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コラム No.46

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【イベントレポート】 2017 TRON Symposium 大和ハウスグループ・フレームワークスセッション「未来のロジスティクス」(1)

公開日:2018/01/31

2017年12月15日、東京ミッドタウンにおいて「TRONプロジェクトシンポジウム」が開催されました。
そのなかで、「未来のロジスティクス」と題し、坂村 健様(東洋大学情報連携学部学部長)をコーディネータとして、大和ハウスグループ・フレームワークスセッションが行われました。その主な内容をご紹介します。

講演(1)坂村 健様(INIAD<東洋大学情報連携学部>学部長)

「オープン化」が、イノベーションを起こす

このセッションは、未来の物流に焦点を絞ったセッションです。大和ハウス工業、フレームワークスとは共同で研究をしたり、さまざまなことにご協力いただいたりしています。
また、大和ハウスグループのフレームワークスとは、ここ2年にわたって物流に関する「オープンデータコンテスト」を一緒に行っています。いろいろな情報やデータをオープンにして、広く公開することによって、このデータでこんなことができるんだという、イノベーションを起こすきっかけとしたいと思っています。物流というどちらかというと閉鎖的であまりポピュラーではない分野に、イノベーションをどうやって起こすのか。そういったことにチャレンジしています。
これから登壇いただく方々は、それぞれの立場で様々なチャレンジをされている方々です。このセッションで、どういうチャレンジをしているのか、お話ししていきたいと思います。

「次世代ロジスティクス オープンデータ活用コンテスト」を開催

少しオープンデータコンテストのご紹介をします。先日、2016年に続いて、物流オープンデータ活用コンテストとして、「次世代ロジスティクス オープンデータ活用コンテスト」を開催しました。
フレームワークスから、物流、倉庫、人口統計などのデータをオープンデータとして公開し、これらのデータを使ってどのようなことができるのか、皆さんに考えていただきました。

今年のTRONショーでは、人工知能がテーマになっています。私はこの人工知能をいろいろな分野にどう適用していくかということに対して興味を持っています。TRONショー全体で人工知能を使うとどんなことができるのか、皆さんと一緒に考えたいと思っていますので、今年の「次世代ロジスティクス オープンデータ活用コンテスト」でもAIを前面に出して、AIをうまく使って流通革命を起こせるようなことがあると嬉しいというメッセージを送りました。その時にどんなメッセージを送ったのか、少しご紹介します。

(ビデオを見ながら)
1つは、ロボットが進化して、そろそろ輸送の現場でも利用できるようになってきました。数年前の段階で、すでにロボットが物を運んでいました。物を認識するのにQRコードを使って、ロボットが荷物を認識して運ぶわけです。今、ロボットを物流に使うことに関して、米国でも興味を持たれていて、このような研究がどんどん進んでいます。
AIにブレークスルーが起こってきたわけです。なぜこうしたことが起こってきたのか。1つは、ニューラルネット系のAIが実用になってきたということです。今までだめだと思われていた課題が解決されるようになった。ニューラルネットというのは神経回路網の真似なのですが、ずっと芽が出ませんでした。実用化できたのは、やはりハードウェアの進歩、そして重要な技術としてディープラーニングがあります。この研究は、元々1958年頃からパーセプトロンという名前でいろいろと研究されてきましたが、2012年に画像認識でニューラルネットを使った飛躍的な認識精度の向上という大きな成果が出ました。そしてその研究論文が出た後すぐ、たった5年で、想像もできなかったような使い方が生まれました。これは非常に重要なことです。
ここに貢献をしたのがGoogleです。Googleは、今年のTRONショーの直前に、TRONの重要性を理解してくれ特別協賛していただきました。実は今年、TRONリアルタイムOSが米国IEEEの世界標準になる検討が始まりました。そういうこともあり急遽特別協賛していただきました。
Googleはそれだけではなく、テンソルフローをはじめとして、AI関係のクラウドもAPIもみんなオープンにしました。AI関係のものは最先端ですから、普通、最先端のものは抱え込んでしまうことが多いものですが、すべてオープンにすると言われたのです。2017年はこういう最先端技術を自由に使える時代になってきたのです。

