子どもの成長を健やかに見守る、安心・安全な住環境とは---。
しっかりと目が届き、思わぬケガを防ぐことのできる住まいを
つくるには、どのような点に注意すれば良いのでしょうか。
子育てと住まいの専門家にお話を伺いました。
大切なわが子が自宅内で事故やケガに遭ってしまうことは、誰でも避けたいものですね。乳幼児期の子どもにとって、住まいは未知の世界です。見るもの触れるもの、何にでも興味を持ち、手を出したり、舐めてみたりを繰り返します。しかしこの時期の子どもは、まだ危険な目に遭った経験がなく、自分で自分を守ることがなかなかできません。一方で親には家事があり、四六時中そばで注意して見ているわけにもいかないもの。そして、ちょっと目を離した隙に事故に遭ったり、ケガをしたり、ヒヤッとする場面に遭遇してしまうのです。また、子どもと大人は目線の高さが異なるため、大人には当たり前の設備や道具が、思わぬ危険につながることもあります。
大きな事故やケガにつながらないように住まいの間取りや設備を工夫しておけば、未然に防げたり、重大な事故に至る手前で済むことも多いはずです。
ハイハイやヨチヨチ歩き、いたずら盛りの2~3歳、せめてこの時期だけでも、十分な配慮をした上で、のびのびと子育てができたら、親としてはうれしいですよね。
自宅内での事故を未然に防ぐための工夫を、「間取り」の面から考えてみましょう。
「間取り」でのポイントは、「目線」と「動線」です。例えば、ダイニング・キッチン(上図[A])。調理スペースがリビングから見えない間取りでは、子どもの様子が分からなくなってしまいます。
また、冷蔵庫と調理スペースの位置関係も注意すべきポイントです(上図[B])。冷蔵庫からものを取り出すときに、お料理中の親の後ろを通るような動線になっていると、ふとした拍子にぶつかってしまう可能性があります。揚げ物中などは特に危険ですね。
階段はリビングに設けるとよいでしょう(上図[C])。玄関から、リビングを通って自室へ入るという動線をつくることで顔を合わせる機会ができ、自然に会話も生まれます。見守りの基本は、コミュニケーション。親子の絆が、安心と安全につながると言ってもよいでしょう。
「設備」では、直接的に身体へ危害が及ぶ可能性のあるものに気をつけたいところです。例えば、家具の角。子どもは、転んだりぶつけたりが日常茶飯事です。とがったものには、特に気をつけましょう。家具の引き出しや室内ドアにも要注意。「閉じる」動きがあるものには、指を挟んでしまう可能性があります。また、コンセントには、感電の危険があるので、塞ぐなどの対処をしておくことが理想です。近年は、パソコンや携帯電話の充電器などの電気製品が増え、コンセントを使う頻度も多くなっています。家づくりの際に、子どもがいると想定される部屋では、なるだけ子どもの手が届かない位置にコンセントを設けておくと良いでしょう。
気を付けるべき点は多数ありますが、一つひとつが子どもの安心・安全につながっています。子育ての予定がある方はもちろん、お孫さんが遊びにくるといった方も、ぜひ住まいを見直してみてください。
転んだりぶつけたりは子どもにとって日常茶飯事。丸みを持たせて危険防止しておくのが理想です。
万が一、コンセントに指を突っ込んでしまったら大変なことに!使っていないコンセントにはカバーをつけて、あらかじめ対策しておきましょう。
手を挟んだり、足の指をつめたりしてケガの多い部分ですので、防止機能のついた建具を選びましょう。
子どもが勝手に開けて外に出てしまわないよう、鍵は手の届かない高さに設けましょう。
藤田 洋さん
ミキハウス子育て総研株式会社代表取締役社長。2006年、民間企業としては日本初の「子育てにやさしい住まいと環境」認定事業を立ち上げるなど、子育てと住まい、居住空間を考えるスペシャリスト。関連著書も多数。プライベートでは3人の娘を育て、今は孫が2人。
2015年11月現在の情報となります。