厚生労働省は、高齢化に伴い増加が見込まれる医療・福祉分野の就業者数の抑制に向け検討に入った。他の産業全体で深刻な人手不足になるのを避けるとともに、社会保障費の伸びにも歯止めをかけたい考えだ。2025年以降、医療・福祉分野の就業者数を900万人程度のまま横ばいで推移させるため、人工知能(AI)の積極活用などの対策を議論する。
厚生労働省によると、18年の医療・福祉関連の就業者は823万人で、全就業者6,580万人の13%。「団塊の世代」が75歳以上になる25年には全体が6,350万人に減る一方、高齢化による需要の高まりで医療・福祉分野は930万人に増える見通しとなっており、さらに65歳以上の人口がピークを迎える40年には、就業者5,650万人の19%に当たる1,060万人が同分野に従事することが予測されている。
現役世代が急減する中、特定分野に労働力が集中すれば、他の産業の競争力低下や大幅な働き手不足を招きかねない。そこで厚生労働省は、25年から40年にかけて医療・福祉分野の就業者を900万人程度で推移させつつ、ニーズに応えられる仕組みづくりを進める。
具体的には、医療、薬の調剤、介護などの現場でのAIや情報通信技術(ICT)の積極活用を行い、1人当たりが担うサービスの生産性向上を目指す。想定されるのは、AIを使った診断やケアプラン作成、介護ロボット導入など。また、過剰な医療・介護の供給体制の見直しにもつなげたい考えだ。
今夏に政府が定める経済財政運営の指針「骨太の方針」に反映できるよう調整を進める。なお、「健康寿命」を40年までに3年以上延ばすことで、高齢者の就労機会を増やし、就業者全体の減少を緩やかにすることも目指す。