良い眠りは、ある日突然訪れるものではありません。
睡眠の質は毎日の生活と密接に関わり、良し悪しが決まります。
忙しい日々を快眠につなげる過ごし方の工夫について、西川リビング株式会社・睡眠環境科学研究所の藤田貢さんにアドバイスをいただきました。
良質な睡眠のためには、規則正しい生活を送るに限ります。一度根付いた生活習慣は変えづらいものですが、少しずつ意識して変えてみませんか。ここでは、睡眠と生活リズムの関係について知っておきたいポイントをご紹介します。
夜ぐっすり眠るために大切なのは、日中に満足感を得ること。例えば、家事や仕事などで得られる達成感・充実感は「心の満足」につながり、適度な運動による程よい疲れは「体の満足」につながります。ただ、疲労がたまりすぎると睡眠の質が落ちてしまうので、激しすぎる運動はおすすめしません。運動不足だと感じている方は、少し多めに歩く、ジョギングするなど、自分の体力に合った運動をしましょう。
日中の満足感を得られた状態で眠ると良い睡眠になり、次の日も活発に動くことができて満足感を得やすくなります。このような好循環を作れるよう、毎日を楽しく過ごす工夫をしてみましょう。
平日に睡眠時間が短くなる分、どうしても休日に長く眠ってしまう…。そんな経験はありませんか。時間に余裕のある日に限り長時間眠ることで日々の睡眠不足を補っている場合、「睡眠負債」がたまっているのかもしれません。
「睡眠負債」とは、睡眠不足による心身への負担を借金に例えた言葉。睡眠不足が続くと、体の健康だけでなく、脳の働きにも悪影響が及ぶため、日々の生活での思わぬ失敗や事故につながりかねません。「負債」とはゾッとするような表現ですが、睡眠不足の怖さを的確に示しています。
睡眠不足が続くと長時間眠ってしまうのは、“借金を返す”ため。睡眠不足を補うことはできても、睡眠の“貯金をする”こと、いわゆる「寝だめ」はできないと言われています。そのため、良い睡眠をとって元気に過ごすには、毎日なるべく一定の睡眠時間を確保することが大切なのです。
人には本来、およそ24時間周期の体内時計が備わっていますが、生活の中で少しずつずれていくことがあります。
これを時差ボケに例えた「ソーシャルジェットラグ(社会的時差)」という言葉が、最近注目されています。生活リズムは人それぞれで、生まれ持った気質のようにも思えますが、実は周りの環境から大きな影響を受けているのです。
「自分は朝型」、もしくは「夜型」だと感じている人も、意識をすれば生活リズムを変えることができます。
布団に入ってから目がさえて眠れない、という方におすすめなのが、日中の体温調整。グラフのように、体の内部の体温(深部体温)は朝から夕方にかけて上がり、夕方から夜にかけて下がっていきます。
深部体温が下がるにつれて眠気が増すので、体温の下がり幅を大きくすることで、より眠りやすくなります。就寝の2時間前までに、軽い運動やストレッチなどをして体温を上げましょう。
入浴時、ぬるめのお湯にゆっくり浸かるのも効果的です。
一般的な睡眠時間の目安は7時間前後ですが、10歳頃までの子どもには本来、1日10時間ほどの睡眠が必要です。
しかし、塾や習い事などに通っている場合、十分な睡眠時間がとれないのが現状。また、日中の生活に満足できていない子どもがゲームなどで夜更かしをするケースも増えています。学校でよく勉強し、体を動かしてよく遊ぶことは、心と体の満足を得て良い眠りにつながるという意味でも大切なことなのです。
子どもの健やかな成長を睡眠から考えてみませんか。
西川リビング株式会社 睡眠環境科学研究所 藤田 貢さん
品質保証部・品質管理室次長。同社の営業部門を経て、現在は社内研究機関「睡眠環境科学研究所」に所属。寝具の性能・機能の評価や、人の眠りと寝具の関係についての研究を行う。
西川リビング株式会社は1566(永禄9)年に創業。
高機能寝具のほか、インテリアや生活用品など快適な暮らしに関わる商品を開発・提案している。
2017年1月現在の情報となります。