厚生労働省は、社会保障審議会介護保険部会で、高齢化に伴う社会保障費の伸びを抑えるために、介護保険を利用する高齢者らの自己負担の上限額を増やす検討に本格着手した。住民税が課税されている一般的な所得のある世帯で、現在よりも7,200円高い月額4万4,400円に引き上げる案を軸に調整し、年末までに結論を出す。
介護保険利用時の自己負担は原則1割(一部の人は2割)となっており、支払い月額が高くなった場合に備え、収入に応じた4段階の上限を設定。超過分が返還される仕組みだ。
厚労省は2015年8月に、住民税課税世帯のうち課税所得が145万円以上の高齢者がいれば現役並みの所得があるとみなし、上限を4万4,400円に引き上げている。残りの一般的な所得の世帯も、2018年度介護保険制度改正に向け、同水準までの引き上げを検討することにした。
この日の部会では、上限額引き上げに賛成する声が多く、経済能力に応じて自己負担割合を上げるよう求める声も目立った。しかし、財務省が主張する、要介護度が低い高齢者らの負担増には否定的意見が相次いだ。
現役世代が支払う保険料をめぐっては、高収入の会社員らにより多くの拠出を求める「総報酬割」の導入も議論されたが、賃上げへの影響を懸念する経済団体などが強く反発した。