帰宅時間が「20時台以前」か「21時台以降」かで、生活満足度に大きな差が!
(ベネッセ教育総合研究所 学び・生活研究室 室長 高岡純子)
共働き世帯の数が専業主婦世帯を上回り、イクメンという言葉が社会で広まってきました。ベネッセ教育総合研究所では、2005年以降「乳幼児の父親についての調査」を行い、日本の父親の子育て意識や行動について把握してきました(※1)。
これまでの調査結果を見ると、「家事・育児に今以上に関わりたい」と思う父親はこの9年間で増加の一途をたどる一方で、実際の子育てへの関わりは実は大きく変化していないということが分かります。
出典:ベネッセ教育総合研究所 乳幼児の父親についての調査研究レポート[2014年]
出典:ベネッセ教育総合研究所 乳幼児の父親についての調査研究レポート[2014年]
その背景の一つには、なかなか早まらない父親の帰宅時間が挙げられます。乳幼児の就寝時刻のピークは21時台ですが、それまでに帰宅できない父親は全体の約4割を占めています。
今以上に家事や育児に関わりたいという思いはあっても、現実的に早く帰宅できなければ子どもや母親と接することはできません。そのような背景からか、「子どもとの接し方に自信が持てない」と回答する父親が増えています。
出典:ベネッセ教育総合研究所 乳幼児の父親についての調査研究レポート[2014年]
一方で、20時台までに帰宅する父親は、21時台以降に帰宅する父親に比べて、「子どもと一緒に室内で遊ぶ」「子どもを叱ったり、ほめたりする」など、日常的に様々な子育てや家事に関わり、妻とは毎日子どもやそれ以外のことについて会話する割合が高く、子育ての満足度や生活の満足度が高い傾向が見られました。
出典:ベネッセ教育総合研究所 乳幼児の父親についての調査研究レポート[2014年]
出典:ベネッセ教育総合研究所 乳幼児の父親についての調査研究レポート[2014年]
サステナブル社会の実現で、もっとパパママにやさしい未来へ
(ベネッセ教育総合研究所 学び・生活研究室 室長 高岡純子)
国や企業の子育て支援への取り組みが進展する中で、両立支援制度の有無だけでなく、父親の子育てに理解のある職場では、父親の帰宅時間は早くなる傾向にあります。例えば20時台以前に帰宅している父親の職場では、「子どもが病気の際には、休みをとったり早退したりしやすい」が7割を超え、「上司は男性の子育てに理解がある」では6割を超えています。
まずは目の前の第一歩として、子育てに関わろうとする父親を応援する職場の雰囲気作りやイクボス(※2)を増やしていくことが大切ではないでしょうか。そして週の何日かはなるべく早めに帰る努力をするなど、父親自らの行動が社内の風通しの良さを促し、自身の子育て、ひいては人生への満足度を高めることにつながるのではないでしょうか。
核家族化が進む現在、母親一人に負担が偏りがちな「子育ての孤立化」が大いに問題視されています。多様な働き方を認めて、全ての人が仕事と家庭を両立できるワークライフバランスの実現は、サステナブル(持続可能)な社会を実現する一つのカギになるはずです。
※2 「イクボス」の定義:職場で共に働く部下・スタッフのワークライフバランス(仕事と生活の両立)を考え、その人のキャリアと人生を応援しながら、組織の業績も結果を出しつつ、自らも仕事と私生活を楽しむことができる上司(経営者・管理職)のこと(対象は男性管理職に限らず、増えるであろう女性管理職も)。NPOファザーリングジャパン HPより(2016.12.26)
出典:ベネッセ教育総合研究所 乳幼児の父親についての調査研究レポート[2014年]