“人生で最も大きな買い物”と言われるマイホームを手に入れることは、多くの方の夢でもあります。
結婚し、家族が増えて部屋が手狭になったと感じたり、少しでも家族との時間を作るために職場の近くに住居を構えたい、いつかは住みたいと思っている希望のエリアを限定して引っ越しをするなど、住宅の購入理由はさまざまですが、どのような理由であっても最初に考えるのは、いくらの(までの)住宅が購入可能なのかということでしょう。そのためには現金一括払いでない限り、住宅ローンが発生します。
住宅ローンは収入に対する返済額(例:年収500万円の人が年間150万円の返済額がある場合は返済負担率30%)や収入に対して借入可能額が決まるため、共働きの場合は、夫妻の収入を合わせれば、1人で単独ローンを組むよりも多くの借り入れをすることができます。
夫妻で住宅ローンを組むことによって、あと少しで手が届くのにあきらめていた物件、最寄り駅や広さ、間取りや設備など、あなたの夢の住宅が購入できるかもしれません。 それでは夫妻で組む住宅ローンにはどのような選択肢があり、それにはどのようなリスク保証が伴うのでしょうか。
今回は前編にて夫妻で組む住宅ローンの種類と内容を、後編にてそのリスク保証についてご説明いたします。
夫妻で組む住宅ローンの選択肢として以下の3つがあります。
① ペアローン
② 収入合算型ローン
(連帯債務型)
③ 収入合算型ローン
(連帯保証型)
契約者(債務者) | リスク保証 | |
---|---|---|
ペアローン | 夫婦それぞれが契約者 契約は2つ |
それぞれの収入に対し借入可能額が決まる。 お互いがお互いの連帯保証人になる。 |
収入合算型ローン (連帯保証型) |
夫婦どちらかが契約者 契約は1つ |
(債務者が世帯主の場合) 世帯主と配偶者の収入を合算して借入額が決まる。 配偶者は連帯保証人になる。 |
収入合算型ローン (連帯債務型) |
夫婦が連名で契約者 契約は1つ |
(主たる債務者が世帯主の場合) 世帯主と配偶者の収入を合算して借入額が決まる。 配偶者は連帯債務者になる。 |
それぞれの住宅ローンの内容について
ペアローン
ペアローンとは夫妻それぞれが1つの物件に対して住宅ローンを組む方法です。それぞれが契約者になって住宅ローンを組むため、2つの単独ローンを組むといったイメージです。借り入れの際には世帯主の連帯保証人に配偶者が、配偶者の連帯保証人に世帯主がなります。
メリット
それぞれの契約ですので、収入やプランに合わせて返済期間を変えることもできます。共働きの期間や、妻が出産・育児等で働けない期間のことを考慮して、それぞれの返済額や返済期間に差をつけたり、異なる金利タイプを選んで返済方法を調整することができます。
団体信用生命保険も別々に加入し、住宅ローン減税も別々に申告できます。
デメリット
それぞれの契約ということは2つの契約書があるため、貼付する印紙代や事務手数料、登記にかかる司法書士手数料も2倍になります。
ペアローンを選ぶならこんな夫妻
夫妻ともに将来にわたり収入がしっかりと見込めて、住宅ローン減税の恩恵を夫妻ともに受けたいと考える方。
ライフプランに沿って返済方法や繰り上げ返済することも可能なため、今後のマネープランについて計画性をもって取り組みたいと考える方。
所有権も住宅ローンの金額に応じた比率で共有名義となり(頭金は除く)、夫妻共有で物件のオーナーになりたいと考える方など。
収入合算型ローン(連帯債務型)
連帯債務型の収入合算型ローンとは、夫妻のどちらかが主たる債務者となり、もう一方の収入を合算して住宅ローンを組むことですが、連帯保証型と違う点は、債務者は夫妻連名となり、主たる債務者が世帯主の場合、配偶者が連帯債務者となり、夫妻ともに全ての債務に返済義務があります。
夫妻それぞれの収入からいくら返済していくか(連帯債務割合)を決めることで住宅ローン減税をそれぞれ受けることも可能です。住宅ローン減税は、どちらかが仕事を辞めて所得税の支払いがなくなった場合には対象ではなくなります。
