食卓に欠かせない、うつわ。
何を選んだらいいのか迷うことがありませんか?
日々使うものだからこそ、
丁寧に選んで長く使いたいもの。
手づくりのうつわを扱う東京都千代田区の
「暮らしのうつわ 花田」を訪ねて、
うつわ選びの極意を伺いました。
2024.3
「マグカップの取っ手は、木の幹から枝が伸びるように自然な感じがいいんですよ」。うつわのこと、作家のこと、うつわ話が尽きない店主の松井英輔さん。
九段坂を上ったところにある。1階は常設展示、2階はギャラリーとして作家の個展を定期開催。
暮らしにすんなりなじむ
手づくりのうつわがそろう
「暮らしのうつわ 花田」は1977年に開店、和食器を中心に作家の手づくりによるうつわを販売してきました。「食卓の中心は料理であり、人です。うつわはそのためのもの。僕たちのゴールはシンプルに『おいしく楽しく』。その助けになるうつわであればいいのかなと。楽しい時間が増えれば、人生も楽しくなるでしょう」と店主の松井英輔さん。
手づくりのうつわであっても親しみやすい、なじみやすい雰囲気は店内にも漂っています。「ここは僕のセンスとか感性で売る店だとは思っていないので。見てもらえば誰かの趣味が入っていると感じないと思います。そこは心がけていますね。おいしく楽しくっていう時間を提供するお店だと思っていますから」
「暮らしのうつわ 花田」ではこれまでに300人ほどの作家とうつわづくりを手掛けてきました。松井さんは週に1回ほど、作家の元へ赴いてやりとりを重ねることを大切にしています。「僕たちの仕事は見つけること。形でも色でもつくりでも、その人の人格みたいなものはどうしたって出てくるんです。ちょっとした気配りとか。それが面白いところですし、その作家さんにしかないものを僕たちがどれだけ最適化していくかが大事。こちらから赴くことで、時には作家さん自身が気づいてない持ち味を見つけることもあるんです」
最近、引退を決めたベテラン作家の最後の作品展を開くという経験も。「うちを選んでもらったことがうれしかったですね。今までのつきあいが良かったと思ってもらえたんだなと。基本的に作家さんとは長くつきあうことを目標にしています。もちろん、その中でお互いに言いたいことを言ってやり合うこともあります。新しい作家さんには、いろいろ言ったり働きかけたりしますが、そういうことはすべて長くつきあいたいからですって伝えるようにしています」。ちょっと青臭いですけど、と言い添える松井さん。作家とのつながりを大切にするところに、長く信頼を集める理由が伺えます。
茶わん、どんぶり、小皿、大皿、箸置き、グラス、漆器…とカテゴリーごとに並ぶ店内。落ち着いて、ゆっくり見て回れる。
長く使い続けられるうつわ選びは
使いやすくて好きなものを
作家との確かな関係性の中で生まれた花田のうつわ。たくさんある中から、どうやって選んだら良いのでしょう?
「あえて僕は、とりあえず使えそうなもので好きなものを選んだらいい、とお伝えしています。家に帰ったら結局、好きなものをまず手に取ると思うんです。使えそう、というのは普段自分が食べているものを想像してみてください」
パッと見て、3通りくらい使い道が思い浮かぶと良いそう。「中皿なら、おにぎり、焼き鮭、あと餃子、ケーキもいけるかな…とかね。もしカテゴリーで選ぶなら、まず、ごはん茶わんかマグカップが手頃だと思います。1個で足りるし自分が使うものなので。手づくりの良さを実感できると思いますよ」
たとえば取り皿をあえてそろえず、バラバラの皿を使うなど、最近は食卓のスタイルが変化していると感じるそう。「箸置きのコーナーではナイフ・フォーク用のピローが増えました。それで箸と一緒に置けるような、細長い箸置きをつくるようになりました。ほかにも、味の好みが違うからと、鍋は大鍋ではなく小鍋をいくつか購入されることもありますね。買い方だって以前は5個そろえるのが主流でしたが、人数分だけというのがすっかり定番になりました」
正解はなく、スタイルの変化に合わせて選び方も変化するものだと松井さん。またそうした変化にも寛容なところが和食器の魅力でもあると言います。
最近はガラス器も要望があって通年置いているそう。店内では手荷物を置いてゆっくりと見て回れる。気に入ったら手に取って確かめられるのも実店舗の良いところ。
多様なタイプがそろう取り皿は、同じものをそろえなくてもいい。今は夫妻や家族で訪れる客も増えているそう。それぞれが好きな皿を選ぶのも楽しい時間。
要望が多いので…と豊富にそろえた、どんぶり。「ご飯もの、そばやうどん、ラーメンと用途が多様で迷う方が多いですね。意外と“丼の旅”は長いです(笑)」
箸置きコーナーも充実。季節感やコーディネートのちょっとしたポイントに。ピロー代わりの細長いタイプ(写真左上)も重宝しそう。
色や質感、朱塗の微妙な違いも確かめながら選べるのがうれしい、浄法寺塗りをはじめ漆器も豊富。
「〇〇好き」のためのものを集めた「Dear Likers」シリーズから。「こしょう好き」のための木工ヤマニのペッパーミル。カンボジアのクラタペッパーの完熟こしょうに合わせて限定制作したミル。
食卓をおいしく楽しくする
