対談 【第1回】サステナビリティを考える
目の前のお客様を喜ばせるために、将来の子供たちを困らせてはいけない(枝廣)
枝廣 大和ハウスさんが家を建てれば建てるほど、工事をすればするほど、地球上のCO2が減る――そんな風になれば良いですね。農業もやっていらっしゃるし、大きな可能性があると思います。
これまでの企業の取り組みは、「いかにマイナスを減らすか」が中心でした。CO2削減もそうです。それも大事だけれど、それだと少しずつしか変わらないので、「プラス」を創り出すこと。事業をやればやるほどプラスになる。そういう企業がこれから社会に求められ、成長していくと思います。
樋口 例えばどんな事業がありますか。
枝廣 「もっと頑張って節電しよう」という根性論だけではなくて、人の快適さとか幸せを損なわないで、例えば大和ハウスの家に住むと、もしくは、こういうものを使うと苦労しないで環境負荷が減らせるとか、そういうことがこれから必要になってくるでしょう。
先ほどのサステナビリティの話で、「お客様に喜ばれるものを出す」というのは商売の基本だと思うし、すごく大事なことだと思います。でも、地球環境問題がなかった時代と今とで大きく違うのは、そこに「時間軸」という要素が入ってくることです。
「目の前のお客様」に喜んでもらうのが商売だと思いますが、「目の前のお客様を喜ばせるために、将来の子供たちを困らせてはいけない」ということも考えて頂きたいのです。その意味で、樋口会長の書かれた『凡事を極める』を読んで、大事にされている経営の心得に納得しました。
『「凡事を極める」-私の履歴書-』(出版:株式会社日本経済新聞出版社)
樋口 事業に取り組む際の、6つの判断基準のことですね。
枝廣 これがまさにサステナビリティなんですよ。6番目の「将来にわたって良いこと」には、時間軸の視点が入っています。消費者・生活者として買物をする時に「これが食べたいワ。これが着たいワ」だけではなく、いま「これを買うことが将来にもいいことか。少なくとも迷惑をかけないことか」。それを考えれば、少し値段が高くてもフェアトレードの物を買おうとか、ちょっと不便かもしれないけど買うのを止めようとか、そういう判断ができることがサステナビリティにつながるのだと思います。