そうしたこともあり、オープンイノベーションがどんどん進むので、画像認識以外でも、どんどん利用が進んでいます。しかも機械の場合、並列学習をします。例えば「物の掴み方」を学習させるのに、大量のロボットアームがあればあるほど学習時間が短くなります。
とにかくオープンイノベーションであることです。物流業界は、あまりオープンにする必要のない分野でしたが、とにかく、多くの人の知恵をこの未来物流に投入する。それで、物流オープンデータコンテストをやろうということになりました。コンテストの狙いは、物流分野でのプログラムスキルにAIを入れるきっかけとして、さらには物流分野でのイノベーションの確立に向けたプログラミングコンテストをやろうということです。

物流の専門家がAIを普及させる

これは何度も言っているのですが、AIが普及する時代というのは、AIを使うということが非常に簡単になる時代です。そしてAIを生かせるのは、人工知能の専門家ではなく、その分野の専門家でないといけないということです。だから、物流で生かそうと思ったら、物流のことをわかっている人たちが考えないとだめなのです。人工知能の専門家が物流をどうしようと考えてもだめです。
今日いらっしゃる3人の方は、人工知能の研究者ではなく物流の専門家の人たちです。AIがどうやって扉を開けるのかとか、ボールをどう掴むのかということは、プログラムするのではなくて勝手にAIが考えます。ただ、そういうことを指示するには、やはりプログラムができないとできません。専門家が少し助ける必要がありますが、とにかく、AIの世界で起こっていることを物流業界の人にもお教えして、それで何か一緒に新しい次世代の物流を考えよう、というのが今年のテーマだったのです。

第1回目のコンテストでは、私はAIとは言っていませんでした。AIの利用がブレイクしたのは今年なんです。今年あたりからいろいろな試みが出るようになりました。研究者の間では1950年代からあって、しかも、ここ10年くらい、研究者はニューラルネットワークの研究をものすごくやっていました。研究者は知っていましたが、物流分野の方はAIの研究者ではありませんので、そういう方たちが知るようになったのは今年だと思います。
第1回目のコンテストはビジネス・研究・一般分野でした。公開するデータは、倉庫に関するデータ、倉庫の中のどこに棚があって、誰がどのくらい時間をかけて運んでいるか。それから物流に関するデータ、大和物流のトラックがどういうルートを通って、ブレーキを何回踏みながら、ハンドルをどのように切るか。デジタルタコグラフに集まったデータをすべて公開しました。人口統計に関するデータも公開しました。そうしたオープンデータを使ったコンテストを実施したのです。
優勝した作品を今でも覚えています。トラックドライバーが、休憩や昼食時にどこに停めることができるのかを教えてくれるアプリケーションでした。長距離トラックの運転手さんのなり手がどんどんいなくなっています。ベテランのドライバーだと8トントラックのような大きなトラックをどこに停めて休憩したらいいのかわかるのですが、ビギナーの人はどこに停めたらいいかわかりません。どこに停めたらいいのかわからず、青森から福岡まで休憩もできずに行ったら、事故やいろいろなことに繋がります。ちょっと用を足そう、昼食を取ろうと思ったら、停めるしかありません。優勝作品はどこに停めたらいいのか教えてくれるというもので、秋葉さんも評価していました。

今回の2回目のコンテストでは、私どものメッセージとして、最近のAIの利用に興味があるというメッセージを出していたので、優秀賞になった方は、HEMSデータから「人がいる・いない」を察知して、効率よく、無駄な配送をやめられるようなアプリケーションをつくった方が取られました。技術的に非常にチャレンジングな作品も多くありましたが、一方、コンテスト期間に制約がありアプリケーションを開発するのが難しかったようです。また、学習のためのデータ量に制約がありました。人工知能は大量のデータがないとなかなか学習しません。
こうしたことを踏まえまして、秋葉さんにバトンを渡したいと思います。よろしくお願いします。

講演(2) 秋葉 淳一(株式会社フレームワークス 代表取締役社長)

物流業界の「3K」を私たちが変えていく

大和ハウスグループというと、戸建て住宅や集合住宅、あるいは物流施設、工場などを建てています。最近は高速道路や道を走っていると、エンドレスハートのマークをよく見かけてもらえるかと思います。
大和ハウス工業は、建物をずっと建ててきていますが、建物を生かすということを考えたときに、今、世の中でも非常に重要視されている物流、ロジスティクスをきちんとやらないといけません。ロジスティクスは建物を繋ぐ血管、血液の流れを示すのと同じようなものです。

