夏の太陽と風を受け、
島旅気分を味わいながら向かったのは、
島の中央部、淡路市にあるAwabi ware
(あわびウェア)。
「受け継ぐうつわ」を
コンセプトに、丁寧に、丹念に、
うつわづくりを行っている工房です。
日用の美しいうつわを
つくり続ける理由を伺いました。
2023.08
のどかな環境が育む
日々の食卓のためのうつわ
明石海峡大橋を渡って、淡路島へ。新しいさまざまな施設やお店が登場し、島は近年、人気の旅スポットに。
田畑が広がるエリアに建つ、緑に包まれたショップ&ギャラリー。懐かしい雰囲気に誘われる。
工房主の岡本純一さん。家族で淡路島に移り、うつわづくりを始め、2012年にAwabi wareを開いた。
畑の横をのびる、緩やかな坂を下りてたどり着くショップ&ギャラリーは、もともと村の診療所だった築80年ほどの建物を修復したそう。工房主の岡本純一さんは2010年、東京から故郷の淡路島に移住。もともと民藝に強く惹かれ、全国の工房を巡ったという岡本さん。自らもうつわをつくるようになり、2年後に、工房を開きました。
「僕がめざすのは、温かい、ほっとするようなうつわ。それは、自然とつながる感覚があるから。うつわは人工的なものと自然のものをつなぐ、いわば媒体のようなもの。人と親和性の高いうつわを、人は美しいと感じられるのだと思います」と岡本さん。鳥や虫の声が響き、緑に囲まれた自然豊かな環境は、そんなうつわづくりを後押ししているように感じられます。
長く使える、
愛着の持てるうつわを見つけるには
店内には人気の大きなオーバル皿から豆皿まで、さまざまなうつわが整然と並べられています。淡路島の海を写したような色鮮やかなブルーに目を奪われ、新作だというマットなパープルのお皿を見れば何をのせようかと想像してしまいます。
「うつわはぜひ、臆することなく、手に取ってみてください」。とりわけマットなタイプのうつわは、手にするとしっとりとした質感が伝わります。「手触りや口当たりといった感触は大事。使いやすさも選ぶ理由になると思いますが、うつわは、愛着を持てるかどうか、で選ぶといいと思います」
店内は木の床に古いガラス窓から日が差し、ゆったりとした時間が流れる空間。色分けされたうつわが整然と並ぶ。
新作のコーナー。どんぶりは2サイズ。「大きい方は普段の麺類や丼に。ひと回り小さくて浅い方はインスタントラーメンにぴったりなんですよ(笑)」
グレーのうつわのコーナー。マットな質感が手にすっとなじむ。
受け継ぐうつわをつくる思いとは
民藝への造詣を深め、日常の道具であること、安価であること、無銘性といった民藝のあり方を守ってうつわをつくり続けているという岡本さん。「僕の名前が立ったいわゆる作家ものではなくて、日用のうつわでありたいと思っています。どこかの時代の温かい食卓に、うちのうつわが使われていたら、とても素敵なことだなと」。食卓になじみ、日々の使用に耐え、気づけばそこにある存在が理想、とも。誰かのどこかの食卓で活躍するために…。棚の上では、たくさんのうつわたちが出番を待っています。
店内では、岡本さんが集めた民藝の道具も一緒に飾られている。
隣接する工房にお邪魔しました
手狭になったことから新設した工房。釉薬をかけ焼成までを手掛ける。スタッフが黙々と手を動かす姿も。
今回、特別に見せていただいた新しい工房には、素焼きのうつわがずらり。一つひとつ釉薬をかけ、窯入れして焼成します。うつわづくりは、まず、岡本さんの手で原型となる形を、ろくろを挽くなどしてつくることから始まります。「それを型屋さんに型取りしてもらい、生地師さんが形をつくります。乾燥したら窯たき屋さんが800℃で焼成し素焼きにします。そうした職人さんは瀬戸や波佐見におられ現地で制作してもらうので、ここへ運ぶ人も含めて、Awabi wareのうつわづくりなんです」。完全な分業体制も民藝の姿勢の一つといえるもの。こうして暮らしに溶け込む美しいうつわが、今日も淡路島で生まれ続けています。
※工房の一般公開はしていません。
素焼きのうつわが並ぶ
棚。工房内は整理整頓が
なされ
清々しい空気が漂
う。
焼成は仕上がりが安定
し、価格も抑えられること
から
電気窯8機を採用。窯
ごとのクセを把握して調
整する。
素焼きのうつわに釉薬を
かける岡本さん。ムラなく
均
一にかける、流れるよう
な職人仕事。
一日の食卓をイメージしながら…
色も形もサイズも豊富なAwabi wareのうつわは、料理を盛ってこそ、美しく見えるもの。そこで、朝昼晩の食卓をコーディネートしてみました。
パパはブルー、ママはイエロー、私はパープル…と、家族それぞれカラーを決めても、その日の気分で組み合わせを変えても楽しい! 優しい色のハーモニーの食卓で、爽やかに1日を始められそう。
オーバル皿(M)各4,950円、二彩あわびマグ(M)各3,960円。
ピビンパ丼はカラフルなどんぶりで。2タイプあるうちの、お昼ごはんにちょうどいい、やや小ぶりなタイプ。おかずの盛り鉢としても使え、「わが家でもいつの間にか出番が多くなっている(笑)」と岡本さん。
手前から、れんげ(黄南京)2,640円、四角豆豆皿(黄南京)1,540円、どんぶり(トルコ青)5,720円、どんぶり(青磁)4,950円、れんげ(黒)2,420円、四角豆豆皿(黒)1,430円。
晩酌タイムは明石海峡のタコとキリッと冷えたお酒で小粋な食卓に。写真の長方皿は周りのリムが料理を引き立ててくれる。いつものお総菜も、ねじり小鉢に品よく盛り込んで。
右から、隅切リム長方皿(白)4,400円、ねじり小鉢(黄南京)2,970円、四角豆豆皿(白)1,430円。
美しい色とのびやかな形は、料理を盛るとさらにイキイキとするよう。うつわ選びで毎日の食卓を楽しく工夫してみませんか。
Awabi ware ショップ&ギャラリー
兵庫県淡路市大町上507-1あわびウェア工房
tel. 0799-70-6719
営業時間/10:00~17:00 年末年始休み
※ごくまれにお休みの日があるのでウェブサイトやSNSでご確認ください。
※各地の展示会にも出展。開催予定をウェブサイトやSNSでお知らせしています。awabiware.net
※表示価格は消費税込み 2023年8月現在。詳しくはAwabi wareのウェブサイトをご確認ください。
暮らしにいいものを探して