バルコニーで暮らしの幅を広げる
バルコニーの奥行きはとても重要です。よく半間(約91cm)ほどの奥行きのバルコニーを目にしますが、使い勝手が悪く洗濯物を干すにもギリギリになるので、少なくとも半間半(約136cm)の奥行きを確保しましょう。2階リビングにしようとお考えでしたら、奥行き1間(約180cm)以上のバルコニーを設けると、外で食事やティータイムを楽しむこともできます。深い庇を設ければ、室内のように使える半戸外空間となるのでより快適です。ポイントはバルコニーの手すりを透けない壁にすることで、視線を気にせずに寛ぐことができますので、お勧めです。2階にキッチンを設ける場合は、生ゴミを一時的に出しておけるようなバルコニーがあると便利。これは奥行き半間でも構いませんが、なるべく直射日光が当たらないように北側に設けるようにしましょう。
屋上はとても多彩な自由空間
以前は、屋上と言えば鉄筋コンクリート造でなければできないものでしたが、最近では構造技術や防水技術の進歩で、木造住宅でも可能になってきました。屋上は都市部の敷地が限られた場所では、とても有効な設計手法の一つです。周囲から目が届きにくくプライベート性に優れ、夏は花火、秋はお月見、冬は星座観測、さらにテントを張ってキャンプ気分なども味わうことができます。プランターなどを置けば、家庭菜園やガーデニングを楽しむことも可能です。私の研究室で調べたところ、友人を招いて家族ぐるみでパーティなどをされる方も多く、コミュニケーションの醸成にも一役かっています。実用的に洗濯物や布団を干すのにも便利ですし、ご家族によってはまだまだ屋上の使い方は広がりそうですね。
デッキテラスなどの中間領域をつくる
良い住宅の多くには中間領域がうまく設けられています。中間領域とは屋外と屋内の間の空間のことで、昔の家に見られた縁側などはまさにその代表例。外のような部屋、内のような外部という、まさに中間領域が暮らしの広がりを生み出し、豊かな住空間をつくる秘訣になっているのです。前述したバルコニーをはじめ、リビング・ダイニングからつづくデッキテラスなどの半戸外空間は、設計に取り入れたい理想的な中間領域。このスペースを違和感なく屋内とつなげるコツとしては、内と外の床面の高さを一致させて連続させると、より広がりを演出できます。
中間領域(デッキテラスの例)
住宅設計アドバイザー 一級建築士
山形大学工学部 特任教授 (前)近畿大学建築学部 教授
木村 文雄
1976年 芝浦工業大学 工学部建築学科卒業
ハウスメーカーにて住宅設計、商品企画、研究開発などに携わり
2013年4月より近畿大学建築学部 教授に就任
2019年4月より現職
※掲載の情報は2020年6月現在のものです。