CREコラム
圏央道の開通がもたらすCRE戦略への影響
公開日:2017/03/21
圏央道の開通が与える影響
2017年2月26日に、圏央道の境古河IC(茨城県猿島郡境町)~つくば中央IC(茨城県つくば市)間28.5キロメートルが開通し、神奈川県の藤沢ICから千葉県の大栄JCTまでが1本の圏央道で完全につながりました。
この圏央道の開通によって、様々な効果が期待されています。
まず挙げられるのは、なんといっても、大栄JCTにほど近い東京の海外からの玄関口、成田空港からの関東近県、特に関東北部、関東北西部、関東西部へのアクセスが格段に良くなったことでしょう。
これにより、成田空港から観光地への車を使った移動時間が短くなることで、これらの地域への効率的な観光が可能となり、来訪客の増加が見込まれています。
もともと、この地域は世界的な観光地も多く存在し、東日本では最初の世界遺産である日光や2014年に世界遺産登録された富岡製糸場、あるいは代表的な関東の観光地である那須や軽井沢、鬼怒川、秩父など、数多くの観光客が常に訪れています。
今回の圏央道の開通により、これまでように成田空港から都心を抜ける必要もなく、成田空港を利用する国内外の観光客にとって、これら観光地へのアクセスが非常に容易になり、これら観光地への訪問者のさらなる増加が見込まれています。
産業への期待も大きなものがあります。国土交通省の報道資料によると、圏央道周辺にはすでに多くの物流施設が存在し、沿線の大型物流施設は約1,600件あるとされていますが、それらの物流施設において、複数ルートの選択が可能になり、渋滞や事故を回避できることでスムーズな配送ができるだけでなく、生産工場や販売網も含めた効果的な物流網の再整備を行うことによって、生産性が大きく向上する可能性もあります。
実際に、茨城県は工場立地が3年連続で全国一位(平成25年から平成27年)です。今回の圏央道の開通によって、物流と生産工場を合わせたサプライチェーンの再構築の動きは、今後ますます加速すると思われます。すでに複数の場所で区画整理事業が進んでいるようです。
圏央道に展開するDPL
大和ハウス工業でも、圏央道にアクセスが便利な場所での物流センターの建設が進んでいます。すでに物流施設として運営が始まっている2013年12月竣工の「DPL相模原」は、圏央道「相模原愛川IC」から約3.5kmに位置し、免震構造と2ランプウェイ片側車路、様々な環境問題対策などにより、安全安心快適な物流センターとなっています。
2017年以降に竣工する物件では、圏央道「阿見東IC」より直線約800mというインターチェンジ至近の「DPLつくば阿見」。今回の圏央道開通のもっとも利便性の恩恵を得る物流センターです。
「DPLつくば阿見」は茨城県施行による土地区画整理事業で、周辺の阿見東部工業団地や福田工業団地などには多数の企業が集まっており、交流・産業拠点としての価値も高まりつつあります。
ほかにも、「DPL坂戸」は圏央道鶴ヶ島からすぐの関越自動車道「坂戸西スマートIC」から至近に位置する物流センターで、自然環境を整備し働く人たちに優しい物流センターを目指しています。また、圏央道「幸手IC」の近くには、「DPL幸手」を予定しています。
大規模な交通インフラの整備は、物流施設や生産工場のロケーション戦略や物流ネットワーク戦略、あるいは従業員の働き方や住まいにも大きな影響を与えます。
たとえば、これまでは神奈川地区と千葉地区に配置していた物流センターを北部の圏央道付近に統合移転し、神奈川地区、埼玉地区、千葉地区への配送ネットワークの拠点として構築したり、東北地域や北陸地域への新たな拠点を設置したり、様々な選択肢が考えられるでしょう。
また、そうした戦略を採用すれば、それに合わせて、社員やパートの働きやすさ、生活のしやすさを考えたオフィスや社員寮の整備も考慮しなければならなくなります。
このようなサプライチェーンの再構築、従業員の働く環境整備などによる生産性向上こそが、企業のCRE戦略の本質です。
交通インフラの改善は、自社の保有する不動産資産をどのように活用することができるかを改めて考える、いい機会ではないでしょうか。