人の生活に関わる様々なことをデータとして記録しておくと、
生活はどのように変わるのでしょうか。
未来の家では、日々の様々なデータの蓄積と、分析によって、
より健康で笑顔の溢れる生活が実現できているかもしれません。
人の小さな変化を捉える
家族や、職場の同僚や、友人から、「なんか顔色悪いけど大丈夫?」とか、「無理してない?」など、心配して声をかけてもらった経験はありませんか?そんな時、声をかけてくれた人は、普段のあなたの状態をよく見て覚えていてくれて、その日のあなたに普段と違う点を見つけ、「あれ?いつもと違うけど体調でも悪いのかしら?」と心配をして声をかけてくれるのです。とてもありがたくて嬉しいことですね。しかも自分では見えないので、気づいていないケースもあったりします。
では、未来の生活ではどのようになっているでしょうか。もっと身近にそれを気づかせてくれる存在が現れているかもしれません。みなさんが朝起きて家を出るまでに一度は見るもの、そして帰ってきてから寝るまでの間にも一度は見るであろうもの、そう、鏡です。朝起きて顔を洗ったり、歯を磨いたり、シャワーを浴びて髪を乾かしたり、お化粧をしたり、1日の中で鏡を見るケースは何度となくあると思います。そんな身近な存在である鏡が、ご自身の美容、健康、おしゃれなどの場面で欠かせないパートナーになる日が来るかもしれません。
鏡よ鏡、鏡さん、今日の私のコンディションは?
鏡の前に立つシチュエーションは1日に何度もあります。未来の鏡は、あなたや家族が毎日鏡の前に立つ度に、誰が立っているかを判別し、その人ごとに状態を記録してくれます。そして、何か変化があったら教えてくれるようになります。表情はどうか、顔色はどうか、クマができてないか、吹き出物などの変化はないか、などです。
顔から読み取れる人の健康状態の変化の可能性
朝であれば、その日1日元気に過ごせるかどうかを見極めることができるかもしれませんし、お化粧をする人であれば、その日のコンディションに合わせたベストなファンデーション、口紅の色やメイクのワンポイントなどもアドバイスしてもらえたら嬉しいですね。これまでよりもよい状態で外出ができるようになります。
また、夜であれば、普段の夜と比較していつもより疲れている状態に気がついてくれて、十分な睡眠時間を取るように勧めてくれたり、ビタミンの補給を提案してくれたり。ちょっとした心遣いをしてくれる、そんな存在になる世界がイメージできましたか?もちろん、普段と顔色が大幅に違っているなど、大きな体調変化が起きている可能性がある時には、自動で体温を測って教えてくれるなどの機能もオプションでつけることができると便利かもしれません。自分だけでなく、家族全員のコンディションを記録して管理してくれるので、みんなが元気に過ごす手助けになりますね。
プライバシーは大丈夫?
ただ、鏡の前に立つときは、素の状態であることも多く、そんなデータは誰にも見られたくないし、活用して欲しくないという声もあるのではないかと思います。
でも、ご安心ください。現在と同等のプライバシーに配慮したサービスを実現するために、未来では別の最新テクノロジーが活用されます。エッジコンピューティングと言って、現在でも使われているケースは多数あります。個人によって重要なプライバシーに関わるデータをサーバー側で保持しなくてもよいように、データの処理をインターネットに送信する手前で行ない、写真や映像などのデータそのものはサーバーに送らない形でプライバシーを担保するという手法です。
今後はその技術がさらに進み、インターネットの手前での処理をする能力が拡大していくことが見込まれます。もちろん全てがつながる未来の世界では、サービスを使う前にどのような情報がサーバーに送られているかは、きちんと確認をした上で利用するのが当たり前となります。ただ、家の中に存在している様々な情報をデータ化して、生活を便利にするという領域において、企業側もプライバシーをどう守った状態でサービスを展開していくかというのは、重要なポイントです。
図:サービス運営企業に送られる前に処理されるデータ
変化の兆しを捉えたリコメンド
前段の例では、鏡にまつわるシーンだけを特徴的に切り出してお伝えしましたが、未来の家の中では様々なデータが常に記録され続けていくのです。鏡もその一つに過ぎません。
室温、湿度、体温、心拍数、体調、活動量、等々。それらのデータが取得され、いろいろな場面で生活を便利に楽しくする方向で活用されていきます。
例えば、喉が渇いたなと思った際に、誰かにお願いをしたり自分が行動を起こしたりする前に、お茶が準備される世界がやってきます。最終的にロボットが持ってくるのか、家庭内の誰かの行動を促す形になるのか、自分で立ち上がっていれにいくのかは別ですが、空間の温湿度、滞在している時間、心拍数、消費カロリーなどのデータを元にすれば、その人がそろそろ「喉が渇いた」と感じるであろうという予測を立てることができます。また、人の行動は一連の流れがあるので、データが蓄積されればされるほど、パーソナライズ化が進み、正確に予測ができるようになります。
つまり、その人が声を発する前にすでに「喉が渇いている状態である」ということを判断して、水分補給のアクションにつなげる選択肢が自動的に進められていくのです。「喉が渇いたな」の前に、「はい、お茶。」と出てくるようになるかもしれません。
家にいる間に気づかないうちに脱水症状になっていたり、熱中症になっていたりということも事前にその状態に気づくことができるので、そういった症状を防ぐことが可能となります。
人の曖昧な判断よりも正確に判断できる
人の行動の中には、直感的なものもありますが、実際にそこにある事象や現象を捉え、過去の自身の記憶にあるものと比較をして、違いを見つけて判断し、行動を起こしているものが少なからず存在しています。そして、その判断の基準になっているのは個人の主観に基づく曖昧なものであったりします。そのため、本来であれば事前に気をつけたほうがよいことも、気づかないことで、喉がカラカラになるまでわからなかったり、知らず知らずのうちにキャパシティを超えて疲れがたまり体調を崩してしまったり、というようなことが起きるのです。
IoTはそこに存在はしていてデータ化されていないコトをデータ化して活用できる状態にする技術です。そのため、人が見たり感じたりして判断をしている理由が明確に説明できることや、複数の環境要因や人間の活動データを通じて判断できることは、その状態を捉えることさえできれば、人間以上に正確に判断することができるのです。
未来の生活では、IoTの技術でデータ化された様々な情報が日々記録されることになります。それらのデータを元に、これまでは人が曖昧に判断していたことを、自動的に正確にコンピューターが判断できるようになります。環境やそこにいる人の変化の兆候を察知して、事前に予防やメンテナンスのためのアクションを起こせるようになるのです。そのような未来の世界では、今よりももっと健康で笑顔の溢れる日々が送れるようになっているのではないでしょうか。
株式会社ウフル IoTイノベーションセンター シニアマネージャー
米田隆幸さん
IoT領域のビジネス支援をはじめとし、クラウドサービスの導入支援からウェブサイト構築など、ワンストップ・ソリューションを提供。
※2018年3月現在の情報となります。