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海外投資家からの日本不動産への評価調査を公表国土交通省「平成30年度海外投資家アンケート調査業務」より
公開日:2019/11/20
海外投資家から日本の不動産への投資が増加する中、日本の不動産に対する評価はどのように変化しているのでしょうか。 国土交通省が行った、「平成30年度海外投資家アンケート調査業務報告書」から、海外投資家の日本の不動産への意識、評価を紹介します。
- 調査対象
・米国・EMEA(欧州、 中東、 アフリカ)
・APAC(アジアパシフィック)に拠点を置く海外投資家
・日本に拠点を置く海外投資家 - アンケート調査期間
・2019年1月21日~2019年2月28日
日本の不動産への投資状況
まず、図1で日本の不動産への投資の状況を見てみると、海外投資家の日本での不動産投資が増加していることがうかがえます。
「投資実績あり(現在も投資継続中)」の割合は、2009年度調査では33.7%、2010年度で44.3%、2012年度59.2%、2013年度53.1%、2016年度71.4%でしたが、2018年度は76.5%となっています。2013年を除けば、年を追うごとに、「日本に不動産投資を行っている」とする投資家が増加しています。
図1:日本の不動産への投資状況
国土交通省土地・建設産業局「平成30 年度海外投資家アンケート調査業務報告書(2019 年3月)」より作成
日本の不動産に対する評価
日本の不動産市場に対しても、高い評価となっています。
「不動産市場の規模」については、76.3%の投資家が「優れている」としており、「不動産市場の安定性」についても54.1%、「不動産市場の流動性」については48.6%、「不動産市場規模の拡大性」については29.7%の投資家が、「優れている」と評価しています。
ただし、「不動産市場に関わる法制度、契約形態、慣習、統計データ等に関する情報発信の充実度」においては「優れている」は17.1%。「不動産市場における平均的な利回り」においては「優れている」は16.2%で、「やや優れている」と合わせても43.2%です。「劣っている」と「やや劣っている」を合わせた数値(37.8%)と拮抗した数値となっており、市場の成熟性を表していると思われます。
図2:日本の不動産市場に対する現状評価
国土交通省土地・建設産業局「平成30 年度海外投資家アンケート調査業務報告書(2019 年3月)」より作成
この日本の不動産市場に対する評価と、海外投資家が元々持っている、「投資地域の選択に際して重視する項目」を比較するとどうなるのでしょうか。
次ページの図3は、日本の不動産市場に対する現状評価の各項目についてDIを算出し、「投資地域の選択に際して重視する項目DI」と比較した図です。この図を見ると、「不動産市場の規模」では日本の不動産市場の評価DIが4.4ポイント上回っており、日本の不動産市場の大きさを評価しているといえます。
ただし、それ以外の項目については、投資地域の選択に際して重視する項目DIの方が上回っています。特に、「不動産市場における平均的な利回り」、「不動産市場に関わる法制度、契約形態、慣習、統計データ等に関する情報発信の充実度」、「不動産投資判断に関わる個別情報の入手容易性2)その他不動産市場」については、マイナスにはなっていないものの、DI格差が大きく表れており、日本の不動産市場の課題が表れているといえるでしょう。
図3:投資地域の選択に際して重視する項目と日本の不動産市場に対する現状評価のDI比較
DI={(「優れている」の割合+「やや優れている」の割合×0.5)-
(「やや劣っている」の割合×0.5)+「劣っている」の割合}×10
国土交通省土地・建設産業局「平成30 年度海外投資家アンケート調査業務報告書(2019 年3月)」より作成
他の地域との評価比較
このような評価は、他国地域と比較するとどのような評価なのでしょうか。他の地域の評価と比較したDI(左ページ図4)を見てみると、各地域との評価の違いがよくわかります。
「不動産市場の規模」、「不動産市場の安定性」はアジア新興国と比較すると優位であるとの評価が高く、また、日本と同様に先進国である米国・欧州と比較しても同等もしくはやや優位との評価がなされています。同時に、この「安定性」への評価は、「利回り」の評価の低さとなっているともいえます。
ただし、「情報発信の充実度」、「個別情報の入手容易性」については、低い評価となっており、今後、安定した不動産投資を得ていくためには、課題のひとつだといえるでしょう。
図4:日本の評価と他の地域と日本の不動産市場の優劣評価(DI)
DI={(「優れている」の割合+「やや優れている」の割合×0.5)-
(「やや劣っている」の割合×0.5)+「劣っている」の割合}×10
国土交通省土地・建設産業局「平成30 年度海外投資家アンケート調査業務報告書(2019 年3月)」より作成
日本における主要な不動産投資用途
不動産投資における用途を見てみると、2018年の数値は「オフィス」が89.7%と最も多く、次いで、「レジデンス」(76.9%)、「物流施設」(61.5%)、「商業施設」(53.8%)、「ホテル」(41.0%)の順となっています。今回の調査から、「物流施設」が「商業施設」を上回り、「ホテル」も40%を超えるなど、昨今の投資のトレンドが表れた結果となっています。
実際に、2009年度以降、用途がどのように変化しているのかを見ると、昨今のトレンドがさらに見えてきます。
今年度の調査から、「代表的なものを1つ」ではなく、「複数回答可」になっているため、単純な比較はできませんが、2013年度と2016年度との比較から、2018年度の数値を見ると、やはり、ホテル、物流施設の延びが顕著であるといえるでしょう。
図5:日本における主要な不動産投資用途
国土交通省土地・建設産業局「平成30 年度海外投資家アンケート調査業務報告書(2019 年3月)」より作成
実際に、2009年度以降、用途がどのように変化しているのかを見ると、昨今のトレンドがさらに見えてきます。
今年度の調査から、「代表的なものを1つ」ではなく、「複数回答可」になっているため、単純な比較はできませんが、2013年度と2016年度との比較から、2018年度の数値を見ると、やはり、ホテル、物流施設の延びが顕著であるといえるでしょう。
図6:日本における主要な不動産投資用途
国土交通省土地・建設産業局「平成30 年度海外投資家アンケート調査業務報告書(2019 年3月)」より作成
目標運用利回り
最後に、海外投資家が考える「目標運用利回り」を見てみましょう。
2016年度の調査では、「3%超~5%以下」に集中していましたが、今回は、少し分散した結果となりました。2016年度調査に比べると、目標利回りは上昇していますが、2009年度調査からの傾向を見てみると、低下傾向であることは間違いないでしょう。
図7:日本の不動産投資における拠出金の目標運用利回り
国土交通省土地・建設産業局「平成30 年度海外投資家アンケート調査業務報告書(2019 年3月)」より作成