政府は1月11日、2015年度の介護報酬の改定について、全体で2.27%引き下げることを決定した。事業者への報酬を引き下げる一方で、介護職員の賃金の引き上げのために、人件費に関する報酬は+1.65%としている。
厚生労働省がこれまでまとめていた概要では、深刻な人手不足に陥っている介護職員の処遇改善と、認知症だったり要介護度が高くとも、在宅サービスが受けられるよう、介護報酬を上乗せすることとしていた。ただし、利益率が高いと指摘されている特別養護老人ホームについては、職員の処遇改善分を除いて報酬を引き下げるとともに、利用者への負担増も求める。
先ごろ開かれた社会保障審議会介護給付費分科会において、15年度改定の最終報告書案を提示し、大筋で了承を得た。各サービスの具体的な報酬額は、財務省と調整のうえ決められる。ただ、政府は消費増税の延期を受け、介護報酬全体を2~3%程度引き下げる方針で、サービスの充実を図るために十分な報酬額が確保できるかは不透明。
厚労省によれば、団塊の世代全員が75歳以上になる2025年に介護職員は最大で100万人不足。しかしながら、現在の平均月給は約24万円で、全産業平均より約8万円も低いのが現状。こうした介護職員の処遇改善と人材確保に向け、1人当たりの月給を約1万円上げられるよう、事業者への報酬加算を拡充する。
また、在宅介護の充実では、認知症高齢者を受け入れるデイサービスや、介護職員や看護師が24時間対応で利用者宅を訪れる「定期巡回・随時対応サービス」などの報酬を上乗せする。
認知症への対応強化としては、認知症高齢者が必要とする介護を受けながら共同生活を送るグループホームへの報酬を手厚くするとした。
一方、高齢化の進展で膨らむ介護費の抑制にも取り組む。現在、年間約10兆円の介護費は、25年には21兆円に倍増することが予想。月々の保険料も約5000円(全国平均)から、約8200円に上がる見通しだ。こうした状況を踏まえ、介護制度の持続に向け、特養を中心に報酬を引き下げることとした。特養については、相部屋の部屋代を介護保険から給付することをやめ、入所者からの徴収とする。金額は月1万5000円程度となる見込み。低所得者には相当額を補助し配慮する。
■2015年度介護報酬改定の骨子
「介護職員の月給を1万円程度引き上げ」「24時間サービスなど在宅介護を充実」「特養に対する報酬を引き下げ」「特養の相部屋利用者から家賃を徴収」「改定率は2~3%程度引き下げで調整」「認知症への対応強化でグループホームに対する報酬引き上げ」