大和ハウス工業株式会社

DaiwaHouse

TOPICS 学びのトレンド【前編】自ら考えるチカラを育む 新しい「学び」のかたち

トピックス

トピックス

学びのトレンド【前編】
~自ら考えるチカラを育む 新しい「学び」のかたち~

後編:自ら感じ、考え、問い続ける"探求"という学び方

2016.06.30

学校の勉強には正解や模範解答がありますが、ひとたび学校の外に出ると、正解は用意されていません。就職活動においても社会人としても『正解のない問い』に立ち向かっていく力が必要です。

そんな『正解のない問い』と主体的に向き合う子どもをどう育てたらよいのでしょうか。

橋を架けてしまうより 泳ぎ方を教える大切さ

「例え話ですが、子どもが川の向こう岸に渡りたい、と言ったらどうしますか?」と、国内外の教育事情に詳しい宮地勘司さん。「そんなときに橋を架けてしまう親がなんと多いことか」と話します。橋は確かに安心・安全。「でも、まず泳ぎ方を教えて子どもが本来備えている力を引き出すことが、子どもとの関わり方だと思うんです。泳ぎ方を身につければ、川から湖や海へと主体的に行動できる範囲も広がります」。

この人に聞きました

教育と探求社 代表取締役社長

宮地勘司 さん

1963年長崎県生まれ。88年立教大学社会学部卒業。日本経済新聞社入社。2002年、自らの起案により教育開発室を創設し、新聞資源を活用した教材開発に取り組む。04年11月、教育と探求社を設立、代表取締役に就任。

泳ぎ方を教える際は「子どもの可能性を信じることが大切」。これは子どもが自転車に乗れるように見守るときでも必要です。

ただ泳ぎ方でも自転車の乗り方でも、親が教えられることは基本的な事柄まで。「ある程度以上のことは子どもが実践の場で自ら学び取って実行していく必要があります」。

例えば川を渡りきるには、プールと違って水温や水流の速さ、自分の体力などを判断し、最適な泳ぎ方を考えなければなりません。川の向こう岸という目標だけがあって、適切な泳ぎ方は子どもの能力や状況に応じて変わっていきます。自分のチカラでなんとかしなくてはならないのです。

主体的な子どもを育てるために 今、親ができる4つのこと

子どもが自転車に乗れるようになるには親の並走と、転んでも安全なスペース(=失敗しても大丈夫な安心感)が欠かせません。バランスの取り方を覚え、乗る楽しさに気づくと、子どもは自らの力で走り出していきます。

©DAJ /amanaimages

信じること

どの子どもにも限りない可能性があると信じること。親から信じてもらえることで「人を信じる」「人から信じられる」「自分を信じる」という子どもたちの気持ちが生まれていきます。

感じること

親が先走って子どもの気持ちをくみ取ろうとするあまり、子どもの本当の気持ちとズレが生じることがあります。「きっとこう感じているんだろう」という思い込みは禁物。

待つこと

他の子どもと比べてちょっと速度が遅くても、親が手を出しすぎずじっくり待つことが大切。タイミングが来ると、自分の意思で方向を決め、自分の力で走り出すようになるのです。

一緒にいること

一緒にいるだけで不思議と勇気がわいてきた、という体験はありませんか。寄り添って並走するうちに、子どもは親の励ましを感じて、自らの力で走っていきます。

宮地さんが注目宮地さんが注目

森の幼稚園

1950年代半ばにデンマークで生まれた、自然の中で子どもたちをのびのびと遊ばせる保育活動。大半は園舎を持たず、幼児たちは森の中で思い思いに一日を過ごす。大人は見守るだけ。樹木や小川で遊び、小動物や昆虫と触れ合う。自然の中で互いに助け合いチームワークも育つ。

「昨日は途中であきらめた干し草の山に今日は登ることができた、というように、子どもたちは自分なりにリスクを背負いながら日々チャレンジを繰り返します。達成感や、自分と仲間とではそれぞれに得意不得意があって多様なことなどを、自然の中で実感しながら成長していきます」(宮地さん)。

「感動したのは『ここは民主主義を学ぶ場なんです』と園長先生がおっしゃった時。幼い頃から民主主義が血肉となっていくのですね。デンマークでは投票率が90 %を超える選挙が少なくないことにも納得です」(同)。

自ら考えるチカラには 『正解のない問い』が大切

社会でも、状況や能力に応じて最適な解を見いだすチカラが求められます。そのためには中高生の段階でより意識的に育んでいくことが大切です。

そのような問題意識のもと宮地さんが中高生向けに開発したのが課題解決型の教育プログラム「クエストエデュケーション」です。これは実在する企業が出した課題に対し、生徒たちが1年間かけて取り組んでいくもの。

教科書に答えは載っていません。「こうした『正解のない問い』にチームで取り組む中で『自ら考えるチカラ』が育まれていきます」。仲間と考えたアイデアが、企業人からの適切なアドバイスを得ながら磨かれていきます。「チームワークを通して、また自らの考えが仲間や先生、企業人に認められる中で、子どもは『自分がたった一人の人間としてここに存在する意味』を実感します。そして、より強く『自ら考えていこう』と思うのです」。

1年かけてチームで取り組む「クエストエデュケーション」
~ 企業探求コース ~

実在する企業でのインターンシップを教室で体験しながら働くことの意義や企業活動への理解を深め、ミッションに取り組みます。旅行、金融、住宅など様々な企業の協賛を得ているので、リアルな体験ができるのが特徴。

活動の準備をする
企業とは何かを知り、「新人研修」を受けます。
ミッションに取り組む
企業からミッションを受け取り、企画会議を開き、企画案をまとめます。ブレインストーミングやフィールドワークも体験。
プレゼンテーションをする
プレゼン研修を受けた後、発表資料を作り、練習を重ねて本番に挑みます。校内発表会を経て全国大会(企業プレゼンテーション部門)にエントリー。
クエストカップ全国大会に出場
全国81校約1万人の中高生の中から選ばれた72チームが出場。1年間の探求の成果を問います。

全国大会の表彰式の様子

2016年3月発行 冊子「SUSTAINABLE JOURNEY」vol.4(ecomom春号同封)より転載

次のページ:後編 学びのトレンド【後編】 ~自ら感じ、考え、問い続ける“探求”という学び方~

RECOMMEND おすすめコンテンツRECOMMEND おすすめコンテンツ

Menu

サステナビリティ(サイトマップ)