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コラム No.76-2

CREコラム

不動産証券化の実践的活用(2)資産運用型の不動産証券化

公開日:2019/05/31

資産運用型の不動産証券化では、資産流動化型のように不動産の所有者(オリジネーター)は存在しません。SPC(特別目的会社)が投資家などから資金を集めて不動産を購入し、証券化というツールを活用してより多くの運用益を投資家に還元することを目的としています。

多様な不動産と投資家を生んだ

資産流動化型は、オリジネーターが賃貸マンションやビルなどの資産をSPCに移転させ、SPCはその資産が生み出す収益を裏付けとした証券を発行して資金を調達します。証券化の対象となる不動産の存在が前提になることから、「モノ(資産)ありきの不動産証券化」といわれています。これに対して資産運用型の証券化は、複数の投資家や銀行から資金を集めて不動産に投資・運用し、その収益を投資家に分配する仕組みです。J-REITはその代表的な例ですが、運用する資金の存在が前提になることから、「カネありきの不動産証券化」と呼ばれています。
流動化型は、企業の資産である不動産をオフバランス化など経営戦略の観点から有効活用する金融手法であるのに対し、運用型は資金があることを前提に資金を運用して利益を上げようとする投資行動という点で大きく異なります。流動化では、不動産は証券化を行おうとする企業の保有物件に限定されますが、資産運用型の場合は、資金を集めてから投資する不動産を購入するので、多様な不動産が証券化の対象になります。
1つの不動産に対して1つの証券化を行うのでは、不動産を持たない人や企業は、不動産証券化に参加することが難しいので、不動産証券化のマーケットはなかなか活性化しませんが、運用型の証券化の登場で不動産証化市場は一気に拡大しました。その代表例の一つがJ-REITといえるでしょう。投資対象が拡大したことで、投資家もまた多様な顔触れが揃うことになりました。年金基金などの機関投資家や海外のオイルマネーなども日本の不動産市場に流入するようになったといわれています。

図1:不動産証券化市場の拡大に貢献した「資産運用型」

アセットマネージャーにとって多くの収益機会がある

資産運用型の不動産証券化では、スタート当初に不動産は取得されていません。そのためSPCが不動産を購入する必要がありますが、不動産の取得は宅地建物取引業免許など国家資格を持つ法人や個人に限られていました。それを可能にしたのが1995年にできた「不動産特定共同事業法」です。簡単にいえば、不動産の取得や管理に関する公的な資格がなくても、相応の知見を持ったSPCなどの共同事業者であれば、不動産の小口投資を行うことができるようになった法律です。
とはいえ、SPCは従業員がいない名目上の会社ですから、集めた資金とその運用収益に見合う不動産を探して管理するなど、多くの仕事が発生します。物件がオフィスビルであれば賃料収入を維持するためのテナント管理、投資家に対する情報公開(ディスクロージャー)、銀行への融資金の返済や投資家への配当分配など、多種多様な仕事が発生します。

こうした多様な業務をその進捗もあわせてコントロールするのがアセットマネージャー(AM)です。
具体的には不動産会社や投資顧問会社、信託銀行などがアセットマネージャーとなって司令塔の役割を担います。AMは銀行や投資家から資金を集める一方、不動産の取得をはじめとした証券化業務の一切を取り仕切ることになるのです。
業務が多様化すれば、それに伴う報酬(アセットマネジメント・フィー)も増えます。資産運用型は、基本的に資金運用という投資行動ですから、運用成績が上がればその分報酬も上がります。基本的な手数料のほかに、報酬体系は、運用資産残高や運用収益の何%などと設定されます。また、新たに不動産を取得した場合には、取得金額の何%という具合に決められます。資産運用型は、アセットマネージャーにとって多くのビジネスチャンスが広がる世界だといえるでしょう。

図2:アセットマネージャーが主役の資産運用型

ガバナンスが重要なアセットマネージャー

資産運用型の不動産証券化では、アセットマネージャーは投資家に対する利益を第一義に考えた資金運用をしなければなりません。対象が何であれ、投資は投資家保護が金科玉条です。不動産証券化における事例ではありませんが、近年、「責任ある機関投資家」ということがいわれています。機関投資家は、投資先企業の事業環境などを日ごろから注視し、ときにはその企業にとって頭の痛いことでも厳しく指摘して改善を促し、その結果、投資を一任した顧客に有益なリターンを提供することを意味します。
アセットマネージャーの多くは、銀行や信託銀行、証券会社など豊富な資金力を持った大手の金融機関や不動産業界のトッププレーヤーなどが顔を揃えています。自社の系列に忖度することなく、投資家第一を掲げて業務を管理し遂行することが望まれます。

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