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東南アジア向け省施工技術の開発(Web限定コンテンツ)

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東南アジア向け省施工技術の開発

中川 学/工業化建築技術センター

中川 学の写真

海外だからこその経験や出会いが、自分を大きく成長させてくれた

ミッションは、海外向けの省施工技術の構築

多くの日系企業が進出するインドネシアでは、工業団地の開発が加速中。物流倉庫等の建設ニーズが高まる一方、在来工法による施工期間の長さや、品質上の課題も浮き彫りとなっていた。そんな中、床省力化工法の開発を任されたのが中川だった。

用いた手法は、現場内でコンクリート構造部材“トラス鉄筋付きハーフPCa板”を製造し、躯体工事の省施工化を図るものだ。
通常の在来工法では屋根スラブや床スラブを建設する場合、必ず木製合板等で型枠を架設し、コンクリートの硬化まで支保工で支える必要がある。一方、今回用いたハーフPCa(プレキャスト)合成スラブ工法は、木製型枠の代わりに工場や現場で生産された床厚の下半分の厚みのコンクリートPCa板を配置し、現地で残りの上半分のコンクリートを打設し床全体を一体化する。この工法は、型枠工事の削減やPCa板の中央部分を支える支保工を無くすことで躯体工事の省施工化に繋がり、さらにあらかじめ別の場所で部材を生産することで品質向上にもつながるため、日本では一般的な工法として知られている。

しかし、中川らは、「ただ同じ技術を持ち込むだけでは面白くない」と考えた。そこで彼らが試みたのは、あらかじめ“ムクリ”をつけたトラス鉄筋を矯正した状態でコンクリートを打設し、その後矯正を解くことで簡易的にコンクリート部分に圧縮力を加え、曲げ性能を向上させる手法だった。

PCa(プレキャストコンクリート)製造前の打ち合わせ風景。
共同開発先やサブコンの担当者、現場リーダーらを交え、製造工程の確認を行う。

1.ムクリ矯正前 2.ムクリ矯正(コンクリート打設) 3.脱型後 曲げ性能を向上させるため、トラス鉄筋にムクリをつけ、コンクリート部分に圧縮力(プレストレス)を加える手法を用いた。

輸入規制や材料品質の違いなど、苦労の連続

中川は現地での建設にあたり、風土や文化が異なるインドネシアでいかに日本と同等の製品精度を確保するか頭を悩ませていた。しかし、そうした悩みの中で、最も苦戦を強いられたのは、インドネシアの輸入規制への対応だったという。

床省力化工法に用いるトラス鉄筋は、現地ではつくることができないため、日本メーカーから取り寄せる必要があった。しかしながら、思いのほか輸入は難航する。

「インドネシアは自国の産業を守るため、特に鉄に関しては厳しい輸入規制が敷かれているのです。法律も頻繁に変わるため、輸入の許可がなかなかおりなくて…。日本からインドネシアへの輸送を担当していただいた物流会社や、現地での輸入手続きの対応をしてくださった商社の方に協力をいただき、結局日本から持ち込むことができたのは1年後でした」。

日本から輸入したトラス鉄筋を型枠にセット。現地スタッフや職人らと作業内容について綿密に打ち合わせる。

そして、ようやく持ち込んだトラス鉄筋と、現地のコンクリートを用いて、ハーフPCa板を現地で製造し、実際の建物に建込むことができた。
現地でも不慣れな工法、品質管理の認識の違いから様々なトラブルが発生したが、そのたびに現地スタッフや現地建設会社に協力してもらいながら解決していった。
現地の限られた素材と手段で、どう作業効率を高め、コストにも配慮した製造方法を編み出していくか、それを考え抜くのもまた、中川の大きな役割だった。協力会社や現地の職人らと解決策を見出していく中で、経験値はどんどん上がっていった。

コンクリートを流し込む前の検査風景。トラス鉄筋の位置や、下端鉄筋の位置をチェックし、許容差内に収まっているか確認。日本と同等のレベルの許容差を設定している。

インドネシアの職人たちとの絆が、大きな宝物に

開発着手から2年半。あとは現地導入を待つ段階だ。「国内では体験できないトラブルが、自分を大きく成長させてくれました」と中川は振り返る。

英語でのコミュニケーションもままならない中で命じられた、海外プロジェクトへの参加。指名された当初は不安もあったというが、ワクワクする気持ちも大きかった。
そしていざ現地へ赴くと、英語が通じない職人も多く、そういう時はジェスチャーを交えて打ち合わせを進めていった。最初は、基準となる品質レベルの違いや、時間を守ることへの意識の差に戸惑いを感じることもあった。しかし、精一杯コミュニケーションをとることで、求めているものを実施してもらい、何とか完成することができた。

一度の滞在期間は1~2週間。全体でも1か月と短いが、日ごとに現地の仲間との交流は深まり、帰国時には寂しそうに別れを惜しんでくれるまでになった。
「仲良くなってくると、インドネシアに行く度に現場で声を掛けてくれるんです。中でもインドネシアで有名な『心の友』という日本の歌を教えてもらったことが印象に残っています。いつも歓迎してくれる気持ちが、とても嬉しかったですね」。
仕事を通して築かれた現地の人々との絆は、中川にとって何よりの大きな宝となった。

現地スタッフとの集合写真。中央が中川。左に立つクレーンのオペレーターの男性が、インドネシアで有名な日本の歌を教えてくれた。PCa板の製造後に現地に赴いた際も、いつも声をかけてくれるという。

中川 学(なかがわ まなぶ) 工業化建築技術センター

工学部建築学科出身/2009年入社/海外向けや、大型建築向けの要素技術開発、木ー鋼のハイブリット構造技術の開発を担う。

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