物流業界の「新3K」を改善する

ロジスティクスとは何か。1つは実際に物を運ぶという物理的な面があります。もう1つは情報を流すということです。この両方を合わせて、ロジスティクスになります。
今まで日本では、物と情報両方を動かすロジスティクスという考えではなく、物を運んでくれと言われたところからスタートするという、いわゆる「物流」の発想でした。そのため、データをきちんと活用するという話にはなかなかならなかったのが実態です。
人が足りないと言われていますし、この先も人が減っていくことだけははっきりしています。しかし、そのことに対してきちんとした手が打てているかというと、打てていません。これが物流業界の現実です。先ほど言ったように、指示された物を持って行けばいいという考えでしたから、データを活用する必要はほとんどありませんでした。
インターネットの通販、ECが普及する中で、ロジスティクスの重要度が見直されてきました。一方で、その事業体の改革はなかなか進んでいません。
「30年後に自動運転になっていると思いますか?」という質問をすると、物流業界の方々は皆さん「そうだね」と言います。30年後に自動運転になっているとすると、トラックドライバーは要らないわけです。トラックドライバーが要らないということは、今と同じような事業をやっている運送会社はないということです。今の運送会社は、どちらかというと、ドライバーという人をマネジメントすることが事業です。車をマネージしているわけではありません。
物流業界の状況ですが、結論を言えば、人が足りないということです。人が足りないだけではなく、今は新3Kと言われています。物流は「きつい」、物流は「給料が安い」、物流は「帰れない」。僕らがこれを改善していかなければいけません。労働環境が良くないと言われながら、物流、ロジスティクスの重要度はどんどん高まっているのです。

データをオープンにしてアイデアを集める

こうした状況を考えると、我々のような物流に関わるサービスを提供する会社は何をしなければいけないのか。単に事業のやり方を変えましょうと言うだけではなく、もっと世の中を巻き込んで、あるいは坂村先生のようなアカデミックな方々を巻き込んで、認識を改めていただくことが重要だと思いました。
そういうわけで、坂村先生と相談しながら、昨年からオープンデータコンテストを実施しています。賞金の500万円が重要なのではなく、データをオープンにしていろいろな人の意見をもらいましょう、というところが非常に大事なのです。

では、物流に関わっている人たちが何もしていないのかというと、そうではありません。一生懸命物流に取り組んで、今の物流業界を支えています。一生懸命物流に関して考えてきたからこそ、それ以外のアイデアが出てこなかったのです。そういった中でデータをオープンにし、物流に直接関わっていなかった人たちにも興味を持ってもらい、そういう人たちのアイデアを取り入れる。そんなことをやりたいと思います。
その一例が、昨年優秀賞を取った人の休憩場所の話です。データがあるのだからそんなことは簡単じゃないか。たしかにそうなのです。データさえあればすごく簡単なのですが、しかし、物流を一生懸命やっていた人たちからすると、重要なことはいかに速く届けるかなのです。たとえば、物流企業のマネジメントサイドからお金をいただいてシステムを開発するとき、最適ルートはどう出すか、積載効率を上げるためどうするか、というのが我々に対するオーダーです。ドライバーが足りないと言われていても、そのドライバーの労働環境を良くするようなアイデアを出すことは、まずありません。小さなことかもしれませんが、そういうアイデアが出たということに対して優秀賞にさせてもらいました。

継続が重要ですから、今年も行いました。来年以降も実施していきます。その中で、データの中身がもっと良いものになる。そして、世の中の人たちに重要度を認識してもらって、もっとたくさんの人に参加してもらう。今年は、学生が多く参加してくれました。学生が物流やロジスティクスに興味を持ってくれる。そして、また新しいアイデアが生まれてくる。これはものすごく嬉しいことです。

