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CRE戦略としての物流施設拡大する物流施設ニーズとの東京都市圏における物流機能の変化
公開日:2016/07/28
CRE戦略や経営戦略において、物流施設への注目が非常に高まっています。
CRE戦略とは、企業の経営における「企業の保有不動産を企業価値向上のための活用戦略」のことですが、これまで多くの企業において、CRE戦略の一環として物流施設を考えることは、あまりなかったようです。
それは、所有不動産を企業が商品やサービスを生み出していくバリューチェーンの一環として捉えられることは少なく、バリューチェーンを支えるサービスをサポートする単なる資産の一部として捉えられることが多かったからです。しかし現在、さまざまな業種において、物流施設(物流戦略)を経営戦略の大きな柱として認識し始めています。
その実態のひとつを、不動産証券化の対象用途の変化に見ることができます。国土交通省が発表している「不動産証券化の実態調査」を見ると、その傾向は顕著です。
下のグラフは、平成27年度「不動産証券化の実態調査」の結果(平成28年5月27日 国土交通省 土地・建設産業局)ですが、平成27年度に取得された資産額の割合を用途別にみると、オフィスが全体の35.6%、次いで商業施設、倉庫が15.2%となっており、物流施設用途としての証券化が増加しています。
この調査データに見るように、物流施設が新たな投資物件として注目を集めています。
用途別 証券化の対象となる不動産の取得実績の推移
平成27年度「不動産証券化の実態調査」の結果(平成28年5月27日 国土交通省 土地・建設産業局)
証券化の用途として広がりを見せる物流施設ですが、そこにはどのような背景があるのでしょうか。
その要因のひとつとして、経済のグローバル化によって日本から製造拠点が次々とアジア各国へと移っており、日本におけるサプライチェーンが明らかに変化しています。
そして、これまではコスト部門とされていた物流が、バリューを生み出す機能を持ち始め、バリューチェーンのひとつとして位置づけられ始めています。
それは、物流施設自体の変化として現れています。実際の東京都市圏における物流施設の実態を見ながら、傾向を探ってみましょう。
東京都市圏交通計画協議会が実施した「平成25年度 第5回東京都市圏物資流動調査(速報版)」からポイントをご紹介します。
京浜港近接地域、高速道路沿線地域に物流施設の立地が進展
京浜港に近接した臨海部のほか、内陸部では圏央道(首都圏中央連絡自動車道)をはじめとする高速道路沿いを中心とした輸送の便のよいエリア、茨城中部・栃木南部・群馬南部においても北関東自動車道沿いを中心として、物流施設の立地が進んでいます。
物流施設の求められる機能の変化
敷地面積が3000m²以上の大規模な物流施設の立地の割合が、開設年代2000年以降の施設では約4割となっています。逆に、1000m²以下の物流施設は減少しており、物流施設の大規模化が進んでいるといえます。
開設年代別にみた物流施設の敷地面積規模の構成比
出典:東京都市圏交通計画協議会「平成25年度 第5回東京都市圏物資流動調査」
また、新しい施設になるほど、単に保管だけではなく、サプライチェーンの拠点としての集配送や流通加工の機能が増加しています。商品・製品の組立、詰合せ、包装、値札付け、検品などの流通加工と呼ばれる機能を持った物流施設の開発が進んでいるようです。
開設年代別にみた賃貸型の物流施設の割合
出典:東京都市圏交通計画協議会「平成25年度 第5回東京都市圏物資流動調査」
これからもこうした多機能化の流れは止まることはなく、企業のサプライチェーンにおける物流施設の役割はますます増えていくと予想されます。
こうした物流施設の変化は、不動産を保有する企業において、CRE戦略を見直すべきひとつのきっかけになると思われます。自社での活用か、他社による活用かを含め、物流戦略がこれからの製造、流通業における重要な戦略のひとつとなることは明らかです。
物流施設は広大な不動産を必要とします。CRE戦略のひとつとして、検討する価値は十分にあるのではないでしょうか。