大和ハウス工業株式会社

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TWO-WAY 総技研とあなたをつなぐ2WAYコミュニケーション・ペーパー05

ICT技術で建設現場の課題を解決する
(WEB限定コンテンツ)

施工管理を省力化するCFTモニタリングシステム

伊藤 尚子/建築技術研究部

伊藤 尚子の写真

コンクリートの面白さに魅了されて研究の道へ

「コンクリートって、面白いんですよ。建築材料の中では珍しく、自分で配合を決めてカスタマイズできるんです」と静かな口調ながら、熱くコンクリート愛を語る伊藤。「セメントと水の量によって強度が変わったり、混和剤を入れることでひび割れが起きにくくなったり。水に浮くコンクリートもあって、学生のコンクリートカヌー競技大会もあるんですよ」。

学生時代からコンクリートに興味を持ち、大学ではコンクリートの耐久性を研究。入社後は材料の耐久性検証や外壁パネル開発などの部署も経験しつつ、コンクリートの研究開発を続けてきた。

そんな折、広島テレビ放送新社屋を大和ハウス工業が設計・監理・施工することになった。この建物に耐震性の高いCFT造の柱が採用される。

CFTとは、鋼管内にコンクリートを充填する構造形式で、鉄骨造、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造に次ぐ「第4の構造」と呼ばれる。ホテルやオフィスビルといった高層建築物や大空間が求められる倉庫などで採用されることが多い。

CFT(コンクリート充填鋼管構造):鋼管内にコンクリートを充填

CFTの性能を担保するには、コンクリートが鋼管の隅々にまで充填されていることが重要になる。そこで、新社屋の建設現場には、大和ハウスグループのフジタが開発した「CFTモニタリングシステム」が導入された。コンクリートの充填状況をカメラやモニターなどで監視するシステムだ。

この現場を伊藤の上司や先輩が視察。フジタが開発したものをベースに、もっとコストを抑えた簡易版があれば、現場の費用負担が減り、さらに広く採用されるのではないだろうか。そう考えた上司は、コンクリートに強い伊藤に開発を託した。

コンクリートの充填管理を可視化する

高層建築の場合、CFTの鋼管柱は数十mの高さになる。鋼管の中は空洞で、そこにコンクリートを上から、あるいは下から圧力をかけて充填する。

柱と梁を接合する部分には、梁から流れる力を確実に柱へ伝えるため、柱の中にダイアフラムと呼ばれる厚い鋼板を入れるが、圧入の場合、ダイアフラムの下四隅に空気だまりができやすく、コンクリート充填性確保の弱点となりやすい。

コンクリートの充填性を確保するには、一般的にコンクリートの圧入速度を管理すれば良いと考えられているが、問題は、その確認方法である。通常、コンクリートの圧入速度は1m/分。モニタリングシステムを使用しない場合、圧入速度に合わせて階段を1階ずつ上がり、全階で柱の蒸気抜き孔からノロ(セメントペースト)の溢れを確認するなど、かなりの手間を要する。モニタリングシステムは、そのような苦労から現場担当者を解放するのだ。

「CFTモニタリングシステム」は、CCDカメラとレーザー距離計を一体化したユニットを鋼管の内部に吊り降ろし、鋼管内の最下部から圧入速度に合わせて引き上げることで、充填の弱点となるダイアフラム部の充填状況をカメラの映像で確認できる。圧入速度もリアルタイムで確認でき、充填に関わる作業者が圧入状況を共有できるのが利点だ。

伊藤は開発チームの中心メンバーとして、フジタと共同で「CFTモニタリングシステム」簡易バージョンの開発に着手した。圧入速度管理と打ち止め管理に重点を置き、柱の中にカメラを固定することで、システムの操作にかかる労力を削減。さらに、無線を活用し、現場監督やポンプオペレーターだけでなく、遠隔地にいる構造設計担当者や研究員もリアルタイムで圧入状況を確認できるようにした。

「CFTモニタリングシステム」の映像で充填状況を確認する様子

建築系建物の現場をもっと楽にするために

現場で初めてモニターを見た作業者たちから「おぉ~」と歓声が上がったとき、伊藤の心にはうれしさが込み上げた。「圧入速度や打ち止めの位置がモニターで見られて助かる」とみんなが喜んでくれた。現在は、大和ハウスグループのビルやホテルなどの施工現場に導入し、改良を繰り返している最中だ。

工業化が進む住宅やアパートに比べ、オフィスビルやホテルは、形状や工程が現場ごとに全く異なるため作業が煩雑になる。建築確認検査機関への提出書類や自社用の記録を作成する手間や時間も膨大だ。

「現場って、本当に大変だと思うんです。体力的にもそうですし、一日現場に出て、会社に帰ってからも書類整理して…。実は、私の夫も他社で現場監督をしていまして(笑)、帰宅がすごく遅いんです」と伊藤。施工現場で働く人たちの苦労を肌で知るからこそ、「施工管理を省力化できる技術やシステムを開発して、現場をもっと楽にしたい」と思う。

「CFTモニタリングシステム」をはじめとする現場でのICT技術の活用は、近年始まったばかり。他社もまだ手探りだ。伊藤たちのこれからの研究開発に大きな期待が寄せられている。

「CFTモニタリングシステム」導入の施工事例:大和ビル

伊藤 尚子(いとう なおこ) 建築技術研究部

工学研究科出身/2008年入社/コンクリートの知識を活かし、建築系建物に関わる部署で力を発揮。産休・育休後は施工や管理を省力化する研究開発に取り組み、研究所から現場へエールを送る。

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