まず見るべきは、 向こう三軒両隣
これから自分が建てようとしている家が、どういう環境(土地)にあるのかをよく確認することが大切です。“私は建て替えだから必要ない”と思う方も、あらためて隣近所のお宅をよく観察してみてください。いわゆる向こう三軒両隣さんです。これから仲良くお付き合いして行かなくてはなりませんよね。お隣さんの家との距離があまり接近し過ぎないようにするとか、北側のお宅に影が落ちそうなら屋根の高さを少し低く抑えるとか、周囲への心配りが大事なんですね。プライバシーもお互い大切ですから隣家の窓の位置を確認した上で、真正面で向き合わないように、ずらすなどの配慮をすれば自ずと良い家になると思います。新しく土地を購入されて新築される場合は、なおさらご近所付き合いを良好にするためにも、しっかりと周辺環境に目配りと気配りをお願いしたいですね。
間取りづくりは、 ゾーニングから はじめましょう
実際に間取りを考える時、最初に行うのはゾーニングです。これは生活空間をおおよそで決める作業になります。ここでは家族の仮想の要望を挙げてゾーニングを行なってみましょう。
Step1
今回は例として南側に道路があるケースで考えてみます。あなたの敷地が南側道路でないとしても、基本的な手順は変わりません。実際のゾーニングでまず考えるのは、玄関と駐車スペースです。駐車スペースをどこに設けるかによって、内部の間取りは随分変わってしまいます。ここでは、駐車スペースを南西側に設けて、道路から垂直にゾーニング。自転車もその辺りに置けるようにします。道路側に庭が取れそうなら、そのスペースも確保しましょう。駐車スペースを決めたら、そこからなるべく近いところに玄関を設けるのが良いですね。私は玄関の位置は道路から少し離れている方が良いと考えているので、駐車スペースの奥に配置します。
Step2
次に建物内部のゾーニングですが、ここで一番重要なのが階段の位置。階段は基本的には、できるだけ玄関から離れないように置くのが基本と言えます。次は、リビングやダイニング。暮らしの中心となるスペースを考えるのは難しいことですが、その答えは家族の生活の中にあります。一日を気持ちよくスタートするためにも、朝食は明るいところで食べたいですよね。それなら、ダイニングは朝陽を感じられる東側に設けるのが良いということになります。リビングは1階全体のつながりを考えると、ダイニングと玄関の間の南面に置くのが良いですね。キッチンは基本的に西側を避けて、ダイニングの近くにあるのがグッド。水周りの洗面室やトイレは、長時間過ごす場所ではないので、これらを西側や北側にゾーニングします。
Step3
1階のゾーニングが決まったら、次は2階。階段の位置は決まっているので、まずはそこを書き込みましょう。要望にある吹き抜けは点線で記入しておきます。主寝室は西陽の熱を避け、さらに道路から離れた北東の角が良いですね。子ども部屋は朝陽で目覚めが良いように東側に設けることにします。トイレが必要なら、それも書き込んでおきましょう。2 階には各部屋が並ぶので、廊下が必要です。もし無駄に廊下が長くなるようなら、幅を少し広げて(30~50cm)通行以外の用途(子どもの共有スペースなど)も考えるようにしましょう。廊下の隅にカウンターをつくり付ければ、書斎コーナーのような空間もできます。このようにして、ざっくりとゾーニングしていくと、ほら目指す家の姿が見えてきましたね。
住宅設計アドバイザー 一級建築士
山形大学工学部 特任教授 (前)近畿大学建築学部 教授
木村 文雄
1976年 芝浦工業大学 工学部建築学科卒業
ハウスメーカーにて住宅設計、商品企画、研究開発などに携わり
2013年4月より近畿大学建築学部 教授に就任
2019年4月より現職
※掲載の情報は2019年10月現在のものです。