光と風をどう採り込むか
リビングを1階につくるか、2階につくるかは、とても大きな問題です。家族の生活スタイルや敷地環境を見極めて、熟考して決めることが大切になります。住宅が密集しているところで1階にリビングをつくると、一日中日光が入ってこないという事態も十分に考えられること。長い時間を過ごすリビングを明るい2階に設けて、寝室を1階にするというのも一つの考え方です。また、リビングを1階につくる場合でも、光を採り入れる方法として、コート(中庭)を設けるという手段もあります。家にあえて凹みを設けることで、そこから光と風を導くことができ、空間の快適性を向上。とりわけ敷地の間口が狭くて奥行きのある細長い敷地には有効なプランニングです。この中庭を道路に面しないように設ければ、外からの視線も気にする必要がありませんし、リビングやダイニングと中庭を連続させることで、空間にさらなる広がりを演出することもできます。
視線を延ばして、空間の広さを演出
実際の空間が広いことと、広く感じることは、実は違います。私が空間を考える時の基本にするのは、「視点間距離」という考え方。簡単に言うと、視線を遠くに延ばすことで空間を広く感じさせる設計方法です。壁があるとそこで視線は止まりますが、壁の上部を開けて視線を通すとか、床の高さを揃えて連続させるとか、視点間を長くすることが広さを感じさせるコツなのです。さらにもう一つ、家の中をぐるぐる回れる間取りにすると、空間を広く感じることができます。これは、なるべく行き止まりをつくらない「回遊性」を大切にした設計手法で、とても有効なプランニング。大切なのは、無理に回れるようにするのではなく、生活動線や家事動線を考えてプランニングを行うことで、その結果として回れる間取りになれば、それで良いと思います。
吹き抜けの注意点と、天井の活かし方
リビングが吹き抜けになっていて、空間に高さが生まれるとかなり開放的な空間になります。しかし、天井がない分、上階の床面積は減ってしまいますし、高い天井に照明器具を付けた場合は、電球を交換することもままなりません。高い窓を拭くのも大変ですし、夏場は上部にたまった熱を排出することを考える必要もありますので、高窓や天窓を設ける場合は、必ず開閉できるようにしましょう。また、階をまたがって吹き抜けをつくるのではなく、屋根の形状に沿って勾配なりの天井にするという方法があります。この時、構造体である梁をあえて見せると、さらに遠近感が出て広さを演出するのに効果的。この梁(あらわし梁)は、照明器具を取り付けるのにも役立ちます。
住宅設計アドバイザー 一級建築士
山形大学工学部 特任教授 (前)近畿大学建築学部 教授
木村 文雄
1976年 芝浦工業大学 工学部建築学科卒業
ハウスメーカーにて住宅設計、商品企画、研究開発などに携わり
2013年4月より近畿大学建築学部 教授に就任
2019年4月より現職
※掲載の情報は2020年1月現在のものです。