業のCSRの視点においても、環境対策に十分配慮したCRE戦略の策定が必要なのはいうまでもないことです。

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