「イクメン」の言葉が一般化して、パパの主体的な育児は当然という雰囲気が醸成されつつあります。しかし男性の育児休業取得率は依然低く、さらに定時帰宅どころか、子どもが寝る時間までに帰宅できず、育児に関わりたくても関われない職場環境のパパも少なくありません。
ここでは数々のデータを元に、パパの育児参加の現状と、育児参加の対応策についてまとめました。
日本男性の育休取得率はわずか2%台! 多忙な業務が育児参加を阻む
厚生労働省の雇用均等基本調査(2015年度)によると、男性の育児休業取得率は2.65%。1996年度の調査以来過去最高となったものの、未だに低い取得率です。2020年までに政府は男性の育休取得率13%を掲げていますが、達成できるかどうか疑問視されています。
国際社会との比較においても、日本は大きく遅れを取っています。内閣府「少子化社会に関する国際意識調査」(2015年)をみると、「1ヵ月以上の育児休業を取得した男性」は、スウェーデンが60.1%、フランスが29.8%、イギリスが26.6%に対して、日本は2.5%と、きわめて低い割合でした。
出典:内閣府「少子化社会に関する国際意識調査」(2015年)
ベネッセ総合研究所の調査結果によると、育児休業制度を利用しなかった理由の1位は「忙しくてとれそうもないから」。2位は「職場に迷惑をかけるから」、3位は「前例がないから」と続き、まだまだ育児休業を取りやすい職場風土だとは言いがたい状況です。
出典:ベネッセ教育総合研究所 乳幼児の父親についての調査研究レポート[2014年]
都内の大手メーカーに勤務する千葉県在住のO.Tさん(2児の父)は、まさに上記の理由で育休を取れなかった男性社員の一人です。
「会社に育休制度はありましたが、取得している男性社員は僕の周囲ではいませんでした。僕自身は妻の出産の時に『仕事の区切りが見えたら取得したい』と考えていましたが、常に人手が足りない状態なので結局無理でした」。
また、O.Tさんの帰宅時間は、子どもが生まれてからも22時を過ぎることが多く、とても育児参加できるような状況ではなかったといいます。
企業への助成金、パパ・クオータ制 ――男性の育休取得を促す国の取り組み
諸外国に比べて極端に低い日本男性の育休取得率を高めるために、厚生労働省では2016年4月から、企業への助成金を新設しました(出生時両立支援助成金)。過去3年間で男性の育休取得者がいない企業を対象に、妻の出産から8週間以内に5日以上の育休を取得すれば、1人目には中小企業なら60万円(※大企業は30万円)、2~5人目には15万円を企業に支払うというものです。
また厚生労働省では、父親に一定の育児休業を割り当てる制度「パパ・クオータ制」の導入も検討しており、2017年の通常国会での関連法改正案の提出を目指して調整が進められています。クオータとは「割り当て」を意味しており、北欧を中心に導入されている制度です。
例えばノルウェーのパパ・クオータ制では、最長59週間取得できる育休のうち、10週は配偶者に割り当てられます。利用しないと権利が失われるため、導入前はわずか5%程度だった育休取得率は導入後80%まで大幅に向上し、出生率も向上しました。この先例を踏まえた上で、日本でも現在最長1年半の育休期間を2年に延長するとともに、その一部を父親に割り当てる仕組みとして導入する方針を示しています。
企業の自助努力も進んでいます。東京都新宿区にあるIT企業では、男性の育休取得を積極的に支援しており、最近も2ヵ月間の育休を終えた男性社員が復帰したばかりといいます。代表取締役のF.Yさんは「仕事で存分にパフォーマンスを発揮してもらうためにも、家族と安心して暮らせるようサポートしたい。
それに、長時間労働をしていては現在の多様化した消費者のニーズを理解することはできません。一人の父親として、生活者として過ごす経験は、当社のサービス開発に確実に役立つはずだと考えています」と語ります。