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コラム No.144

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京都市で空き家税など空き家対策進む

公開日:2023/04/28

空き家対策が加速しそうです。「空き家対策特別措置法」における優遇税制の廃止などを盛り込んだ改正案が閣議決定されました。また京都市は早ければ2026年にも新税となる「空き家税」の導入に向けての準備を進めています。

「管理不全空家」で増税の可能性?

わが国では、2011年の東日本大震災で生じた所有者不明問題などを契機に「空き家法」が制定され、2015年に倒壊のリスクや不衛生な状態の「特定空家」に対して修繕や解体、立木などの伐採を命じる強制措置を盛り込んだ「空き家特別措置法」が施行されました。さらに2019年には耐震基準に適合した改築、または解体後に更地にして売却しやすくした場合は譲渡所得(上限3000万円)を特別控除する税制改正も実施されました。

今回の改正法では、強制措置の対象となる物件を「特定空家」から、その前段階で緊急の危険性がないと思われる場合でも「管理不全空家」に指定し、改善されない場合は固定資産税の減額措置を適用しないなど対象範囲の拡大と優遇措置の解除で空き家対策を強化するとみられています。

対策が強化される背景には、空き家を活用する意向はあっても現実に活用に向けた動きになっておらず、日頃の管理も十分ではない放置空き家が相当数に上っているとの国の判断があります。国土交通省の調査では、居住目的のない空き家は1988年に182万戸、2018年に349万戸と増加。2030年には470万戸に増えると予測しています。管理不十分の空き家は周辺の環境に悪影響を及ぼすため、個人の問題から地域全体の課題になっており、特定空家になってからの対応では限界があると国自ら認めた格好です。

対策は「発生抑制」、リバースモーゲージ活用も

改正法案は、国交省の「空き家対策小委員会」が今年2月に取りまとめた報告書をベースにすると見られます。報告書によると今後の空き家対策は、「(1)発生の抑制」「(2)活用促進」「(3)適切な管理・除却」の促進―の3つを掲げています。発生の抑制では、住居の所有者が死亡後もなるべく空き家にしないため自宅の取り扱いを家族全体で考えるよう、高齢と思われる所有者に対して周知することを基本的方針とし、いわゆる「終活」の一環として空き家化させない意識の醸成にポイントを置くことを求めています。

注目されるのは「住宅ローンの逆バージョン」ともいわれるリバースモーゲージの活用・円滑化を挙げている点です。所有者によっては自宅を生前に担保化・現金化して生活資金に充てるニーズがあり、この場合所有者の死後も住宅が空き家となる可能性は低いとされています。空き家対策で小委員会は今回初めてリバースモーゲージに言及し、類似した「ハウスリースバック」(自宅売却後に賃貸契約を結んで住み続けること)に対しても活用を勧めています。リバースモーゲージは、借主が生存中に物件の担保価値が下落した場合に融資額の見直しリスクが生じるなど利用に際しての注意が必要です。また契約対象は戸建住居が多くマンションは対象外であるなど、利用を促進する場合には国がこうしたメリット・デメリットを明示することが求められます。

(2)の活用促進では、住居を相続する人への働きかけや相続時の譲渡促進を挙げています(図1)。自治体やNPOが相続人に対して空き家リスクを周知徹底し、空き家の実情を把握する担当部局と戸籍を扱う部局が連携して誰が相続人なのかを事前に把握しておくことを重視しています。空き家では、相続人が遠隔地に所在しているために連絡が取れないことがネックになっていることが往々にしてあります(図2)。自治体における空き家対策のグリップが緩いのは、こうした連携不足にもその原因の一端があります。(3)の適切な管理・除却の促進は、自宅所有者に対して活用困難な空き家の除却支援などを盛り込むものと見られています。

図1:空き家の取得経緯

出典:社会資本整備審議会・住宅宅地分科会「空き家対策小委員会とりまとめ参考データ集」(国土交通省住宅局 2023年2月)

図2:空き家の所在地と所有者の居住地の関係

出典:社会資本整備審議会・住宅宅地分科会「空き家対策小委員会とりまとめ参考データ集」(国土交通省住宅局 2023年2月)

図3:空き家所有世帯の家計を支える者の年齢

出典:社会資本整備審議会・住宅宅地分科会「空き家対策小委員会とりまとめ参考データ集」(国土交通省住宅局 2023年2月)

京都市が空き家税導入 その狙いは?

2023年3月下旬、京都市が早ければ3年後にも「空き家税」を導入するとの報道がありました。住居人のいない空き家や別荘など、人が住んでいない住宅に課税することで居住や売却を促す全国初の試みとして注目が集まっています。自治体行政を統括する総務省の大臣がこの導入案に同意したことで、京都市は2026年以降に空き家税を施行する方針とみられています。

京都市では2021年の1年間だけで人口が1万人以上減り、全国の自治体で最も多い減少数になりました(総務省の「人口動態調査」による)。一方で観光地としての魅力、景観の良さなどから投資目的の不動産購入が増えて地価が高騰、住宅不足や購入しづらい状況になっています。空き家に課税することで売却や賃貸を促して住宅供給の一助とし、あわせて税収の増加に繋げる狙いもあるようです。空き家が増加して各地で社会問題になる中、京都市のこうした動きには、全国の自治体も注視しているのではないでしょうか。

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