メリット
フラット35のデュエット(ペア連生団信)は夫妻で加入することができ、どちらかが死亡もしくは所定の身体障がい状態になった場合には、以後の住宅ローン全ての支払いが不要になります。
デメリット
デュエット(ペア連生団信)を利用した場合には2人分の保険ということで、借入金利が0.18%上乗せされます。例えば借入金3,000万円の場合、月々2,617円多く返済しなければならないということになります。
試算例 | デュエット利用有無 | デュエット利用しない場合 (新機構団信に1人で ご加入の場合) |
デュエット利用する場合 (新機構団信にご夫婦で ご加入の場合) |
借入金利 | 年1.30% | 年1.48% (左記+0.18%) |
|
毎月の返済額 | 88,944円 | 91,561円 (左記+2,617円) |
- ※借入額3,000万円、借入期間35年、元利均等返済、ボーナス返済なしの場合で、毎月の計算額を計算。借入金利は試算のための数値であり、実際に借り入れできる金利ではありません。このため、毎月の返済額は目安の金額となります。
- ※実際の借入金利は、借り入れのご契約日、取扱金融機関等により異なりますので、借入金利はフラット35サイトでご確認下さい。
- ※保障が終了する年齢(80歳)に達する等により団信の保障が終了となる場合等でも、借入金利はご契約時の金利から変更されません。
※出典フラット35サイト
収入合算型ローン(連帯債務型)を選ぶならこんな夫妻
夫妻どちらかにもしものことが起きても、しっかりカバーしてくれるフラット35のデュエット(ペア連生団信)を利用して、月々の支払いが多少増えても安心して保証を受けたい方、そして、住宅ローン減税も夫妻で受けたい方などは連帯債務型が良いでしょう。
印紙・事務手数料 登記手数料 |
団体生命保険 | 住宅ローン減税 | |
---|---|---|---|
ペアローン | 2契約分かかる | それぞれ加入 | それぞれ受けられる |
収入合算型ローン (連帯保証型) |
1契約分のみ | 債務者のみ加入 | 債務者のみ受けられる |
収入合算型ローン (連帯債務型) |
1契約分のみ | 夫婦で加入 (フラット35デュエットの場合) |
それぞれ受けられる |
まとめ
夫妻の収入を合わせることで、さらに住宅ローンの借入金額を多くすることが可能となります。ペアローンの場合にはそれぞれの収入プランに合わせて返済期間を変えて、出産等で妻が働けない期間や子育てなどでお金がかかる時期を想定して、繰り上げ返済を上手に利用してみましょう。
また、収入合算型ローンは夫妻の収入を合わせることで、住宅ローンの借入金額を多くすることができるというメリットがありますが、もしもどちらかの収入がなくなった場合、その支払いは大きな負担となってくるでしょう。
その場合に備えて、団体信用生命保険や民間の生命保険に加入するなどのリスク保証を考えておく必要もあります。
それぞれの夫妻に合った住宅ローンを考えるには、今後起こり得るライフイベント表を作成し、出産、子どもの学費、車の購入、家族旅行の希望、それぞれの親の介護を含めた同居などを想定し、それに当てはめたマネープランを考えて住宅ローンを選んでみてはいかがでしょうか。
夫妻で組んだ住宅ローンのリスク保証については【後編】でお伝えいたします。
執筆者
山田健介
FPplants株式会社 代表取締役社長
住宅メーカーから金融機関を経て「お客さまにお金の正しい知識や情報をお伝えしたい」という思いからFPによるサービスを行う会社を設立。現在は全国のFPを教育する傍ら、執筆、セミナーを行う。特にライフプラン作成、住宅、保険に関する相談を得意とする。
※掲載の情報は2024年2月現在のものです。内容は変わる場合がございますので、ご了承ください。
夫妻で組む住宅ローンの種類と内容