対談 【第4回】超高齢社会と介護・福祉~地域・行政・NPO・企業ができること~
地域で「生きがい」を創る
森 井手さんは茅ヶ崎に移住して3年目ですが、この街の個性、あるいは他の地域と比べての特徴は何かありますか。
井手 一番の違いは多様性ですね。ずっと前からいる人、サーフィンが好きで移住した人など、いろんな人がいる。しかも何かこだわりを持った人が多いんですよ。
僕は音楽をやっていますが、地元で毎日のように何かしらイベントがあって、毎週のように呼ばれます。ライフスタイルも大分変わりました。引っ越してすぐは都内のオフィスに毎日行ってましたが、今はこっちがベースで、東京に行くのは週1程度です。
それと、僕には小学生の子どもが2人いますが、NPOの事務所の近くに小学校があるので、放課後は事務所が託児所状態になったりする。子どもと時間を過ごせて、ある意味豊かな暮らしですね。
森 まさにオルタナティブな生活ですね。坂口さんから見た茅ヶ崎はどうですか。
坂口 ネオ・サミット茅ヶ崎には、お元気な方が住むエリアと、介護サービスを受ける方が住むエリアとがあります。その中で介護エリアでは日々様々な企画やイベントがあるので、その時に地域のボランティアの方々に参加のお声がけをしていますが、皆さん歌や絵画など、いろいろ積極的にやってらっしゃる方が結構多いですね。
特に週末とかは近所の喫茶店とかでそういう集まりがあって、みんなで歌ったりとか、ギターの音が聞こえてきたりとか。
井手 ロハスというと、日本では若い女性がヨガをやってオーガニックフードを食べるイメージですが、米国では現在60~70代を迎えているベビーブーマーが、高齢化しても元気でいるためにはどうすればいいかと考えたのがロハスの原点だったりするんですね。その人たちは20代にはヒッピー文化があって、段々年を取る中で、今までの60とは違うぞと。例えば私の学生時代の先輩でも、音楽好きな人は、会社で定年を迎えて最初にすることが、高いギターを買ったり、バンド活動を始めることだったりするんです。
森 楽しく過ごすのは大事ですね。
瓜坂 それと、他人から必要とされていることも非常に大事ですよね。元大工、元医者等、過去の職業がいろいろで、しかも音楽が趣味とか料理がうまいとか、それぞれ特技があるので、それを地域で、例えば何かが故障したら元電気屋さんが行く、というようなボランティア的な動きができればいい。
井手 湘南スタイルは理事長が60代半ばで、リタイアしてアクティブな方がコアメンバーを担っています。学生ボランティアとも仲良くやっていますね。
服部 高齢者の方でも、自分が行きたい時に何か役に立てて、そこでハッピーになれるよう、人とニーズを繋ぐコーディネートできる仕組みが地域にあることが大事です。市でも今、そこが論点となっています。
瓜坂 優秀な職歴や技能があるのに、シルバー人材センターなどでは発揮するのが難しかったりします。例えば英語やフランス語が喋れるので、それを活かした貢献をしたいのに、全然違う仕事を与えられて・・・。その辺をうまく采配できると、生きがいなどにつながると思います。
服部 先行して取り組んでいる自治体では、例えば海外経験がある方が学校現場で国際交流を支援したりしている。実際に活躍していた人とふれ合う機会は、子どもたちに迫力ありますよね。世代間交流の機会にもなっています。
井手 千葉県柏市の学童保育塾「ネクスファ」では、講師が英語を喋れる元商社マンの方だったりします。でもボランティアではなく、少額ですが毎月報酬が出る。そうすることで責任感が出ます。湘南スタイルでも報酬を支払うプロジェクトが結構あります。
坂口 団塊の世代の方たちが持つ力を、地域のためにうまく活用することが必要です。
服部 まさに今が、持続可能な地域づくりに向けた仕組み作りの絶好のチャンスですね。
井手 しかも「老後はここに住みたい」と思えるようなブランディングも大事です。
瓜坂 茅ヶ崎は加山雄三やサザンといったスターも輩出し、地域愛を感じさせてくれる。そういった意味でも本当にブランディングされていますよね。多世代が暮らせる街だと思います。
服部 普通は「新住民対旧住民」みたいに、先祖代々からの人と、高度経済成長期以降の人と二極化してしまうじゃないですか。でも茅ヶ崎はそれがなくて、多様性を認める寛容さがあります。その意味で、ここで超高齢社会になっても幸せという事例が出来れば、他の都市にも大きな影響を与えるはずです。