ロジスティクスを重視する先進企業

いくつかの会社の例を少しお話しします。まずユニクロです。かつてユニクロはSPA、製造小売企業として一世を風靡し、売上を伸ばしました。その後、何百億から何千億へと売上を伸ばしていく時期と重なるタイミングで、インターネット通販で物を売るということが世の中で起こり始めました。その頃は、本当にネットで物が売れるのか、特にアパレルのようにサイズが多いものに対応できるのか、という議論がありました。ユニクロでも通販事業は1店舗として扱っていて、通販店舗という呼び方をしていました。それで、いろいろなものを1店舗扱いにしていました。
当時、物流センターでは、基本的に店舗に発送する物流をやっていましたから、通販店舗は倉庫の片隅で、1個1個1人ひとりのために、「なんでこんな面倒なことをしなきゃいけないんだ」と言いながら梱包していました。それが今となっては、アパレル業界では、売上比率が約30%と言われるくらい伸びてきています。
現在、ユニクロは自ら物流に力を入れようと動き始めています。その中の1つのポイントとして、いろいろなニュースにも出ている有明センターがあります。有明のセンターの一番上の層にはオフィスがあり、あの建物の中にはいろいろなものが詰め込まれています。マーケティングの機能や仮想店舗、それに合わせて物流施設、そうした機能を有明に集約したのだと思います。

次にヨドバシカメラです。ヨドバシ.comが非常に人気ありますが、やはり自ら物流をやっています。それから日本の物流で外せないのはニトリです。つい最近、ロボットを導入したこともニュースになっていました。ニトリの場合は自らを製造物流小売企業と言っています。20年前はSPAで製造小売が一世を風靡しました。今は製造物流小売です。もはや物流を外せないことは明らかだと思います。

さらに世界に目を向けると、Amazonが4万5000台のロボットを導入しました。棚が搬送されるロボットです。リリースでは4万5000台と言われていますが、実際には8万台くらいが世界で動いていると言われています。Amazonで取り扱う商品の約6割が、この棚搬送のロボットで動いています。坂村先生のお話にもありましたが、8万台のロボットを使って動かすということは、それだけのデータがどんどん貯まっているということです。Amazonはロボットを使いながらデータをさらに貯めているので、ロボットがより賢く動くことが可能になります。それが1つです。
もう1つは、kiva systems社を買収して、自社製で8万台のロボットをつくっていますので、1台当たりのコストが非常に下がります。ということは、我々日本の小さい企業1社1社がAmazonとどう対抗しようなどと考えても、それは難しいと言わざるを得ないのではないでしょうか。

シェアリングモデルでサービスを提供

世の中ではこうしたことが起きています。もはや日本の1企業では太刀打ちできないのではないかと思っています。我々大和ハウスグループは、ロジスティクスの分野で、人工知能やロボットといったテクノロジーを使って事業変革のお手伝いをする、ダイワロジテックという会社をつくりました。この企業をベースに、協業しながら、データをきちんと集める、ロボットや人工知能を活用できるようにする、あるいはそれぞれの会社が投資をしなくても我々が資産を持って運用する。そんな仕組みづくりを少しずつ行っています。

実は、ロボットや人工知能といった仕組みに投資するのと、人海戦術の設備への投資の場合との違いがあります。人海戦術でやっている場合は、パートさんの労働時間をコントロールすることによって、物流の利幅を吸収しているのが実態です。物が多いときにはコストもかかるけれども、物が少ないときにはコストを少なくするということが、人海戦術では可能です。一方で、設備を投資するということは、ピーク時に耐えられるパフォーマンスの設備を導入しなければなりません。閑散期には、償却を含めて考えると、今までと同じような利益を出せないという構造に陥ってしまいます。それらを補うためにも、我々が設備を準備して、荷物を預けてもらったら、預けてもらって動かした分だけお金をくださいというモデルをつくっていこうとしています。

そのモデルを実現するためには、人工知能やロボットやデータを活用することをできないと、我々がリスクだけを負うことになってしまいます。そこをきちんとやるという意味でも、坂村先生にご協力をいただいています。
物理的には、流山に物流タウンというものをつくろうとしています。そのための準備段階として、来年3月から、市川のR&Dセンターで実際の物流事業を行います。その中で、いろいろな企業に入っていただいて、ロボット等を活用したシェアリングモデルというものを実験的に行います。ここで、きちんと収益が出せる構造、お客様にとってもメリットがあって我々の事業体としても収益が出せる構造をつくって、物流タウン流山を中心としたかたちで全国に展開していこうとしています。
この物流施設に関しては、この後、浦川常務にたくさんの物流情報をお話しいただけると思います。私の話はここで終わりたいとお思います。どうもありがとうございました。

2017 TRON Symposium 大和ハウスグループ・フレームワークスセッション

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