うつわ使いのヒント
さまざまな和のうつわを扱う店内。
普段の食卓に生かしたい、
コーディネートのヒントを
お店のスタッフの方に伺いました。
折敷を使って、世界観をつくる
折敷は食卓に小さな自分用の空間をつくってくれるもの。「布張りの根来の折敷なら傷がつきにくくて丈夫で使いやすいですよ。これは縁がなくフラットなのでランチョンマット感覚で使えます」。縁に手がかかりやすい工夫も。30年続くロングセラー。
花田・長角膳 布目 根来11,550円、須谷窯・竹文飯碗3,630円、佐々木暢子・7 まり椀 溜(国産漆100%)14,300円、吉田学・織部細長皿 8,140円、みずのみさ・ 2ひょうたん 箸置 1,650円、あすなろの箸(24cm) 1,100円。
上の折敷の色変わり、赤地に黒を重ねたもの。「ちゃんとしたごはんというのは手間や時間をかけたお料理だけではなくて、設えることでもかなうもの。だから折敷はそんなに頑張らなかった日、忙しい日にこそ使われるといいと思います」。カレーなど洋の食事にも気軽に使って。「丸い大皿には少し変型した小鉢を合わせると動きが出ておいしそうに見えます」
花田・長角膳 布目 曙11,550円、須谷窯・サビ丸文七寸皿 6,380円、ほたる窯・呉須窓モッコ鉢1,980円、小川佳子・結びカトラリーレスト 1,100円、奥田漆器・あすなろの箸(24cm)1,100円、テーブルスプーン サクラ 4,400 円。
「乾漆の十六角の折敷。材質が紙なのでちょっと形を遊べるんですね。リビングのテーブル上でも折敷があると自分の演出ができて、気軽にいい時間がつくれると思います」。ガラスのレース模様の持ち手がきれいなボトルにウイスキーを入れて楽しんで。
ふじい製作所・75 漆と和紙 十六角盆 30,800円、生島 賢・ボトルB 27,500円、市川知也・焼酎ロック 6,050円、阿部春弥・マドラースタンド4,400円、原口 潔・真鍮 マドラー 7,700円、前田麻美・32 ブロンズ釉花唐草稜花豆皿 2,860円、ささきりえ・真鍮菓子切 2,200円。
食卓に、手軽に季節を先取りする
待ち遠しい春をひとあし早く食卓で。「漆の浅鉢にはちらしずしなどを盛るときれいですね。もちろん買ってきたものだっていいんですよ。花の小鉢、箸置きには桜の花びらを選んで春らしくしましょう。休日の昼ごはんがちょっと楽しい時間になります」
花田・タモの木角盆 9,900円、玉山保男・15 五寸五分浅鉢 本朱 栃 9,900円、瀧田 操・白灰釉輪花鉢(小)2,277円、風窯・花びら 箸置 (5個セット)550円、浅野奈生・布巻箸 白 4,400円。
うつわも衣替えして夏を迎える準備を。吹きガラスの大らかな皿には具たっぷりの冷麺を、グラスには冷えた麦茶を入れて。「最近は夏の冷たい麺のバリエーションが増えて、それ用のうつわをお求めになる方が多くなりました。これはゆったりサイズでやや深みがあるので使いやすいです」
花田・長角膳 布目 曙11,550円、河上智美・サマープレート 7,920円、ワダコーヘー・3 ball&foot(アンバー) 4,730円、重田良古・ バイオリン 箸置 1,100円、奥田漆器・拭漆利休箸 1,100円。
わが家での使い方を想像して。
人気シリーズから
定番の、花田の「コレ」シリーズから。和洋を問わない中皿は手づくりのうつわ初心者にぴったり。左は織部の四方皿。和の印象がある織部も少しモダンな仕上げで日々活躍してくれそう。右は九谷特有のグレーがかった白磁で、30年ほどのロングセラー。「最初に選ぶお皿としておすすめしています。ろくろでひいているのでよく見るとうっすら跡が残っています。八角が白のシンプルさにリズムを与え、食卓で豊かな表情になります。意外と毎日使ってしまううつわですね」
(左)鈴木重孝・織部釉口文四方中皿 3,520円(右)ほたる窯・白磁八角皿(大) 2,530円。
Column
ちょっと楽しいコーナーも、発見!
店内の壁面にある小さなトビラを開くと、おっ!と声が上がる酒器コーナーが隠れています。左党ならずとも、コレクション感があって見入ってしまいます。わが家にもこんな仕掛けがあると、おもてなしのシーンが盛り上がるかも?!
暮らしのうつわ 花田
東京都千代田区九段南2-2-5 九段ビル1・2階
tel.03-3262-0669
12:00~17:00
営業日はウェブサイトでお知らせしていますのでご確認ください。
utsuwa-hanada.jp
※表示価格は消費税込み2024年2月現在。詳しくは暮らしのうつわ 花田のウェブサイトをご確認ください。
暮らしにいいものを探して
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- vol.13 本を通して、暮らしをもっと豊かに楽しく
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- vol.18 わが家のキッチンから循環する暮らしを考える
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