厚生労働省が開いた社会保障審議会介護給付費分科会において、2015年度介護報酬改定へ向けた「基本的な視点」が示された。
掲げられたのは、地域包括ケアシステムの構築に向けた『在宅中重度者や認知症患者への対応の強化』『介護人材確保対策の推進』『サービス評価の適正化と効率的なサービス提供体制の構築』の3点。
まず『介護人材確保対策の推進』に関しては、「効率的かつ効果的に配置する観点も必要」との指摘があり、雇用管理の改善など事業者による自主的な取組みとともに、それぞれが積極的に取り組むべきとしている。
また、『サービス評価の適正化と効率的な提供体制の構築』では、介護保険制度の持続可能性を高めて資源を有効活用するために、「必要なサービス評価の適正化や規制緩和などをすすれることが必要」と踏み込んだ意見があった。
さらに、次期介護報酬改定について「2025年に向けた地域包括システムの構築」に主眼を置きつつも、今後増大が見込まれる介護ニーズに対応できる質の高い人材の確保、効率的なサービス提供体制の構築が急務だとの説明があり、「2025年以降も見据えた対応も考慮すべき時期に来ている」と強調された。
分科会では、財政制度等審議会が「介護報酬改定6%以上引き上げ」との方針を出したことへの意見が相次いだ。「老健の収支差は低下しており、内部留保を切り崩して借入金を返済している」との主張や、「経営が困難な中、老健は本来の機能である在宅支援機能を果たそうと努めている。インセンティブの働く介護報酬が必要」との訴えがあった。
また、「介護事業の場合、人件費率が費用のほとんどを占める。仕入れ比率も他産業と比べるとまったく違う。他産業と、介護事業を単純に比較することはできないのではないか」や、「地方では、医療や介護現場は雇用の最大の受け皿になっているケースも多く、雇用面での重要な役割を果たしている。介護報酬抑制が、地方活性化の芽を摘むことにもなりかねないことも十分留意すべき」との指摘があった。
老人保健課長は、この「マイナス改定」への考えに対し、「制度の持続可能性に考慮することも重要な視点。また、国民のニーズに沿ったサービス提供体制や環境整備を進めることも大切で、ニーズと体制の両面から検討することが必要である。財政面の数字は数字として、しっかり改定に向けて議論し、結論を出すべき」と答えた。