総技研で注目の研究員を紹介する当コラム。第1回は、鋼構造のオーソリティであり、67歳の現在も後進への技術指導を任される古海賢二です。研究員が常にその背中を追う存在、技監の肩書きを持つ鉄骨構造のレジェンドに迫ります。
鉄骨構造のレジェンド
古海 賢二(ふるみ けんじ)
2017年、技術系スペシャリストの最高峰「技監」に認定(社内認定制度)。定年後も週4日のペースで後進の指導にあたり、1日は大学で教鞭を執る。元大阪府溶接技術協会副会長。著書に、日本建築学会「鋼管トラス構造設計施工指針・同解説(2002)」がある。
「負けるものか」の思いで、研究に没頭した日々。
私が65歳で二度目の定年を迎えた時、セカンドライフを趣味などにあてることも考えましたが、やはり研究という仕事からは離れられず、結局総技研に戻ってきました。そして今も、若い研究者たちとともに、工法開発に取り組んでいます。
これまでの研究人生の中で最も印象深いのが、40歳代で開発した鉄骨構造システム「DSQフレーム」です。鉄骨の在来工法は、柱を切断してダイヤフラムを挟み再び溶接して1本の柱にするもの。加工工数や溶接量が多くなり、加えて阪神大震災では溶接部の破断も見られたので、安全面での改良が求められていました。そこで梁と柱の接合部を部分的に増厚して強度を確保し、ワンサイドボルトで柱と梁を緊結する接合構造を編み出したのです。
在来工法と比べ大幅にフレーム強度を向上した「DSQフレーム」は、さまざまな技術賞を受賞。7年の開発期間を要した。
この時、数年かけて開発したワンサイドボルトは、鋼管の片側からだけで梁を緊結できる特殊高力ボルトで、現在も高速道路橋の補修工事や建築の耐震改修工事に利用されている。
高周波電流で加熱し油圧ジャッキで膨らませてつくり上げる増厚鋼管は、適正な粘り強さを引き出すまで、とても苦戦しました。しかし、そこで役立ったのが、入社後間もなく学んだ溶接工学でした。実は当時は「建築学科を出たのに溶接に転向か…」と愚痴っていたのです。今思えば、その時推挙してくれた上司には心から感謝しています。未知なる研究に挑む皆さんも、ぜひ専門外のテーマにも目を向け、世界を広げてください。
「他社に負けてたまるか」と寝食を忘れて研究に没頭したあの頃。大変でしたが、とても楽しかった、という一言に尽きます。
【主な開発実績】
- 鋼管コンクリート圧入工法開発
- 立体トラスシステム開発
- 無溶接構法開発(H形鋼柱梁)
- 角形鋼管構造システム開発(DSQ構法)
- 免震住宅開発
- H形鋼梁の横座屈補剛省略工法開発
- 中国向け工業化住宅工法開発
【受賞歴】
- DSQフレーム/建設技術開発賞優秀賞(2000年)
- DSQフレーム/日本鋼構造協会業績賞(2001年)
- 石橋信夫賞・特別賞〈社内表彰〉(2012年)
大和ハウス工業
総合技術研究所
DAIWA HOUSE INDUSTRY
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