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食品衛生に貢献する「青果殺菌洗浄システム」の開発(Web限定コンテンツ)

研究ピックアップ 3

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食品衛生に貢献する「青果殺菌洗浄システム」の開発

大野 喜智/フロンティア技術研究室

大野 喜智の写真

新市場の開拓へ電気用品の認証を取得

新商品創発グループの使命は、新市場の開拓!

ハウスメーカーの枠に捉われず、新技術・新商品を創出して新しい市場を開拓すること、それが大野の所属する「新商品創発グループ」の使命である。今回、大野に与えられたテーマは「青果殺菌洗浄システム」の開発だった。

生鮮野菜や果物の殺菌洗浄については、食品事業者は流水で汚れを落としたあと、次亜塩素酸ナトリウムの希釈液に浸けて殺菌している。しかし、次亜塩素酸ナトリウムは食品に塩素臭が残ること、発がん性物質のトリハロメタン発生の可能性がある等の問題が指摘されており、その対策として大量の水で時間をかけてすすぎを行うことから、洗浄時間・節水の観点からの問題もあった。

新しい青果殺菌洗浄システムの開発へ

大野が最初に着手したのは、次亜塩素酸ナトリウムに代わる殺菌法だった。薬品系やオゾン水など種々検討した末に、近年、食品工場を中心に導入されている電解水を選択した。しかし、同じ電解水でもpHによって性質が違ってくるため、大野は青果の殺菌に最適なpHを見つけ出すまで実験を繰り返した。

たどり着いた結論が「微酸性電解水」だった。微酸性電解水はヒトの肌のpHと同じ範囲にあり、除菌・消臭等の効果があって、味や臭いはほとんど無く、食品添加物にも指定されている安全な水である。

ここに至るまで、大野は、野菜の表面に付着した菌を実験室で培養し、菌のコロニー(集落)をカウントして殺菌効果を見るなど、「ハウスメーカーの研究室とは思えないような(笑)」実験に明け暮れた。

HACCP制度化に着目した独自機能を付与

微酸性電解水の採用に加えて、大野は、有効塩素濃度(およびpH)測定装置をシステムに内蔵させた。シンク内で殺菌洗浄中に、殺菌に必要な有効塩素濃度を維持できているかを自動的に測定し、結果を記録する。さらに、USBメモリー等でデータをパソコンに移せば、使用履歴の確認、書類化もできるのである。

2018年6月通常国会で、食品衛生管理の国際標準であるHACCP(ハサップ)を制度化する改正食品衛生法が可決・成立し、2020年頃には中小食品業者にも制度化が波及すると予測されている。

HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)は、食品原材料の受け入れから、製品となり出荷されるまでのすべての工程で、微生物による汚染や異物の混入などの危害を予測し、その防止管理を行うもので、危害防止につながる特に重要な工程を〈継続的に監視・記録する〉ことを課した衛生管理システムである。有効塩素濃度を〈継続的に監視・記録できる〉大野のシステムは、この点でHACCPに的確に対応している。

青果殺菌洗浄システムへの有効塩素濃度(およびpH)測定器内蔵は、今までの食品機械業界にもなく、国内初・唯一のアイデアであった。今秋には、発売予定であり、量産準備に入っている。

電気用品の認証を取得し、大和ハウス工業名で製造

電気用品には、特定電気用品(危険または障害の発生するおそれが多い電気用品)と特定電気用品以外の電気用品(一般的な家電品など。青果殺菌洗浄システムはこれに該当)があり、特定電気用品を製造・販売する場合は、登録検査機関の技術基準適合性検査を受け適合性証明書の交付を受ける必要がある。一方、今回の青果殺菌洗浄システムのように特定電気用品以外の電気用品では、自社内で検査を行い、技術基準への適合を確認するだけで良いのだが、大野は、登録検査機関である電気安全環境研究所(JET)に製品を持ち込み、あえて厳しい適合性検査を受けて認証を取得する。これは、青果殺菌洗浄システムを大和ハウス工業名で製造し、お客様にご提供する為であった。

「厨房機器等の衛生管理に関わる、当社にとって新しい分野では、今後、大和ハウス工業のブランドを構築する必要がある。この製品は食の安全安心に係るものである。食品業界のユーザーに性能・安全性への100%の信頼感を持ってもらうためには、この認証を取得しておくのが有効と考えた」と、大野は言う。HACCPの制度化が始まれば、市場規模は一気に拡がるだろう。「国内で実績を上げ、海外に打って出たい」と、大野の目は早くも海外市場に向けられている。

FOOMA2018(国際食品工業展)に出展

2018年6月(12-15日)、東京ビッグサイトで開かれた国際食品工業展(主催:一般社団法人日本食品機械工業会)に、共同開発会社の株式会社ホクエツ様・販売提携会社のホシザキ株式会社様の両社のブースで出展・実演し、業界関係者から高評価を得た。

新発想の青果殺菌洗浄システムは、有効塩素濃度を測定・自動記録できるので、農林水産省のHACCP支援法による、株式会社日本政策金融公庫からの融資の優遇対象となる。今秋、本社建築事業部から発売予定。

株式会社ホクエツ様ブース

ホシザキ株式会社様ブース

大野 喜智(おおの よしとも) フロンティア技術研究室

工学研究科環境工学出身/2004年入社/入社以来、バイオマスの研究、発熱外来施設の開発、植物栽培ユニット「agri-cube」の開発など多彩なテーマに取り組み実績を上げている。

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