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コラム No.19-2

PREコラム

「中心市街地活性化法」に向けた取り組み(後編)

公開日:2016/11/18

総務省は、平成28年7月に「地域活性化に関する行政評価・監視」として、地域活性化施策の実施状況、国の支援施策の活用状況、効果の発現状況等を調査し、結果を発表しました。
これは、地方都市における地域活性化3計画と呼ばれる「地域再生計画」(平成17年4月施行、計画認定:1,989件)「都市再生整備計画」(平成14年4月施行、計画作成:2,709件)「中心市街地活性化基本計画」(平成10年7月施行、計画認定:197件)の実施状況を、平成18年度から20年度までに地方都市が作成した291計画を抽出調査し、まとめたものです。

同資料によれば、実際に実施された事業は、6,173事業あり、そのうち国の支援施策を活用した事業が4,569事業ありました。
しかし、当初目標として掲げられた指標の達成状況を調査した結果、「地域再生計画と都市再生整備計画は一定の効果が発現したと見ることはできるものの、中心市街地活性化基本計画は所期の効果が発現しているとみることは困難である」と結論づけています。
実際、下記のグラフを見ても明らかなように、事業の全指標が目標達成度7割以上の事業は0件となっています。

291計画の指標の目標達成状況

出典:地域活性化に関する行政評価・監視(総務省)

また、平成25年3月に経済産業省(商務流通保安グループ)から公表された「中心市街地活性化に向けた取組状況」には、平成18年に改正・施行された「改正中心市街地活性化法」の取組状況が報告されています。
同報告書によると、「改正中心市街地活性化法」に基づき認定を受けた基本計画を策定した都市の数は、改正前の法律に基づき基本計画を策定した都市の数と比較すると2割弱に減少していたようです。また、人口規模別の構成比では、10万人未満の小規模な都市の割合が大きく減少し、改正法に基づく認定を受けた都市は、中規模以上の都市が中心でした。

中心市街地活性化基本計画の策定・認定の状況

出典:経済産業省「中心市街地活性化に向けた取組状況」(平成25年3月)

基本計画の認定が減少した理由として、同報告書では次のような理由を挙げています。

  • ・5年間という計画期間が短い。
  • ・市街地の整備改善、都市福利施設の整備、居住環境の向上、商業の活性化等の幅広い取組を相当の熟度を持って基本計画に記載するのは困難。
  • ・認定基準の以外の要因としては、「中心市街地活性化のための支援策以外の支援策で対応可能」や「関係者との調整の困難さ」がある。

つまり、基本計画の認定を受けるには計画の実施期間が短く、各省庁にまたがる総合的な取り組みが必要であるため、その実態を把握して計画を立案することが困難であるということのようです。

中心市街地活性化法とは

そもそも「改正中心市街地活性化法」とは、どのような法律なのでしょうか。
かつて、大規模小売店舗が出店するにあたって、「大規模小売店舗における小売業の事業活動の調整に関する法律」(大店法)に基づき、地元中小小売業者との商業調整が行われてきましたが、国内外の環境の変化に応じて平成12年に大店法は廃止されました。
その後、「大規模小売店舗立地法」「中心市街地における市街地の整備改善と商業等の活性化の一体的推進に関する法律(旧中心市街地活性化法)」「改正都市計画法」という、いわゆる「まちづくり3法」が制定され、従来の商業調整にかわる新たな枠組みへと転換しました。このうち、旧中心市街地活性化法は平成18年に改正され、その後平成26年にも改正され「改正中心市街地活性化法」として今日に至っています。

国交省からの「中心市街地活性化ハンドブック」によれば、平成18年に改正された「中心市街地活性化法」は、人口減少・超高齢社会の到来を迎える中で、高齢者をはじめ多くの人々にとって暮らしやすい街となるよう、様々な機能がコンパクトに集積した、歩いて暮らせるまちづくりの実現を目的とされていました。
それまでの、いわゆる旧中心市街地活性化法は、商業振興策が中心であり、街なか居住の推進や、図書館、病院等の都市機能の集積促進などが目的だったため、中心市街地を「生活空間」として再生する措置が少なく、また、市町村が策定した基本計画の内容を評価し、意欲的な取組みを国が集中的に支援する仕組みとなっていませんでした。

中心市街地活性化事例

何もしなければ中心市街地は空洞化しますが、積極的に中心市街地活性化に取り組んでいる自治体ほど成果を上げていることも事実です。平成26年8月に発表された「中心市街地活性化法関係法令の改正及び支援策の概要について」(経済産業省)では、平成18年の「改正中心市街地活性化法」施行後の実施状況を紹介しています。
たとえば、静岡県藤枝市では、民間投資の喚起を通じた中心市街地の活性化として次のような取り組みを行っています。

  • ・事業内容:広域交通ネットワークの充実が進むJR藤枝駅南口に隣接する立地特性を生かし、第2期藤枝市中心市街地活性化基本計画における駅南エリアの「活動・交流拠点」づくりの中心的事業として「広域観光・交流の拠点」を形成するため、国際観光ホテルを中心にバンケット、結婚式場、商業施設等が入居する複合施設を整備。
  • ・年間来訪者数:中心市街地居住人口(9,732人)の68.5倍(実施1年後667,063人)。
  • ・周辺地域への波及効果:多機能型国際観光ホテルの立地により、広域観光やビジネスアッパー、外国人客に対応できるグレードとサービス、そして一体的な藤枝市による広域交通ネットワークの充実と、国内外の都市間交流の促進、強力なシティプロモーション活動により、国内外から観光・交流人口の誘導が見込まれる。また、藤枝商圏である志太榛原地域(5市2町)において初出店となる百貨店「伊勢丹」を中心に、高度な商業機能・サービスを提供できることや、近隣施設の時間消費型広域商業機能との一体化により、広域からの来訪人口拡大が見込まれる。

藤枝市では「広域観光・交流の拠点」を形成するために、国際観光ホテルを中心にバンケット、結婚式場、商業施設等が入居する複合施設を整備することで、年間来訪者数が増加し近隣施設にも広域からの来訪人口拡大が見込まれ、地域の活性化に貢献していることがわかります。
この藤枝市の事例からわかるように、地元のニーズにあった施策を行えば中心市街地の活性化につながりますが、残念ながらその数は多くないのが実態です。
だからこそ国土交通省は、平成28年に「中心市街地活性化ハンドブック」を公表し、「改正中心市街地活性化法」のさらなる活用支援を行っています。
同ハンドブックによれば、認定と連携した支援措置として、市街地の整備改善、都市福利施設の整備、街なか居住の推進、商店街・まちなかインバウンド促進支援事業費補助金、中心市街地における低利融資をはじめとした経済活力の向上支援など、さまざまな支援策を打ち出しています。
ほかにも、さまざまな情報交流によって民間主体による中心市街地の再生とコンパクトなまちづくりを促進することを目的とした「全国中心市街地活性化まちづくり連絡会議」を設立し、平成28年4月現在で、54の団体が参画しています。ここでは、中心市街地活性化や都市再生に係る情報共有、ノウハウの蓄積のために、年2回の勉強会を開催し、まちづくり会社が行っている事業の手法や工夫等の紹介を行っています。直近では平成28年6月29日、30日に東京都において開催されました。

このような支援策を地域固有の問題に照らし合わせて吟味し、効果的に活用することで、地域の活性化、再生を図ることは、あらゆる自治体において喫緊の課題といえるでしょう。

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